不動産投資ローンの金利相場は?金利を左右する要素や低金利で借りるポイント
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丸山 優太郎
丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。

不動産投資ローンは、不動産を購入する際に欠かせない資金調達手段です。借入を検討する場合は、できるだけ金利の低い金融機関を選ぶことが重要です。また、金利はさまざまな要素で変動するため、少しでも条件が良くなるよう工夫する必要があります。この記事では、不動産投資ローンの金利相場や、低金利で借りるためのポイントなどについて紹介します。

目次

  1. 1.不動産投資ローンの金利相場
    1. 1-2.都市銀行の金利相場
    2. 1-3.地方銀行の金利相場
    3. 1-4.信用金庫・信用組合の金利相場
    4. 1-5.ネット銀行の金利相場
    5. 1-6.ノンバンクの金利相場
    6. 1-7.日本政策金融公庫の金利相場
  2. 2.アパートローンの金利相場
  3. 3.不動産投資ローンの金利の種類
    1. 3-1.変動金利
    2. 3-2.選択型固定金利
    3. 3-3.全期間固定金利
  4. 4.不動産投資ローンの金利を左右する要素
    1. 4-1.物件の種類
    2. 4-2.申込者の属性
    3. 4-3.提携不動産会社
  5. 5.不動産投資ローンの金利をシミュレーション
  6. 6.不動産投資ローンの金利を抑えるポイント
    1. 6-1.不動産会社から金融機関を紹介してもらう
    2. 6-2.複数の投資用ローンの金利を比較
    3. 6-3.ローン審査前に属性を引き上げておく
    4. 6-4.アパートよりもマンションを選ぶ
    5. 6-5.返済期間中にローンを借り換える
  7. 7.不動産投資ローンの金利は実質金利で判断することが大事

1.不動産投資ローンの金利相場

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不動産は高額な商品であるため、ローンを組む際には金利1%の違いでも、総支払額に大きな差が生じます。まずは、不動産投資ローンにおける金融機関ごとの金利相場を確認しておきましょう。

1-2.都市銀行の金利相場

三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行といった都市銀行の金利相場は、1%台前半からと非常に低水準です。全国に支店があるため、どのエリアの物件でも融資が受けられるのが強みです。ただし、融資審査は大変厳しいことで知られており、高年収で安定した収入がある人に向いています。

1-3.地方銀行の金利相場

地方銀行は特定の都道府県を主要営業エリアにしている金融機関です。金利相場は2%前後で、都市銀行よりやや高めですが、属性が高くても都市銀行の審査に通らなかった人が利用できる可能性があります。日頃から地元の銀行と関係を築いておくことが大切です。

1-4.信用金庫・信用組合の金利相場

信用金庫や信用組合は、特定地域に住む人が会員(組合員)となる地域密着型の金融機関です。金利は地方銀行と同様に2%前後で、基本的に営業地域内の物件が融資対象となります。物件の所在地域にある店舗で相談する必要があります。

1-5.ネット銀行の金利相場

ネット銀行は実店舗をほとんど持たず、インターネット上で預金や融資業務を行う金融機関です。金利相場は1~4%台で、店舗運営コストがかからない分、比較的低金利で融資を行っています。申し込みから審査結果の確認まで、すべてネット上で完結できるのがメリットです。

1-6.ノンバンクの金利相場

ノンバンクは預金業務を行わず、融資に特化した金融機関です。金利相場は2~9%程度と幅があります。利用しやすい反面、金利は高めになる傾向があるため、複数の金融機関を比較し、できるだけ低金利のところを選ぶことが大切です。

1-7.日本政策金融公庫の金利相場

日本政策金融公庫は政府系の金融機関で、金利は1~2%台と都市銀行並みに低水準です。ただし、これは有担保融資の場合であり、無担保の場合は1%台後半~2%台後半になります。また、税務申告を2期終えているかどうかでも金利が異なるため、注意が必要です。なお、不動産投資を目的とする融資は原則として対象外とされており、「国民生活事業」における「不動産賃貸業」としての融資となります。

2.アパートローンの金利相場

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不動産投資ローンと似た融資商品として「アパートローン」があります。

アパートローンとは、一棟の賃貸集合住宅を新築する場合や、すでに借りているローンの借り換えなどに利用できるローンのことです。不動産投資ローンでは区分マンションも融資対象となりますが、アパートローンは一棟物件に限定されるという点が特徴です。

例えば、みずほ信託銀行の「プロデュースⅡ」という商品では、融資対象が「アパート・賃貸マンションで賃貸部屋数が原則6戸以上」とされており、最大融資金額は10億円となっています。

アパートローンの金利相場は以下のとおりです(2025年3月現在)。

都市銀行 1~2%台
地方銀行・信用金庫・信用組合 2%台後半~7%台
ネット銀行 1%台後半~8%台
ノンバンク 4%台~
日本政策金融公庫(国民生活事業) 1~2%台(有担保の場合)
※大まかな相場であり、金利は金融機関ごとに異なります。

都市銀行や日本政策金融公庫は、いずれも金利が1~2%台と比較的低いため、まず相談してみたい金融機関といえます。ネット銀行やノンバンクは融資が受けやすい反面、ある程度の高金利を覚悟する必要があります。地方銀行や信用金庫・信用組合など、地域に根ざした金融機関も、金利が安ければ十分に利用を検討できる選択肢です。

3.不動産投資ローンの金利の種類

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不動産投資ローンを利用する際には、いくつかの金利タイプから選ぶ必要があります。主な金利タイプは次の3つで、それぞれに特徴があるため、金融情勢や自身のライフプランに合わせて適切なものを選ぶことが大切です。

3-1.変動金利

変動金利は、市場金利の動向に応じて利率が変動するタイプです。多くの人が利用しており、固定金利よりも低めに設定されていることが多いのが特徴です。

一方で、金利上昇のリスクがある点は注意が必要です。特に金利が上昇傾向にある場合は、返済額が増える可能性があります。ただし、住宅ローンでは返済額の急激な増加を防ぐために「激変緩和措置」が設けられており、金利が上昇しても返済額は5年間据え置かれ、増加幅も1.25倍以内に制限されるケースがあります。ただし、不動産投資ローンにはこのような措置が適用されないことも多いため、契約前に金融機関へ適用有無を必ず確認することが重要です。

3-2.選択型固定金利

選択型固定金利は、返済期間のうち一定期間を固定金利で返済するタイプです。例えば、最初の10年間は子どもの教育費が多くかかるため、金利の変動を避けたいという場合に向いています。

注意点としては、固定金利期間終了後に再びその時点の金利で返済が始まるため、金利が大きく上昇していた場合は返済負担が増える可能性があります。とはいえ、最初の一定期間に安定した返済計画を立てたい方にとっては有効な選択肢です。

3-3.全期間固定金利

全期間固定金利は、返済期間すべてを固定金利で返済するタイプです。契約時点で支払総額と毎月の返済額が確定するため、資金計画が立てやすいというメリットがあります。

ただし、変動金利と比べて利率は高めに設定されています。低金利のタイミングで契約できれば有利ですが、金利が上昇局面にある場合に選ぶと、結果的に支払総額が大きくなる可能性があります。その一方で、「今後さらに金利が上がるかもしれない」という局面では、安心感のある選択肢でもあります。

4.不動産投資ローンの金利を左右する要素

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不動産投資ローンの金利は、すべての申込者に一律で適用されるわけではなく、申込内容や条件によって変動する場合があります。不動産投資ローンの金利を左右する要素として、以下の3つが挙げられます。

4-1.物件の種類

融資対象となる物件の種類によって、適用される金利は異なります。一般的に、アパートよりもマンションのほうが低い金利で融資を受けやすいとされています。

特にワンルームマンションは、駅から近いなど立地条件の良い物件が多く、需要も高いため賃料が安定しており、中古市場でも売買が活発で流動性が高い傾向にあります。資産価値を維持しやすいため、金融機関にとってもリスクが少なく、金利を低く設定できる要因となります。

また、マンションはアパートに比べて法定耐用年数が長いため、融資期間を確保しやすい点も金融機関にとって評価ポイントになります。

4-2.申込者の属性

申込者の属性は、融資審査における重要な判断材料です。属性が高ければ返済能力が高いと見なされ、金利が低くなる傾向があります。金融機関が重視する主な項目は次のとおりです。

4-2-1.年齢

融資には「完済時年齢」の制限があります。例えば、完済時年齢が75歳と定められている金融機関では、45歳の方が申し込んだ場合、返済期間は30年が上限になります。若年層であれば長期の返済計画が立てやすく、金融機関側も利息収入が見込めるため、評価されやすくなります。

4-2-2.年収

融資の判断基準に「年収倍率」があります。例えば、年収倍率が8倍の場合、年収500万円の人は最大で4,000万円程度までの融資が可能です。一般的に400~500万円以上の年収が求められる傾向にありますが、審査基準が緩やかな金融機関であれば、年収400万円未満でも融資を受けられる可能性はあります。

4-2-3.勤務先と勤続年数

公務員や上場企業勤務の会社員は、安定した収入が見込まれるため高く評価されます。勤続年数についても、3年以上の勤務実績があることが望ましいとされています。

4-2-4.居住状況

居住年数が短い賃貸住まいの人は、安定性に欠けると見なされる可能性があります。一方で持ち家の場合は転居のリスクが少なく、プラス評価につながります。

4-2-5.家族構成

扶養家族の人数が多いと生活費の負担が大きくなると判断されることがあります。特に子どもが多い場合は教育費がかさむことから、審査で不利になる可能性があります。

4-2-6.資産構成

空室リスクに備えるためにも、申込者がどれだけの資産を保有しているかは重要です。十分な預貯金などがある場合、家賃収入が一時的に途絶えても返済が継続できると判断され、融資審査で有利に働きます。また、他社からのローン借入状況も審査対象となります。

4-3.提携不動産会社

金融機関は、不動産会社との提携関係も重要視します。開発から販売、管理までを一貫して行っている不動産会社は信頼性が高く、金融機関からも評価されやすい傾向にあります。自分で金融機関を探すよりも、信頼性のある提携不動産会社を通じて紹介を受けたほうが、融資審査に通りやすくなる場合があります。

5.不動産投資ローンの金利をシミュレーション

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不動産投資ローンの金利が異なると、返済負担がどれだけ変わるのかをシミュレーションしてみましょう。同じ前提条件で、金利1.0~3.0%の場合の毎月の返済額と支払総額、総支払利息額を比較します。

【前提条件】
物件価格5,000万円、融資金額2,000~3,000万円、元利均等、返済期間35年

融資金額 金利 毎月の返済額 支払総額 総支払利息額
2,000万円 1.0% 56,457円 23,711,746円 3,711,746円
1.5% 61,236円 25,719,333円 5,719,333円
2.0% 66,252円 27,825,861円 7,825,861円
2.5% 71,499円 30,029,274円 10,029,274円
3.0% 76,970円 32,327,082円 12,327,082円
3,000万円 1.0% 84,685円 35,567,804円 5,567,804円
1.5% 91,855円 38,579,007円 8,579,007円
2.0% 99,378円 41,738,968円 11,738,968円
2.5% 107,248円 45,044,198円 15,044,198円
3.0% 115,455円 48,490,768円 18,490,768円

このシミュレーション結果からわかることは、利息負担がかなり大きいことです。3,000万円を3.0%の金利、返済期間35年で融資を受けた場合、利息だけで約1,849万円を支払うことになります。

また、同じ融資額(3,000万円)でも金利1.0%と1.5%を比較すると、支払総額には約300万円の差が出ます。借入金額が大きくなるほどこの差はさらに拡大するため、たとえ0.5%の違いでも、できるだけ低金利の金融機関を選ぶことが重要です。

6.不動産投資ローンの金利を抑えるポイント

不動産投資ローンの金利相場は?金利を左右する要素や低金利で借りるポイント
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先ほどのシミュレーションでもわかるように、0.5%の金利差であっても支払総額に大きな差が生まれます。不動産投資ローンの金利は、次のような方法を実践することで低く抑えられる可能性があります。実行できることがあれば積極的に取り組んでみましょう。

6-1.不動産会社から金融機関を紹介してもらう

不動産会社は、複数の金融機関と提携している場合が多く、そうした提携金融機関を通じて申し込むことで、より好条件の融資を受けられる場合があります。自分で直接金融機関に申し込むよりも、金利の面で有利になる可能性があります。

6-2.複数の投資用ローンの金利を比較

不動産投資ローンの金利は金融機関によって異なります。仮にメインバンクがあったとしても、そこだけで判断するのは早計です。同じ申込者であっても、金融機関ごとに審査基準や金利条件は異なるため、必ず複数の金融機関で比較して選ぶようにしましょう。

6-3.ローン審査前に属性を引き上げておく

金融機関は申込者の「属性」を重視して審査を行います。融資を申し込む前に、属性を整えておくことが重要です。具体的には、転職を控えて勤務年数を長くする、クレジットカードや他のローンの返済遅延を避ける、新たな借入を控えるなどが挙げられます。属性が高いほど、金利の優遇が受けられる可能性が高まります。

6-4.アパートよりもマンションを選ぶ

アパートと比べて、マンションのほうが融資条件が良くなる傾向があります。特にマンションはRC(鉄筋コンクリート)造やSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造であることが多く、法定耐用年数が新築で47年と長い点が評価されます。

一方、木造アパートの法定耐用年数は22年と短く、金融機関から見た資産価値の評価が低くなることがあります。そのため、金利を抑えたい場合はマンションを選ぶほうが有利といえます。

6-5.返済期間中にローンを借り換える

ローンを組んだ後でも、条件が整えば借り換えによって金利を引き下げられる場合があります。以下のようなケースに該当するのであれば、借り換えを検討してみるのもよいでしょう。

・物件購入時より金利水準が低い
・購入した不動産会社は提携している金融機関が少なかった
・物件購入時より、年収などの属性が高くなった
・次の物件購入を考えている

これらの点を借り換えの相談時に考慮してもらえれば、多少金利を下げてくれる可能性があるでしょう。

7.不動産投資ローンの金利は実質金利で判断することが大事

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不動産投資ローンの金利も住宅ローンと同様、長期金利の影響を受けるのは確かです。最近では、日本銀行による金融政策の変更により、名目金利が上昇傾向にあるため、不安を感じている人もいるかもしれません。しかし、経済的な判断を行う際には、名目金利ではなく「実質金利」を見ることが重要です。これは、賃金を見るときに名目賃金ではなく実質賃金を確認するのと同じ考え方です。

実質金利を見るには、「期待インフレ率」を考慮する必要があります。期待インフレ率とは、家計や企業が予想する将来の物価変動率のことです。名目金利と実質金利の関係性を示す経済理論である「フィッシャー方程式」では、名目金利から期待インフレ率を引いたものが実質金利とされています。

名目金利-期待インフレ率=実質金利

現在は、金利の上昇とともに物価や家賃も上昇傾向にあるため、実質的な利回りの低下をある程度抑えられている可能性があります。特に家賃は、物価動向に比較的連動しやすく、投資家にとっては一定の安心材料ともいえるでしょう。アットホーム株式会社と株式会社三井住友トラスト基礎研究所が公表している「マンション賃料インデックス2024年第3四半期」によると、首都圏1都3県の賃料は前年同期比で以下のように上昇しています。

東京23区:+4.70ポイント
東京都下:+2.63ポイント
横浜・川崎市:+4.77ポイント
千葉西部:+5.33ポイント
埼玉東南部:+4.19ポイント

出典:アットホーム株式会社、株式会社三井住友トラスト基礎研究所「マンション賃料インデックス2024年第3四半期」

このように、金利が上がっても家賃収入も上がっていれば実質金利は相殺されるため、心配いらないのです。不動産投資ローンを上手に活用して、マンション経営の第一歩を踏み出してみましょう。

※本記事は2025年3月18日現在の情報を基に作成しています。記事中で紹介した金利は一例であり、金融情勢によって変化します。参考程度にお考えください。

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