不動産投資の種類12選|メリット・デメリットと選び方のポイントも解説
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丸山 優太郎
丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。

不動産投資には対象となる物件にさまざまな種類があり、物件の種類や規模、立地によって、特徴や必要となる投資額が異なります。そのため、自身の投資目的や予算に合わせて、最適な投資先を選ぶことが重要です。

本記事では、代表的な12種類の不動産投資について、それぞれのメリット・デメリット、そして投資先を選ぶ際のポイントを解説します。

目次

  1. 1.不動産投資で得られる収益は主に2種類
    1. 1-1.インカムゲイン
    2. 1-2.キャピタルゲイン
  2. 2.不動産投資の種類とメリット・デメリット
    1. 2-1.マンション・アパート一棟
    2. 2-2.戸建て
    3. 2-3.区分マンション
    4. 2-4.ビル一棟(店舗・事務所)
    5. 2-5.ホテル・旅館
    6. 2-6.民泊・簡易宿所
    7. 2-7.工場・倉庫
    8. 2-8.トランクルーム
    9. 2-9.駐車場
    10. 2-10.REIT(不動産投資信託)
    11. 2-11.不動産小口化商品
    12. 2-12.不動産クラウドファンディング
  3. 3.不動産投資の種類を選ぶときのポイント
    1. 3-1.不動産投資の目的を明確にする
    2. 3-2.種類ごとの利回りやリスクを考慮する
    3. 3-3.市場の動きを踏まえて判断する
    4. 3-4.所有資金や資産から判断する
  4. 4.不動産投資は目的を明確にして最適な投資先を選ぼう

1.不動産投資で得られる収益は主に2種類

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不動産投資で得られる収益には、主にインカムゲインとキャピタルゲインの2種類があります。

1-1.インカムゲイン

インカムゲインとは、保有している不動産から得られる家賃収入や更新料などの継続的な収益を指します。不動産投資では、毎月入ってくる家賃収入をローンの返済に充てられることから、不動産投資ローンを活用すれば少ない自己資金でも物件を取得できます。

1-2.キャピタルゲイン

キャピタルゲインとは、保有する不動産が購入代金を上回る価格へ上昇したときに、売却して得られる収益のことです。価格上昇が見込まれるエリアの物件を安く仕入れて将来的に売却することで、大きな利益を狙うことができます。たとえば、東京都心の再開発エリアや人気急上昇中の地域などでは、将来的な地価上昇を見込んだキャピタルゲイン目的の投資も多く見られます。また、ローン返済中は家賃収入(インカムゲイン)で元本を返済し、完済後に物件を売却してキャピタルゲインを得るという、段階的な「出口戦略」も有効です。

2.不動産投資の種類とメリット・デメリット

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ひと口に不動産といっても、その種類は多岐に渡り、それぞれに異なる収益構造やリスク、初期費用の水準があります。ここでは、不動産投資の代表的な投資先12種類の特徴やメリット・デメリットを紹介します。

2-1.マンション・アパート一棟

賃貸マンションやアパートを一棟丸ごと所有し、複数の入居者から家賃収入を得るのがマンション・アパート一棟投資です。

2-1-1.メリット

マンション・アパート一棟投資のメリットは、空室リスクを分散できる点です。例えば10戸ある物件で2戸が空室になっても、残りの8戸から家賃収入が得られるため、収入が完全に途絶えることはありません。また、土地と建物の両方を所有するため、資産としての安定性が高く、将来的な土地の値上がりが期待できるエリアでは、資産価値の上昇も見込めます。

2-1-2.デメリット

デメリットは、区分所有に比べて初期投資額が大きくなり、金融機関からの融資を得る際にも一定の信用力が求められます。ことです。また、建物全体の修繕費や維持管理コストは所有者の負担となるため、資金計画を十分に立てる必要があります。

2-2.戸建て

一戸建て住宅を購入し、主にファミリー層に貸し出して家賃収入を得る投資スタイルです。

2-2-1.メリット

戸建て投資のメリットは、専有面積が広く、借り手がファミリー層中心であるため、比較的高めの家賃を設定できることです。単身者向け物件に比べて入居期間が長くなる傾向があり、安定した収入が見込めます。さらに、共用部分がないため、維持費を抑えることができます。土地付き物件であれば、将来的に売却しやすいという資産性も魅力といえます。

2-2-2.デメリット

デメリットは、中古物件の場合、屋根や外壁、配管などの修繕に予想以上の多額の費用がかかる可能性があることです。また、1戸に1世帯が入居するため、空室になると家賃収入が完全に途絶えるリスクがあります。

2-3.区分マンション

分譲マンションの1室(または複数室)を購入し、主に単身者に貸し出して家賃収入を得るのが区分マンション投資です。初期費用が比較的少なく済むため、不動産投資の入門として選ばれることも多くなっています。

2-3-1.メリット

区分マンション投資のメリットは、一棟物件に比べて少額の資金で始められることです。東京23区、横浜、名古屋、大阪などの大都市圏で、駅から徒歩10分以内の好立地物件を購入すれば、安定した賃貸需要が期待できます。また、エリアを変えて複数の物件を所有することで、分散投資しやすいのもメリットです。

2-3-2.デメリット

1室のみを所有する場合、空室になると家賃収入が途絶えてしまうリスクがあります。また、同一エリアに競合物件が多いと、入居者を確保するために家賃を下げたり、最新設備導入したりと、追加費用が必要になる場合があります。

2-4.ビル一棟(店舗・事務所)

オフィスビルや商業ビルを一棟丸ごと購入し、テナントからの賃料を主な収入源とするのがビル一棟投資です。高額な初期投資と専門的な運用ノウハウが求められることから、上級者向けの投資手法といえます。

2-4-1.メリット

複数のテナントから高額な賃料を得られる可能性があり、多数のテナントから高額な賃料収入を得られることを期待できます。とくに都市部の駅近エリアに立地するビルはテナント需要が高く、稼働率が高ければ収益性も向上します。また、テナントが原状回復費用を負担することが一般的で、オーナー側の修繕コストを抑えられる場合もあります。

2-4-2.デメリット

一棟ビルの購入には数億円単位の資金が必要になるケースも多く、融資審査のハードルも高くなります。加えて、空室が発生した場合の収益インパクトが大きく、長期にわたって空室が続くと資金繰りに影響を及ぼすリスクもあります。固定資産税などの維持コストが高額になりやすいため、長期的な収支計画が求められます。

2-5.ホテル・旅館

宿泊施設を購入し、自ら運営するか、事業者に委託して宿泊料を得るのが、ホテル・旅館投資です。観光地や都市部を中心に需要があり、特にインバウンド(訪日外国人旅行者)の回復により再注目されています。

2-5-1.メリット

ホテル・旅館の立地やサービス内容が優れていれば、1泊あたりの単価が高く設定でき、高い収益性が見込める点がメリットです。特にインバウンド需要があるエリアでは、外国人観光客によって高稼働率が期待でき、時期によっては満室経営も可能になります。

2-5-2.デメリット

需要が景気や外的要因に左右されやすく、新型感染症の流行や自然災害、国際情勢の変化などが稼働率に大きな影響を及ぼす点が最大のリスクです。また、宿泊業には保健所の許可や消防設備の設置など、法令に基づいた厳格な設備要件が求められるため、初期投資の段階で想定外のコストが発生することもあります。安定した運用を続けるには、立地やターゲット層に合わせた柔軟な経営戦略が求められます。

2-6.民泊・簡易宿所

マンションや戸建てなどの居住用物件を宿泊施設として短期間貸し出し、宿泊料金を得る投資方法です。インバウンド需要の回復や旅行スタイルの多様化に伴い、都市部や観光地を中心に注目を集めています。

2-6-1.メリット

最大のメリットは、運用コストの低さです。特に、自宅を宿泊施設として活用する場合、初期費用をほとんどかけずに始めることができます。特に国家戦略特区に指定されているエリアでは、通常よりも簡易な手続きで民泊営業の許可が取得できる場合もあります。

2-6-2.デメリット

運営にあたっては「住宅宿泊事業法(民泊新法)」や「旅館業法」の遵守が求められ、届け出や設備基準、年間営業日数の上限(住宅宿泊事業は年間180日まで)などの制限があります。また、分譲マンションでは管理規約で民泊が禁止されているケースも多く、事前の確認が必須です。加えて、近隣トラブルや騒音問題のリスクもあるため、運営には配慮が欠かせません。

2-7.工場・倉庫

工場や倉庫を購入して企業などに貸し出し、家賃収入を得る投資方法です。駅近の立地条件が必須ではないため、都市郊外や幹線道路沿いの土地でも活用できる点が特徴です。

2-7-1.メリット

借主が法人であるケースが多く、長期契約につながりやすいため、安定した収入が見込める点がメリットです。また、工場や倉庫の管理は基本的に借主が行うため、オーナー側のメンテナンス負担が少ないことも魅力といえます。

2-7-2.デメリット

対象となる業種が限られるため、空室になると次の借主が見つかるまでに時間がかかるというデメリットがあります。また、敷地が広い分、固定資産税などのコストも高額になりやすい点には注意が必要です。

2-8.トランクルーム

遊休地や建物の一部にトランクルームを設置し、保管スペースとして区画ごとに貸し出し、使用料を得る投資方法です。都市部を中心に「収納不足」へのニーズが高まっており、注目を集めています。

2-8-1.メリット

人が居住しないため管理の手間が少なく、原状回復の必要もほとんどありません。そのため、低コストで運用できる点が大きなメリットです。また、収納スペースが不足しがちな都市部ではニーズが高く、安定した需要が期待できます。

2-8-2.デメリット

1区画あたりの使用料が比較的低いため、収益性はあまり高くありません。立地が悪い場合や、周辺に競合施設ができた場合には稼働率が下がるリスクもあります。さらに、施設の知名度を上げるには広告費などの販促コストも必要になり、稼働安定までに一定の時間がかかるケースもあります。

2-9.駐車場

遊休地を月極または時間貸しの駐車場として貸し出し、駐車料金を得る投資方法です。舗装せずに更地のまま車を駐車できる青空駐車場や、コインパーキング、機械式駐車場などがあります。

2-9-1.メリット

駐車場投資のメリットは、初期投資が比較的少なく済むことです。舗装をしない青空駐車場であれば、ほとんど元手をかけずに始めることも可能です。また、建物を建てないため災害リスクが低く、事業者に管理を委託すれば、手間をかけずに運用できます。

2-9-2.デメリット

駐車場は居住用物件に比べて賃料単価が低く、収益性は限定的です。誰でも比較的簡単に始められるため競合も多く、立地によっては空きが出やすくなる点もデメリットです。また、更地扱いの駐車場では固定資産税の軽減措置を受けられないため、課税額が住宅用地と比べて高くなる点にも注意が必要です。

2-10.REIT(不動産投資信託)

REIT(Real Estate Investment Trust)とは、投資家から集めた資金で事業者が不動産を購入・運用し、その収益の一部を分配金として投資家に還元する不動産に特化した投資信託の一種です。東京証券取引所に上場しているものはJ-REIT(上場不動産投資信託)と呼ばれます。

2-10-1.メリット

J-REITは証券市場で取引されているため、少額から投資でき、いつでも売買可能という高い流動性が魅力です。J-REIT市場は分配金利回りが比較的高く、2025年3月時点では平均で5%前後の利回りが報告されており、安定した収益が期待できます(※日本取引所グループの公表データに基づく)。

2-10-2.デメリット

株式と同様に価格変動リスクがあり、景気動向や金利、為替の影響を受けやすい点には注意が必要です。過去にはファンドの吸収合併や上場廃止が発生した事例もあるため、分散投資やファンド選定には慎重な対応が求められます。

2-11.不動産小口化商品

不動産小口化商品とは、1つの不動産を複数の小口に分けて販売し、複数の投資家が共同で出資する仕組みの商品です。例えば、都心のオフィスビルや商業施設といった高額物件を、1口50万円〜数百万円から投資できるように設計されています。

2-10-1.メリット

不動産小口化商品のメリットは、まとまった資金を用意しなくても、高額な不動産への投資が可能になる点です。REITのように間接的にファンドに投資するのではなく、収益物件に直接投資するため、物件オーナーの感覚を持てる点も魅力です。また、得られる収益は配当所得ではなく不動産所得となるため、場合によっては節税効果も見込めます。

2-10-2.デメリット

商品ごとに運用内容や収益構造、手数料体系が異なり、情報開示の内容にもばらつきがあります。REITのように上場していないため、途中で換金しにくいなどの流動性リスクがある点にも注意が必要です。

2-12.不動産クラウドファンディング

不動産クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の投資家から資金を集め、事業者が運用した不動産の家賃収入や売却収入などから投資家に分配金として還元する投資商品です。近年は、少額から投資可能な商品が増え、手軽な資産運用手段として人気を集めています。

2-12-1.メリット

1口1万円程度から投資可能な案件も多く、初心者でも始めやすい点が最大の特徴です。利回りも安定しており、業界のコンセンは3~8%程度の案件も多く、比較的高水準の収益を期待できます。

2-12-2.デメリット

REITに比べると市場規模がまだ小さいため、先着順のファンドは募集開始直後に完売することもあります。希望する案件に投資できない「買えないリスク」がある点には注意が必要です。前述した小口化商品と同様に情報開示の内容にもばらつきがあるので、サービス提供会社の信頼性や過去の実績も、事前にしっかり確認しておきましょう。

3.不動産投資の種類を選ぶときのポイント

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どの投資方法を選ぶかは、収益性やリスクだけでなく、自身の目的や資金状況、ライフプランに合っているかどうかを冷静に見極めることが重要です。ここでは、不動産投資の種類を選ぶ際に押さえておきたい視点について解説します。

3-1.不動産投資の目的を明確にする

まずは不動産投資を始める前に、投資の目的を明確にしておくことが重要です。よくある目的としては、次のようなものがあります。

・安定した収益を得たい
・不動産を通じて資産形成したい
・相続税対策として物件を所有したい
・老後の生活資金を確保したい

目的によって、運用の方法や投資期間、リスクの取り方が変わってきます。まずは自分の目的を整理し、それに合った投資先を選んで、資金計画を立てることが第一歩です。

3-2.種類ごとの利回りやリスクを考慮する

物件タイプによって利回りやリスクが異なります。一般に利回りが高い物件ほどリスクも高くなる傾向があります。

例えば、一棟物件は部屋数が多いため利回りが高くなる傾向がありますが、老朽化による修繕費がかさむと実質的な利回りは下がる可能性があります。一方、新築の区分マンションは利回りこそ中古より低めですが、空室や修繕のリスクが少ないため、結果として安定した運用が期待できます。

3-3.市場の動きを踏まえて判断する

不動産市場の動きを踏まえて判断することも重要なポイントです。区分マンションであれば、「住みたい街ランキング」などの調査を参考に今後人気が上昇しそうなエリアを予想し、先回りして物件を購入するのも1つの方法です。

また、物件タイプごとの動向に注目するのも効果的です。新型コロナウイルスの感染拡大期には不人気だったホテル・旅館が、感染症法の分類変更を機にインバウンド需要が回復し、宿泊料金の上昇とともに再び注目されるようになりました。
今後の需要回復が見込まれるセクターやエリアを先読みして投資することも、有効な戦略のひとつです。

3-4.所有資金や資産から判断する

どれだけ魅力的な投資先でも、自身の資金に見合っていなければ持続的な運用は困難です。不動産投資では、自己資金に加えて融資の可否や借入可能額も判断基準になります。

たとえば、会社員が初めて投資をする場合、融資を受けやすい区分マンション投資から始めるのが一般的です。反対に、一棟ビルや工場・倉庫のような高額物件は、十分な資産背景と経験を持つ投資家向けといえます。現在の資金力と将来の資産形成プランを照らし合わせながら、無理のない投資判断を行いましょう。

4.不動産投資は目的を明確にして最適な投資先を選ぼう

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ここまで紹介してきたように、不動産投資には多くの種類があり、それぞれに収益性やリスク、必要資金、管理の手間などが異なります。そのため、まずは自身の投資目的やライフプランを明確にし、どのタイプの不動産が自分にとって最適なのかを見極めることが何より重要です。

例えば、目先の収益よりも長期投資で老後資金を作りたいなら、区分マンションが適しているでしょう。30歳までに35年ローンを組んで購入すれば、定年退職を迎える65歳でローンを完済できます。年金の支給も開始されるので、家賃収入を組み合わせることで老後の生活をより安定させることができるでしょう。

一方で、まとまった資産をすでに保有している方や、土地を所有しているオーナーであれば、一棟アパートやトランクルーム、駐車場のような土地活用型の不動産投資が有効です。また、自己資金を抑えたい場合は、不動産クラウドファンディングや小口化商品など、少額から始められる手段もあります。

投資の経験が浅い段階では、いきなり高額な物件に挑戦するのではなく、信頼できる不動産会社や専門家に相談しながら、エリアや資金状況に合わせた投資戦略を立てるのが堅実なアプローチといえるでしょう。

※記事中で紹介した投資方法は一例であり、結果を保証するものではありません。参考程度にお考えください。

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