

不動産投資において、自己資金は重要な役割を果たします。自己資金が多ければ、ローン返済負担を軽減できる一方、元手ゼロで始めるフルローンを選ぶ投資家もいます。しかし、フルローンで購入する場合には特有のリスクも存在します。
本記事では、不動産投資の自己資金の目安や、元手ゼロで始める場合のリスクと注意点を確認し、併せておすすめの物件も紹介します。
目次
1.不動産投資の自己資金とは?

不動産投資における自己資金とは、金融機関からの融資に頼らず、自分自身で用意する資金のことです。不動産投資はローンを利用して行うのが一般的ですが、自己資金が多いほど借入額を抑えられ、返済負担の軽減につながります。
1-1.ワンルームマンション投資は自己資金のハードルが低い
不動産投資の中でも、ワンルームマンション投資は比較的少ない自己資金で始められるのが特徴です。他の物件タイプと比べて価格が安いため、購入時の頭金や諸費用なども抑えやすい利点があります。そのため、無理のない資金計画が立てやすく、不動産投資初心者にも取り組みやすい物件タイプといえます。
2.不動産投資の自己資金の目安

不動産投資の自己資金の目安を、頭金と諸費用に分けて確認しておきましょう。おおよその目安にはなりますが、資金計画を立てる上での参考になります。
2-1.頭金の目安
頭金とは、不動産を購入する際に物件価格の一部として充当する資金のことで、残りの金額は金融機関からの融資で調達するのが一般的です。頭金の目安は、物件価格の10~30%程度といわれています。
住宅金融支援機構が実施した「2023年度フラット35利用者調査」によると、マンション融資利用者が用意した手持金の2023年度全国平均は1,188万7,000円(購入価格5,245万4,000円)で、割合は22.7%となっています。住宅ローンの例にはなりますが、不動産投資における頭金の目安とされる物件価格の10~30%の範囲内に収まっています。
なお、頭金は多ければ多いほど良いと考えられがちですが、預貯金を全額頭金に充てるのは得策ではありません。経営開始後の運転資金に余裕がなくなる恐れがあるため、頭金は物件価格の30%以内にとどめ、残りは空室や修繕などの予期せぬ出費に備えて確保しておくことが大切です。
2-2.諸費用の目安
諸費用の目安は、新築と中古で異なります。一般的に、新築は物件価格の3~7%程度、中古は6~13%程度が目安とされています。
物件購入時には、以下のような諸費用が発生します。これらは代表的なものであり、状況によって他にも費用がかかる場合があります。
・手付金
・印紙税(売買契約書やローン契約書に貼付)
・仲介手数料(売主直販の新築マンションはかからない)
・不動産取得税
・固定資産税・都市計画税(中古マンションを買った場合日割り計算)
・登録免許税
・司法書士報酬(登記手続きを依頼する場合)
・損害保険料(火災保険・地震保険)
・団体信用生命保険料
・ローン事務手数料
・ローン保証料 など
3.【物件タイプ別】自己資金の目安

不動産投資を始めるにあたって、自己資金がどれくらい必要になるのかは物件タイプによって異なります。ここでは、頭金と諸費用を含めた自己資金の目安(物件価格の10~40%)を、物件タイプ別に具体的な金額でまとめました。
不動産投資を始めるにあたって、自己資金がどれくらい必要になるのかは物件タイプによって異なります。ここでは、頭金と諸費用を含めた自己資金の目安(物件価格の10~40%)を、物件タイプ別に具体的な金額でまとめました。
物件タイプ | 価格目安 | 自己資金比率 | 必要自己資金 |
---|---|---|---|
ワンルームマンション(中古) | 1,500万円~3,500万円 | 10% | 150万円~350万円 |
20% | 300万円~700万円 | ||
30% | 450万円~1,050万円 | ||
40% | 600万円~1,400万円 | ||
一戸建て(中古) | 2,500万円~4,500万円 | 10% | 250万円~450万円 |
20% | 500万円~900万円 | ||
30% | 750万円~1,350万円 | ||
40% | 1,000万円~1,800万円 | ||
ファミリーマンション(中古) | 3,000万円~6,000万円 | 10% | 300万円~600万円 |
20% | 600万円~1,200万円 | ||
30% | 900万円~1,800万円 | ||
40% | 1,200万円~2,400万円 | ||
ワンルームマンション(新築) | 2,800万円~5,500万円超 | 10% | 280万円~550万円超 |
20% | 560万円~1,100万円超 | ||
30% | 840万円~1,650万円超 | ||
40% | 1,120万円~2,200万円超 | ||
一戸建て(新築) | 4,500万円~7,000万円超 | 10% | 450万円~700万円超 |
20% | 900万円~1,400万円超 | ||
30% | 1,350万円~2,100万円超 | ||
40% | 1,800万円~2,800万円超 | ||
ファミリーマンション(新築) | 5,500万円~8,000万円超 | 10% | 550万円~800万円超 |
20% | 1,100万円~1,600万円超 | ||
30% | 1,650万円~2,400万円超 | ||
40% | 2,200万円~3,200万円超 | ||
一棟マンション(中古) | 6,000万円~ 数億円 |
10% | 600万円~ |
20% | 1,200万円~ | ||
30% | 1,800万円~ | ||
40% | 2,400万円~ | ||
一棟マンション(新築) |
3億円~ 数十億円 |
10% | 3,000万円~ |
20% | 6,000万円~ | ||
30% | 9,000万円~ | ||
40% | 1億2,000万円~ |
自己資金を抑えて不動産投資を始めたい場合、中古ワンルームマンションは選択肢の一つになるでしょう。新築ワンルームマンションも中古よりは自己資金が必要ですが、融資状況によっては十分に検討の余地があります。
ファミリーマンションは、中古であれば比較的検討しやすい価格帯の物件もありますが、新築はより多くの資金が必要です。一戸建ても同様に、中古は自己資金を抑えやすいですが、新築はファミリーマンション(新築)と同等かそれ以上の自己資金が必要となることもあります。一棟マンションは、中古・新築ともに高額で、多額の自己資金に加え、高い信用力、そして管理・運営能力が求められます。
4.不動産投資は自己資金ゼロで始めることも可能

不動産投資は、フルローンを利用することで、自己資金ゼロでも始めることが可能です。フルローンとは、物件価格の全額を金融機関から借り入れる融資形態で、自己資金を使わずに物件を取得できる点が大きな特徴です。この方法なら、初期費用を抑えて不動産投資をスタートできるため、貯蓄が少ない場合でもチャレンジしやすくなります。また、自己資金を温存できることで、突発的な出費への備えや、別の投資機会に資金を活用できる柔軟性も生まれます。
一方で、フルローンは借入額が大きくなるため、綿密な資金計画が不可欠です。自己資金ゼロで始められることは魅力ですが、押さえておくべき重要なポイントもあります。次項で、自己資金ゼロで不動産投資を始める場合のリスクや注意点を解説します。
5.不動産投資を自己資金ゼロで始めるリスクと注意点

自己資金ゼロで不動産投資を始めることは資金効率を高める有効な手段ですが、その裏には避けられないリスクや注意点も存在します。次に挙げるポイントを事前に理解しておきましょう。
5-1.融資審査のハードルが上がる
自己資金を投入せずに不動産投資を始める場合、融資審査は必然的に厳しくなります。金融機関は貸し倒れリスクを避けるため、返済能力や物件の価値を慎重に評価します。
まず重視されるのは、個人の信用力です。安定した収入や勤続年数、職業に加え、過去のローン返済状況やクレジットカードの利用履歴など、信用情報が細かく審査されます。特に、年収が高く、社会的地位が安定している場合は、融資審査で有利に働きます。
次に、物件の担保価値も重要な評価ポイントです。金融機関は、万が一返済が滞った場合でも物件の売却によって貸付金を回収できるかを重視します。「東京23区内・駅から徒歩10分以内」など、需要の高いエリアにある物件は資産価値が高く評価され、審査通過の可能性が高まります。
さらに、物件の収益性も審査対象となります。安定した家賃収入や高い利回りが期待できる物件は、返済の見通しが良好と評価されます。また、過去に不動産投資で成功実績がある場合、投資家としての信頼性が上がり、融資の承認を得やすくなります。
これらの条件を満たさない場合、フルローンの審査は難航する可能性が高いでしょう。事前に信用情報や収入状況を見直し、収益性の高い物件を選定した上で、無理のない返済計画を立てることが、フルローンの審査に通過するための鍵となります。
5-2.毎月の返済金額が多くなる
フルローンを利用すると、物件購入に必要な資金の全額を融資で賄うことになり、毎月のローン返済額は自己資金を投入した場合に比べて大きくなります。自己資金を入れない分、借入額が増えるため、金利負担も相対的に大きくなります。
また、空室の発生や家賃滞納などによって収入が途絶えると、返済計画に悪影響が出る恐れもあります。空室が長期間続き返済が遅れた場合は、金融機関から一括返済を求められる可能性もあるでしょう。このような事態に備えるためには、数ヵ月分の運転資金を事前に確保しておく必要があります。
5-3.デッドクロスのリスクが高まる
フルローンを利用した不動産投資では、「デッドクロス」の発生に注意が必要です。デッドクロスとは、不動産投資ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態を指します。
減価償却費は経費として計上できる一方、元金返済分は経費として扱えないため、元金返済額が増えることで課税所得が増加し、結果として税負担が重くなるリスクがあります。これにより、帳簿上は黒字でも実際のキャッシュフローは悪化し、資金繰りが厳しくなることがあります。
フルローンを利用する場合は、デッドクロスの影響をカバーできる高収益物件の選定や、ローン返済額を上回る安定した家賃収入を見込める収支計画を立てることが不可欠です。
6.不動産投資の自己資金を抑える方法

不動産投資では、自己資金をできるだけ抑え、その分を運転資金に回すことも効果的な戦略の一つです。ここでは、自己資金を抑えるための具体的な方法を紹介します。
6-1.資産価値の高い物件を選ぶ
資産価値の高い物件を選ぶことで、金融機関からの担保評価が上がり、少ない自己資金でも融資審査に通る可能性があります。資産価値の高い物件の条件は、「収益性が高いこと」と「売却価値が高いこと」です。
ローンの返済は家賃収入を原資とするため、安定した家賃収入が見込める物件は、返済に余力が生まれやすく、金融機関からの信用も得やすくなります。また、売却価値が高い物件であれば、万が一返済不能に陥った場合でも、物件を売却して債権を回収できるため、金融機関は融資に前向きになります。
このように、資産価値の高い物件を選ぶことで、金融機関から多くの融資を引き出しやすくなり、結果として自己資金を抑えることが可能です。
6-2.個人の属性の高さを利用する
融資審査では、借り手の個人属性が優れているほど有利な条件を引き出しやすくなります。金融機関は、安定した返済能力かあることを重要視しており、その評価基準として年収、勤務先と勤続年数、資産残高、家族構成、借入状況などが考慮されます。
6-2-1.年収
金融機関ごとに年収の基準は異なりますが、一般的には地方銀行で500万円以上、メガバンクで700万円以上が目安とされています。高額物件の場合、1,000万円以上の年収が求められることもあります。
6-2-2.勤務先と勤続年数
公務員、上場企業の社員、医師・弁護士などの士業は安定した職業と見なされ、融資審査において高く評価されます。さらに、勤続年数が3~5年以上あれば、安定した収入があると判断されやすくなります。
6-2-3.資産残高
預貯金や有価証券などの金融資産が多い場合、家賃収入が途絶えた場合でも資産を取り崩して返済できるため、金融機関からの評価が高くなります。
6-2-4.家族構成
扶養家族が多い場合や、子どもの教育費などで生活費がかさむ場合、返済能力に影響が出ると判断されることがあります。一方、子どもが成人して家計に余裕がある場合は、審査で有利になる傾向があります。
6-2-5.借入状況
既存の借入状況も重要な審査ポイントです。住宅ローンやマイカーローン、カードローンなどの残債が多いと、返済負担が大きいと判断され、審査で不利になります。反対に、借入が少ない場合は返済負担が軽いと見なされるため、より多くの融資を受けられる可能性が高まり、結果として自己資金を抑えやすくなります。
6-3.諸費用を節約する
物件購入時には、仲介手数料や登記費用などの諸費用が発生しますが、これらを抑えることで自己資金の負担を軽減できます。
特に大きな負担となるのが仲介手数料です。仲介手数料は「売買価格×3%+6万円+消費税」で計算されます。例えば、売買価格が3,000万円の場合、仲介手数料は約105万6,000円となり、大きな出費となります。しかし、新築ワンルームマンションなど、デベロッパーが直接販売する物件は仲介手数料がかからない場合が多く、同じ価格帯の物件でも諸費用を抑えることが可能です。
また、司法書士報酬にも差があるため、事前に複数の司法書士事務所を比較し、実績がありつつ費用を抑えられる事務所を選ぶことで、さらに諸費用を節約できます。
6-4.融資アレンジができる金融機関を選ぶ
不動産投資ローンは金融機関ごとに利用条件が異なるため、自身の状況に合わせた柔軟な融資アレンジが可能なところを選ぶことが重要です。
例えば、若い投資家であれば返済期間を長く設定することで、月々の返済額を抑え、キャッシュフローに余裕を持たせることができます。また、金利や返済方式などの条件も異なるため、複数の選択肢を比較し、自分に最適な金融機関や融資プランを選ぶことで、自己資金の負担を軽減しやすくなります。
6-5.信頼と実績のあるパートナー会社を探す
不動産投資は、「購入」「運営」「売却」の3つのプロセスで成り立っています。これらを効率よく進めるためには、信頼できるパートナー会社の存在が欠かせません。
特に、物件の売買と管理を一貫して行っている総合不動産会社を選ぶことで、投資全体の質を向上させることができます。自社で販売した物件を管理している会社であれば、物件の構造や設備などの詳細を把握しているため、修繕時なども迅速かつ適切な対応が期待できます。また、売却時にはスムーズに売却手続きを進められるため、出口戦略も立てやすくなります。
7.自己資金を抑えやすいワンルームマンションがおすすめ

不動産投資で自己資金を抑えたい場合は、ワンルームマンションが特におすすめです。ワンルームマンションは、一棟物件やファミリータイプと比べて物件価格が安く、購入時に必要な自己資金を抑えやすいのが特徴です。物件価格が安ければ必要な融資額も少なくなり、審査にも通りやすくなります。特に都市部のワンルームマンションは需要が安定しており、資産価値も維持されやすいため、金融機関からの評価も得やすくなります。
また、単身者や学生などから継続的な賃貸需要が見込めるため、空室リスクが低く、安定した家賃収入を確保しやすい点も魅力です。さらに、ファミリータイプや一棟物件と比べて維持管理費や修繕費を抑えられるため、長期的な運営コストも削減できます。物件価格が比較的安価なことから、複数物件への投資もしやすく、リスク分散にもつながります。これにより、空室やエリアの影響を受けにくい安定した収益基盤を築くことが可能です。
このように、ワンルームマンションは少ない自己資金で始められるだけでなく、安定した収益を見込める投資先として適しています。
8.自己資金が少ない場合は不動産会社に相談するのがベスト

自己資金が少なくても物件購入を諦める必要はありません。不動産会社に相談すれば、限られた自己資金でも物件を購入できる可能性があります。金融機関は融資を通じて金利収入を得ることが目的であり、不動産の販売は主な目的ではありません。一方、不動産会社は物件販売を重視しており、少ない自己資金でも購入できるよう親身にサポートしてくれます。
自己資金が不足している場合、金融機関に行く前に不動産会社に相談することをおすすめします。特に、少ない自己資金で物件購入を目指しているのであれば、ワンルームマンションの販売実績が豊富な不動産会社に相談することで、スムーズに購入の道が開ける可能性があります。
※記事中の相場の目安は一例であり、個々の物件によって異なります。参考程度にお考えください。
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