ワンルームマンション投資の入居率を見極めよう。実際の空室率と対策も紹介
(画像=years/stock.adobe.com)
丸山 優太郎
丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。

「自分のアパートは、なぜか空室が埋まらない…」「賃貸アパートの入居率が低くて、ローン返済が苦しい」。アパート経営を行うオーナーにとって、入居率は収益に直結する最重要指標です。しかし、具体的な改善策が分からず、漠然とした不安を抱えている方も少なくありません。

実は、賃貸アパートの入居率は運や偶然で決まるものではなく、正しい知識に基づいた戦略と行動によって、オーナー自身がコントロールできる経営指標です。

この記事では、2025年の最新データに基づいた日本の平均入居率から、経営実態を正確に映し出すプロの入居率計算方法、そして入居率が下がる根本原因と、明日から実践できる具体的な10の改善策までを徹底解説します。最後まで読めば、あなたの賃貸経営を安定させ、入居率95%超えを実現するための道筋が明確になるでしょう。

目次

  1. 【最初に知りたい】賃貸アパートの平均入居率は?2025年最新データ
  2. 要注意!あなたの入居率計算は甘いかも?プロが使う「稼働率」の視点
    1. 計算方法①:戸数ベース入居率(一般的だが実態とズレることも)
    2. 計算方法②:賃料ベース稼働率(経営実態を映す、より重要な指標)
  3. なぜ埋まらない?入居率が下がる5つの根本原因【空室リスク診断つき】
    1. 原因①:物件の魅力低下(老朽化、時代遅れの設備)
    2. 原因②:家賃設定のミスマッチ(エリア相場との乖離)
    3. 原因③:募集(リーシング)活動の陳腐化
    4. 原因④:管理会社のパフォーマンス不足
    5. 原因⑤:エリア全体の需要の変化
    6. 【独自コンテンツ】空室リスク発見チェックリスト(20項目)
  4. 【超・実践的】入居率を95%以上に引き上げる10の処方箋
    1. ①【費用対効果で選ぶ】リフォーム・リノベーションBEST3
    2. ②【入居者が本当に求める】人気設備ランキングTOP5
    3. ③【低コストで差がつく】外観・共用部のバリューアップ術
    4. ④ 競合物件を徹底調査!データに基づく戦略的家賃設定
    5. ⑤ SUUMO等で「クリックされる」広告写真とキャッチコピーの法則
    6. ⑥ 繁忙期を逃さない!効果的な広告費の投下タイミング
    7. ⑦ 入居者満足度を高め長期入居につなげる「神」対応とは
    8. ⑧ フリーレント・初期費用割引の効果的な使い方
    9. ⑨ ペット可・楽器可など、ニッチ戦略でライバルと差別化
    10. ⑩【最終手段】パフォーマンスの悪い管理会社の変え方
  5. アパートとマンション、入居率戦略の決定的違い
    1. ターゲット層と家賃設定の違い
    2. 建物構造とメンテナンスコストの違い
    3. 管理組合の有無と意思決定プロセスの違い
  6. 入居率は運ではなく、知識と行動でコントロールできる経営指標

【最初に知りたい】賃貸アパートの平均入居率は?2025年最新データ

ワンルームマンション投資の入居率を見極めよう。実際の空室率と対策も紹介
(画像=years/stock.adobe.com)

最初に結論を述べると、賃貸住宅全体の入居率は全国的に見ても非常に高い水準で推移しています。

2024年11月発表の「第28回 賃貸住宅市場景況感調査」によると、全国の入居率は、委託管理物件では94.2%、サブリース物件では97.0%でした。

しかし、この平均値には注意が必要です。この高い入居率は、あくまで首都圏や主要都市部、特に築年数が浅く競争力の高い物件がけん引している数字です。委託管理物件の平均は94.2%ですが、首都圏に限ると95.6%、関西は95.0%なのですが、その他の地域は92.5%となっています。このように、地域別に見ると、地方都市や郊外では依然として空室に悩む物件は少なくない実態がうかがえます。

重要なのは、マクロな平均値に一喜一憂するのではなく、自身の物件が立地するエリアの競合物件と比較して、入居率が高いか低いかを判断することです。

たとえば、エリア全体の平均入居率が95%なのに、自分の物件が80%であれば、何らかの対策が急務であると判断できます。2025年も都市部への人口集中は続くと予測されており、物件の競争力による入居率の二極化はさらに進むでしょう。

要注意!あなたの入居率計算は甘いかも?プロが使う「稼働率」の視点

ワンルームマンション投資の入居率を見極めよう。実際の空室率と対策も紹介
(画像=years/stock.adobe.com)

「うちのアパートは10戸中9戸埋まってるから、入居率は90%だ」。

このように考えているなら、少し注意が必要です。プロの投資家は、より経営実態に近い「稼働率」という指標で物件を評価します。ここでは2つの計算方法を見ていきましょう。

計算方法①:戸数ベース入居率(一般的だが実態とズレることも)

戸数ベースの入居率は、最もシンプルで一般的に使われる計算方法です。 これは、全戸数のうち、実際に入居している戸数の割合を示します。計算式は非常に簡単で、多くのオーナーがこの数値を参考にしています。

計算式:入居率(%) = 入居中の戸数 ÷ 全戸数 × 100
(例:10戸中8戸入居 → 8 ÷ 10 × 100 = 80%)

しかし、この計算方法には弱点があります。それは、各部屋の家賃の違いが考慮されない点です。例えば、家賃10万円の広い部屋が空室であることと、家賃5万円の狭い部屋が空室であることの経営へのインパクトはまったく異なりますが、戸数ベースでは同じ「1戸の空室」として扱われてしまいます。

計算方法②:賃料ベース稼働率(経営実態を映す、より重要な指標)

賃料ベースの稼働率は、満室想定時の家賃収入に対し、実際に得られている家賃収入の割合を示す指標です。 こちらの計算方法を用いることで、家賃の高い部屋の空室が経営に与える影響を正確に把握できます。不動産投資のプロや金融機関は、こちらの「稼働率」を重視して収益性を判断します。

計算式:稼働率(%) = 現在の年間家賃収入 ÷ 満室想定の年間家賃収入 × 100
(例:満室時家賃100万円/月、現状家賃85万円/月 → 85 ÷ 100 × 100 = 85%)

安定したアパート経営を目指すなら、戸数ベースの入居率だけでなく、この賃料ベースの稼働率を常に意識し、目標値を設定することが不可欠です。

なぜ埋まらない?入居率が下がる5つの根本原因【空室リスク診断つき】

ワンルームマンション投資の入居率を見極めよう。実際の空室率と対策も紹介
(画像=ThawKyar/stock.adobe.com)

高い入居率を維持するためには、まず空室が発生する根本的な原因を理解する必要があります。あなたの物件に当てはまるものがないか、診断してみましょう。

原因①:物件の魅力低下(老朽化、時代遅れの設備)

最も根本的な原因は、経年による物件の魅力低下です。 外壁の汚れやひび割れ、共用部の薄暗さといった見た目の問題や、「独立洗面台がない」「インターネット無料設備がない」など、現代の入居者ニーズに合わない時代遅れの設備は、空室の直接的な原因となります。

原因②:家賃設定のミスマッチ(エリア相場との乖離)

物件の価値に見合わない高い家賃設定は、入居希望者から敬遠される大きな要因です。 周辺の競合物件の家賃相場は常に変動します。新築物件が近隣に建った場合、相対的にあなたの物件の価値は下がっているかもしれません。定期的に相場を調査し、家賃が適正かを見直す必要があります。

原因③:募集(リーシング)活動の陳腐化

物件の魅力が正しく伝わらなければ、入居にはつながりません。 SUUMOやHOME'Sなどのポータルサイトに掲載している写真が暗かったり、物件の魅力が伝わらない説明文だったりすると、内見にすら至りません。募集活動を管理会社に任せきりにせず、オーナー自身も内容をチェックすることが重要です。

原因④:管理会社のパフォーマンス不足

入居者募集や物件管理を行う管理会社の能力も、入居率を大きく左右します。 近隣の仲介会社への営業活動が不足していたり、退去後の原状回復工事や清掃が遅かったりすると、募集の機会損失につながります。また、入居者からのクレーム対応が悪いと、退去の原因にもなりかねません。

原因⑤:エリア全体の需要の変化

物件個別の問題だけでなく、エリア全体の賃貸需要が変化している可能性も考慮すべきです。 例えば、近隣の大学や工場が移転してしまえば、学生や単身者の需要は激減します。人口動態や地域の再開発計画など、マクロな視点でエリアの将来性を見極めることもオーナーの重要な役割です。

【独自コンテンツ】空室リスク発見チェックリスト(20項目)

あなたの物件は大丈夫?以下のリストで空室リスクを診断してみましょう。5つ以上当てはまったら要注意です。

【建物・設備編】

  • ☐ 築年数が15年を超えている
  • ☐ 外壁や屋根に汚れ、ひび割れがある
  • ☐ エントランスや廊下が暗く、清掃が行き届いていない
  • ☐ 郵便受けがチラシで溢れている
  • ☐ 独立洗面台がない
  • ☐ 室内洗濯機置き場がない
  • ☐ インターネット無料設備がない
  • ☐ エアコンが古い(10年以上使用)
  • ☐ モニター付きインターホンがない
  • ☐ 宅配ボックスがない

【家賃・募集編】

  • ☐ 2年以上、家賃の見直しをしていない
  • ☐ 周辺の類似物件の家賃を把握していない
  • ☐ 敷金・礼金が「2ヶ月・2ヶ月」など、相場より高い
  • ☐ SUUMO等の写真がスマートフォンで撮ったような素人写真だ
  • ☐ 広告のキャッチコピーが「駅徒歩10分、閑静な住宅街」など平凡だ

【管理・エリア編】

  • ☐ 管理会社からの募集状況の報告が月1回もない
  • ☐ 現在の管理会社に不満がある
  • ☐ 入居者からのクレームや要望を把握していない
  • ☐ 近隣に新築の競合物件が建った、または建設中だ
  • ☐ エリアの人口が減少傾向にある

【超・実践的】入居率を95%以上に引き上げる10の処方箋

ワンルームマンション投資の入居率を見極めよう。実際の空室率と対策も紹介
(画像=BBuilder/stock.adobe.com)

原因が分かったら、次はいよいよ具体的な対策です。ここでは、費用対効果の高いものから順に、入居率を劇的に改善する10の打ち手をご紹介します。

①【費用対効果で選ぶ】リフォーム・リノベーションBEST3

やみくもなリフォームは費用倒れのもと。ターゲットに響く、費用対効果の高いものから着手しましょう。

  1. 水回り3点セットの交換(キッチン・風呂・トイレ):特に女性に重視されるポイント。すべてを交換しなくても、古びた水栓を交換したり、シートを貼ったりするだけでも印象は大きく変わります。
  2. モニター付きインターホンの設置:防犯意識の高まりから、今や必須設備。数万円の投資で大きな安心感を与えられます。
  3. アクセントクロスの導入:壁の一面だけ色や柄を変えるだけで、部屋の印象がおしゃれに様変わりします。低コストで内見時のインパクトを格段に上げられます。

②【入居者が本当に求める】人気設備ランキングTOP5

「この設備がなければ入居が決まらない」と言われるほどの人気設備を導入し、競争力を高めましょう。

  1. インターネット無料:単身者向け物件ではもはやインフラ。全戸一括導入すれば、月々の費用を抑えつつ大きなアピールポイントになります。
  2. 宅配ボックス:ネット通販の普及で需要が急増。後付け可能なタイプもあります。
  3. 独立洗面台:特に女性の入居希望者には必須の設備とされています。
  4. 浴室乾燥機:雨の日や花粉の季節に洗濯物を干せるため、非常に人気が高い設備です。
  5. 追い焚き機能:単身者向けでも、入浴時間を気にしなくて済むため、あると喜ばれます。

③【低コストで差がつく】外観・共用部のバリューアップ術

内見者は部屋に入る前に、まず外観と共用部を見ます。 第一印象を良くすることで、内見の成約率は格段に上がります。高圧洗浄機での外壁清掃、エントランス照明のLED化、共用廊下への長尺シート施工など、低コストでも効果の高い施策はたくさんあります。

④ 競合物件を徹底調査!データに基づく戦略的家賃設定

家賃は感覚ではなく、データに基づいて決めるべきです。 SUUMOなどで自分の物件と同じ最寄り駅、同じような間取り、築年数の物件をリストアップしましょう。その上で、自物件の強み(角部屋、リフォーム済みなど)と弱みを考慮し、競合物件より「少しだけお得感」のある家賃を設定することが成約への近道です。

⑤ SUUMO等で「クリックされる」広告写真とキャッチコピーの法則

ネット上の情報が勝負の分かれ目です。 プロのカメラマンに依頼し、広角レンズを使って明るく魅力的な写真を撮影してもらいましょう。また、「【在宅ワーク快適】高速インターネット無料!」や「【初期費用カード払い可】賢くお引越し」など、ターゲットの心に刺さる具体的なメリットをキャッチコピーに入れるとクリック率が上がります。

⑥ 繁忙期を逃さない!効果的な広告費の投下タイミング

賃貸の繁忙期である1月~3月に空室を埋めきることが、年間の入居率を安定させる鍵です。 この時期には、広告料(AD)を家賃の2~3ヵ月分に設定するなど、インセンティブを増やして仲介会社に優先的に紹介してもらう戦略が有効です。閑散期に無駄な広告費を使うより、メリハリのある費用投下が重要です。

⑦ 入居者満足度を高め長期入居につなげる「神」対応とは

空室対策の基本は、今いる入居者に長く住んでもらうことです。 設備の不具合には迅速に対応し、定期的な清掃で物件を清潔に保つなど、当たり前のことを徹底しましょう。更新時には「いつも綺麗にお使いいただきありがとうございます」といった手紙を添えるだけでも、入居者の満足度は高まり、長期入居につながります。

⑧ フリーレント・初期費用割引の効果的な使い方

「家賃1ヵ月無料」などのキャンペーンは、入居の最後のひと押しに効果的です。 ただし、恒常的に行うと物件の価値が低いと見なされる恐れも。繁忙期の終盤や閑散期など、タイミングを限定して「今だけお得」感を演出するのが賢い使い方です。

⑨ ペット可・楽器可など、ニッチ戦略でライバルと差別化

通常の物件では入居者が決まりにくい場合、特定のニーズに特化するのも有効な戦略です。 「ペット可」「楽器相談可」「DIY可」など、条件を緩和することで、供給の少ない市場で圧倒的な競争力を発揮できます。ただし、それに伴うリスク(傷、騒音など)を理解し、規約をしっかり整備することが前提です。

⑩【最終手段】パフォーマンスの悪い管理会社の変え方

あらゆる対策を講じても入居率が改善しない場合、問題は管理会社にあるかもしれません。 報告・連絡・相談が遅い、空室対策の提案がない、近隣の仲介会社への営業をしていない、といった場合は変更を検討すべきです。複数の管理会社から話を聞き、自物件のエリアに強く、熱意のある会社に切り替えることで、状況が劇的に改善するケースは少なくありません。

アパートとマンション、入居率戦略の決定的違い

ワンルームマンション投資の入居率を見極めよう。実際の空室率と対策も紹介
(画像=oka/stock.adobe.com)

賃貸アパートマンションでは、その特性から入居率を高めるための戦略も異なります。特に区分マンション投資を検討しているなら、その違いを理解しておくことが重要です。

ターゲット層と家賃設定の違い

一般的に、マンションはアパートに比べて家賃が高く、ファミリー層や高所得の単身者・DINKSがターゲットとなります。そのため、セキュリティの高さや設備のグレード、高級感が求められます。一方、アパートは学生や若手の社会人がメインターゲットとなり、家賃の手頃さや駅からの近さといった利便性が重視される傾向にあります。

建物構造とメンテナンスコストの違い

マンションは鉄筋コンクリート(RC)造が多く、遮音性や耐火性に優れますが、大規模修繕のコストは高額になります。アパートは木造や軽量鉄骨造が主流で、建築コストは安いものの、マンションに比べると遮音性などで劣る場合があります。入居率を維持するためのメンテナンス計画も、この構造の違いを考慮する必要があります。

管理組合の有無と意思決定プロセスの違い

これが最も大きな違いです。 アパート経営はオーナー一人の意思でリフォームや家賃設定ができますが、区分マンションの一室を貸す場合は、共用部の修繕やルールの変更などは「管理組合」の総会で決定されます。自分の意思だけでは大規模な改修ができないなど、意思決定の自由度が低い点は、マンション入居率戦略を考える上で大きな制約となり得ます。

入居率は運ではなく、知識と行動でコントロールできる経営指標

ワンルームマンション投資の入居率を見極めよう。実際の空室率と対策も紹介
(画像=JD8/stock.adobe.com)

本記事では、賃貸アパートの入居率について、その計算方法から改善策までを網羅的に解説しました。

重要なポイントは、「入居率はオーナーが主体的にコントロールできる経営指標である」ということです。市場の平均データに一喜一憂するのではなく、まずは自身の物件の経営実態を「賃料ベースの稼働率」で正確に把握することから始めましょう。

そして、空室の原因が「物件の魅力」「家賃」「募集活動」「管理会社」「エリア」のどこにあるのかを冷静に分析し、費用対効果の高い改善策から一つずつ実行していくことが成功への鍵です。

今回ご紹介した10の処方箋を参考に、ぜひあなたの物件の価値を最大化し、入居率95%超の安定したアパート経営を実現してください。行動したものだけが、厳しい賃貸市場を勝ち抜くことができるのです。

>>【無料eBook】「借金は悪である」という既成概念が変わる本

【オススメ記事】
副業で考える人生設計|マンション経営も視野に入れた副業の可能性
首都圏でのマンション経営|覚えておくべき「相場感」を紹介
始める前に読んでおきたい 初心者向け長期資産運用のコツがわかる本5冊
土地とマンションの資産価値は?「売却価値」と「収益価値」
人生はリスクだらけ……でもサラリーマンが行う対策は1つでいい