

ワンルームマンション投資において、入居率はそのマンションの需要や収益性を示す重要な指標です。
本記事では、入居率の基本的な考え方を解説するとともに、実際の空室率データを交えながら、空室対策の具体的な方法も詳しく紹介します。
目次
1.入居率はワンルームマンション投資において重要な指標

ワンルームマンション投資において、入居率は非常に重要な指標の一つです。入居率とは、アパートやマンションの総戸数に対して実際に入居している部屋の割合を示す数値です。
例えば、入居率50%の物件と95%の物件があった場合、投資家は当然、95%の物件を選ぶでしょう。50%の物件は、何らかの理由で退去者が続出し、その後も空室が埋まらない状態と考えられます。自身の工夫で入居率を改善できる自信がない場合は、どれだけ価格が安くても避けたほうが無難です。
空室率は、退去が発生した後すぐに反映されるわけではありません。不動産管理会社によっては、退去日から1ヵ月経過した時点で空室とみなす場合があります。つまり、退去後1ヵ月以内に次の入居者が決まれば、入居率は下がらないということです。
また、入居率が高い物件は、単に物件の需要が高いだけでなく、不動産管理会社の「客付け力」の強さも反映しています。万一空室が出た場合でも、短期間で新たな入居者を見つけられる管理会社なら、安心して任せられるでしょう。
2.ワンルームマンションの入居率は3つある

ワンルームマンションの入居率には、状況に応じて異なる3つの算出方法があります。それぞれの計算例を挙げながら、特徴を解説します。
2-1.時点入居率
(総室数-空室数)÷総室数×100
時点入居率は、特定の時点における入居率を示す指標です。例えば、不動産広告でよく見かける「入居率98%(2024年3月時点)」といった表記がこれにあたります。ただし、不動産会社は最も入居率が高い時期のデータを掲載していることが多いため、年間を通じた平均入居率ではないことに注意が必要です。しかし、最高値が高ければ平均値も比較的高い可能性があるため、参考にはなります。
20室のマンションで、19室が入居している場合
(20室-1室)÷20室×100=95%
この方法では、年間の平均入居率だけでなく、繁忙期(例:3月)の入居率なども算出できます。シンプルで計算しやすい指標として、全体の傾向をつかむのに適しています。
2-2.稼働入居率
入居日数÷稼働日数×100
稼働入居率は、物件の年間稼働日数(通常365日)に対して、実際に入居していた日数の割合を示します。より実態に近い数値を反映する指標として活用されます。
20室のマンション(20室×365日=7,300日)のうち、5室が3ヵ月間空室(5室×30日×3ヵ月=450日)の場合
(7,300日-450日)÷7,300日×100=93.8%
この計算では、空室期間だけでなく、リフォームなどで貸し出せない期間も考慮すると、より正確な稼働入居率がわかります。単なる目安ではなく、実際の運用状況を正確に把握したい場合に有効です。
2-3.賃料入居率
(満室賃料-空室賃料)÷満室賃料×100
賃料入居率は、賃料ベースで算出する入居率です。稼働入居率と似ていますが、こちらは各部屋の賃料の違いを反映する点で異なります。
20室のマンションで、以下の条件の場合
・10室:月額10万円
・10室:月額8万円
・満室時年間賃料:2,160万円
・10万円の部屋5室が3ヵ月間空室(10万円×5室×3ヵ月=150万円の空室賃料)
(2,160万円-150万円)÷2,160万円×100=93.1%
稼働入居率(93.8%)と比較すると、高額な部屋が空室だった影響で、賃料入居率がやや低下しています。このように、賃料の影響を考慮できるのがこの指標の特徴です。他の2つに比べて一般的にはあまり使用されない指標ですが、賃料差が大きい物件の分析には有効です。
3.ワンルームマンションの空室率はどれくらい?

ワンルームマンションの空室率は、どれくらいあるのでしょうか。不動産ポータルサイト「LIFULL’HOMES」にワンルームマンションを含む賃貸住宅の空室率データが掲載されているため、参考にしてみましょう。以下は、東京23区の空室率を低い順に並べた一覧です(2025年2月14日時点)。
エリア | 空室率 |
---|---|
中央区 | 5.8% |
北区 | 8.0% |
江東区 | 8.4% |
荒川区 | 10.5% |
杉並区 | 10.7% |
目黒区 | 10.8% |
千代田区 | 11.0% |
文京区 | 11.6% |
墨田区 | 12.2% |
台東区 | 12.3% |
江戸川区 | 14.1% |
中野区 | 14.4% |
板橋区 | 14.5% |
渋谷区 | 16.0% |
足立区 | 16.1% |
大田区 | 16.6% |
新宿区 | 17.1% |
港区 | 18.6% |
葛飾区 | 18.7% |
豊島区 | 19.6% |
東京都全体の平均空室率は14.8%です。これは、首都圏の神奈川県(16.6%)、埼玉県(17.6%)、千葉県(19.6%)と比較しても低く、東京エリアの入居需要が依然として高いことを示しています。
一方、東京23区を個別に見ると、都心5区(中央区、港区、千代田区、渋谷区、新宿区)が必ずしも空室率が低いわけではありません。都心と下町エリアの空室率にばらつきが見られ、意外な結果といえます。
4.ワンルームマンション投資の空室対策

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が行った「第28回賃貸住宅市場景況感調査」によると、2023年度における単身者の平均居住期間は3年3ヵ月となっています。これは、単身世帯とファミリー世帯を含めた全体の平均居住期間4年2ヵ月よりも短く、さらにファミリー層の平均居住期間である5年3ヵ月と比べても、かなり短い期間です。大学生が卒業後に退去するなどの事情もありますが、ワンルーム物件ではおおよそ3年程度で入居者の入れ替わりが発生すると考えたほうがよいでしょう。
ワンルームマンション投資では、区分所有の場合、1室のみを所有しているため、空室が発生すると家賃収入が完全に途絶えてしまいます。そのため、空室が発生した際には、できるだけ早く次の入居者を確保するための効果的な空室対策を講じることが重要です。
4-1.費用を見直す
マンションを借りる際、入居者にはさまざまな初期費用が発生します。特に大きな負担となるのが敷金と礼金です。ワンルームマンションでは、学生など資金に余裕のない入居者が多いため、家賃以外の初期費用は敬遠されがちです。
最近は、敷金・礼金をゼロに設定した「ゼロゼロ物件」が増え、初期費用を抑えたい入居者からの人気が高まり、集客力向上につながっています。ただし、敷金を預からない場合には、退去時の原状回復費用を適切に入居者へ請求する必要があるため、事前の説明や契約条件の明確化が重要です。
また、一定の条件下で家賃の一部を返還する「キャッシュバックキャンペーン」を導入することも、集客効果を高める有効な手段です。例えば、「2年以上の居住」などの条件を設けることで、長期入居を促進できます。
さらに、空室期間が長期化している場合には、「家賃1ヵ月分無料」といったフリーレント制度の活用を検討してもよいでしょう。初期費用の負担を軽減できるため、学生や新社会人など資金に余裕のない層にとって魅力的な条件となり、入居を後押しする効果が期待できます。
4-2.集客方法を見直す
これまで行ってきた集客方法を見直すことも重要です。現在はインターネットが集客の主力手段となっているため、ネット広告の内容を再検討し、より多くの入居希望者にアピールできる工夫が効果的です。
物件の写真は、第一印象を左右する重要な要素です。できるだけ明るく広く見えるように撮影し、必要であればプロのカメラマンに依頼することも検討しましょう。また、モノクロの間取り図をカラーに変更すると、視認性が向上し、物件のレイアウトがより直感的に伝わります。物件の特徴を強調した写真や、周辺環境の写真を追加するのも有効です。
さらに、SNSを活用して物件情報を発信するのも現実的な集客手段です。物件の魅力や周辺施設の紹介、地域のイベント情報などを定期的に投稿することで、潜在的な入居希望者との接点を増やせます。特に若年層のターゲットには、InstagramやX(旧Twitter)などビジュアル重視のSNSが効果的です。
4-3.入居システムを見直す
賃貸物件においては、入居システムが入居希望者にとってハードルとなる場合があります。特に大きな障壁となるのが「保証人の確保」です。高齢者の賃貸住宅入居が難しいことはよく知られていますが、高齢者に限らず、保証人を確保できない人は少なくありません。
例えば、会社員が上司などに保証人を依頼することをためらい、その結果、入居を諦めてしまうケースもあります。このような機会損失を防ぐためには、家賃保証会社と契約し、「保証人不要システム」を導入することが効果的です。
また、契約期間に柔軟性を持たせることも、入居率を高める有効な手段です。多くの賃貸物件では1年契約や2年契約が一般的ですが、短期間の入居にも対応できるように「短期契約プラン」を設けることで、幅広いニーズに応えられるようになります。
4-4.人気の高い設備を導入する
入居者に人気の高い設備を導入することは、空室対策として効果的です。特に、生活の利便性や快適性を向上させる設備は、競合物件との差別化につながります。
例えば、「インターネット無料」はテレワークの普及や動画配信サービスの利用増加により、幅広い世代に支持されています。また、「宅配ボックス」は再配達の手間を省ける利便性から人気があり、「オートロック」や「防犯カメラ」は防犯意識の高い入居者に好まれる傾向があります。また、「浴室乾燥機」や「追い焚き機能」は日常の快適性を高め、「スマートロック」や「IoT家電対応」といった最新設備は、物件の付加価値を向上させる要素となります。
ただし、「インターネット無料」「宅配ボックス」「オートロック」などの共用設備は、一棟保有物件でなければ導入が難しい場合があります。一方、室内設備であれば区分所有でも導入しやすく、空室対策として有効です。
4-5.共用設備をアップグレードする
前述したように、区分所有物件では共用設備の導入や改善をオーナー単独で行うことは難しい場合がありますが、管理組合と協議することで入居者ニーズに応じた対応が可能になることがあります。
例えば、屋根のない自転車置き場に屋根を設置すれば、自転車が雨ざらしになるのを防ぐことができ、入居者の利便性と満足度が向上します。また、ゴミ置き場を「24時間ゴミ出し可能」に変更できれば、通勤・通学で忙しい入居者にも配慮した環境を提供でき、競合物件との差別化につながります。
共用設備の改善は入居者満足度の向上だけでなく、物件全体の魅力アップにも貢献するため、積極的に検討するとよいでしょう。
4-6.リフォームする
リフォームも空室対策として効果的な手段です。特にフルリフォームを行えば、部屋全体がほぼ新築のような状態になり、内覧時に入居が決まりやすくなります。
また、和室のワンルーム物件は少数ですが存在しており、一般的にワンルームはフローリングのイメージが強いため、和室が理由で長期間空室となることもあります。この場合、思い切って洋室へリフォームすることで入居希望者の幅を広げられるでしょう。
加えて、部分的なリフォームでも印象を大きく変えることができます。例えば、壁のクロスを張り替えるだけでも室内の雰囲気が一新されます。特に若い世代には、一部の壁に異なる色や柄を取り入れる「アクセントクロス」が人気で、部屋全体におしゃれな印象を与えることができます。
4-7.管理会社を見直す
不動産管理会社に管理を委託している場合、管理会社の客付け力が弱いと、空室が長期化するリスクがあります。内覧の申し込みが少ない場合は、広告戦略や集客方法に問題があることが考えられます。一方、内覧後に賃貸契約に結びつかない場合は、物件の魅力が十分に伝わっていない可能性があります。
「一度委託すると管理会社の変更は難しい」と考えるオーナーも多いですが、空室リスクを減らすためには、思い切って見直しを検討することも重要です。最近は、他社所有の物件でも管理を請け負う総合不動産会社も増えており、変更前に相談してみるのも有効な方法です。
5.入居率が高いワンルームマンションの特徴は?

入居率が高いマンションには、それなりの理由があります。ワンルームマンションで入居率が高い物件には、以下の3つの特徴があります。
5-1.好立地で周辺環境が良い
立地条件が良く、周辺環境も整っている物件は、安定した入居率が見込めます。特にワンルームマンションは単身者の入居が多いため、コインランドリー、コンビニ、スーパー、ファストフード店などが近くにある物件は選ばれやすくなります。
また、治安の良さも重要なポイントです。駅から物件までのルートに街灯が多く設置されている、人通りが多いなど、夜間でも安全性が確保されているエリアは、特に女性入居者からの人気が高まります。
5-2.設備が良く防音性が高い
入居者に人気の設備が整っており、防音性に優れた物件は長く住んでもらえる傾向があります。逆に、設備が古い、壁が薄く隣室の音が聞こえるなどの物件は、短期間で退去される可能性が高くなります。
中古マンションを購入する場合は、設備や防音性をしっかりと確認することが重要です。内覧の際には、営業担当者に詳細を確認するとよいでしょう。一方、新築マンションであれば最新設備が備わっていることが多く、防音対策も施されているため、こうした懸念は少なくなります。
5-3.近隣物件との差別化がなされている
ワンルームマンション投資では、競合物件との差別化が入居率を左右します。特に競争の激しいエリアでは、入居者に選ばれるための工夫が必要です。
差別化のためには、まず不動産ポータルサイトなどで競合物件の家賃相場や設備を調査し、自身の物件がどのような位置付けになるのかを把握しましょう。そのうえで、競合にない設備を導入する、入居条件を緩和する(例:契約期間の自由化)など、独自の強みを持たせることが効果的です。
6. ワンルームマンション投資は「入居率」で物件を見極めよう

ワンルームマンション投資において、安定した収益を長期的に確保するためには、入居率の高さが重要な鍵となります。物件を選ぶ際は、立地や設備だけでなく、必ず過去の入居率データを確認し、周辺の競合物件と比較するなど、安定した需要が見込める物件かどうかを見極めましょう。
また、入居率は管理会社の集客力や管理体制に大きく影響されます。管理委託契約を結ぶ前に、募集方法、入居者対応、トラブル時のサポート体制などを確認し、信頼できる管理会社を選ぶことが大切です。
なお、中古物件と比較して、新築物件は最新の設備やきれいな内装によって高い入居率が期待できるという利点があります。初期費用は高くなる傾向がありますが、修繕リスクが低く、安定したマンション経営を実現しやすいのが大きな魅力です。長期的な資産形成を考える際、新築ワンルームマンション投資は有力な選択肢となるでしょう。
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