

本記事ではワンルームマンション投資をサブリースで行うメリット・デメリットを解説し、失敗しないためのポイントについても紹介します。
目次
1.ワンルームマンション投資におけるサブリース契約の仕組み

ワンルームマンション投資は首都圏を中心に需要が安定しており、安定した入居率を実現しやすい特徴がありますが、サブリース契約を行うことでさらに空室リスクの低下が期待できます。サブリースとは、日本語で「一括借上げ」を意味し、サブリース事業者がオーナーから物件を借り上げ、入居希望者に貸し出す仕組みです。事業者は入居者から受け取った家賃から手数料を差し引き、残額をオーナーの口座に振り込みます。
入居者の募集や家賃の集金など賃貸経営に関する業務は事業者が行うため、オーナーは手間をかけずに家賃収入を得ることができます。
1-1.2020年に施行されたサブリース新法
かつてサブリース事業者と不動産オーナーの間でトラブルになった事件をきっかけに、2020年12月15日に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(サブリース新法)が施行されました。この法律では、不動産オーナーが不利な条件で不利益を被らないように、事業者に以下のような禁止事項や義務が定められています。
1-1-1.誇大広告等を禁止する
事実と異なる表示や、実際より有利な条件に見せかける広告は禁止されました。例えば、家賃の値下げがあるにも関わらず「〇年間家賃保証で安心」、営業時間中しか対応しないのに「24時間入居者対応」などと記載していれば誇大広告となります。
1-1-2.不当な勧誘等を禁止する
家賃が減額される可能性や、契約期間中でもサブリース事業者から契約解除される可能性があることを伝えずに契約させる不当な勧誘も禁止されました。
1-1-3.重要事項説明を義務化する
サブリース契約時にも重要事項説明をすることが義務化されました。これによって、家賃の改定条件や契約解除条件などの契約内容が書面で交付されるようになったので安心です。
1-1-4.違反した事業者に罰則を科す
新法では、違反した事業者には罰則が科せられるようになったので、事業者が一段と法令を遵守するようになる効果が期待できます。
2.ワンルームマンション投資をサブリースで行うメリット

ワンルームマンション投資でサブリースを利用するメリットとして、以下の5つのポイントが挙げられます。
2-1.空室リスクがない
不動産投資における大きな心配の一つが空室リスクです。サブリース契約では、オーナーが事業者に物件を貸し出すという形になります。借主は事業者であるため、空室になる心配がありません。
2-2.安定した収入を得られる
サブリース契約にして家賃保証を受けると、安定した収入を確保できます。不動産投資では一般的に金融機関から融資を受けて物件を購入し、家賃収入からローンを返済します。サブリースを活用することで安定した家賃収入を確保できれば確実にローンを返済できるので、安心して経営を行うことができます。精神的に安定するのもサブリースの大きなメリットです。
2-3.賃貸管理の手間がかからない
マンション経営を自主管理で行うと、入居者募集や家賃の集金などの業務を自分でやらなければなりません。物件に空室が出た場合も、事業者が新たに入居者募集を行うので、オーナーに一切手間がかからない点はメリットです。会社員などが仕事に影響を与えることなくマンション経営を行うには、便利なシステムといえます。
2-4.入居者とのトラブル対応も任せられる
賃貸経営でオーナーにとって気が重いのが、入居者とのトラブル対応です。家賃の滞納やペット飼育、騒音問題などトラブルの種はいくつもあります。サブリースでは物件管理業務がオーナーの手から離れているので、直接苦情を受ける心配はありません。対人関係が苦手なオーナーに向いているシステムです。
2-5.確定申告の手間が大幅に減る
賃貸経営では確定申告も大きな負担です。帳簿付けや領収書の管理など、仕事を持っているオーナーには重荷に感じるかもしれません。サブリースにすれば、賃貸経営で発生する細かな費用はすべて事業者が支出するため、オーナーの日々の記帳を大幅に簡素化できます。お金の流れは事業者から家賃を受け取る部分くらいです。
3.ワンルームマンション投資をサブリースで行うデメリット

ワンルームマンション投資でサブリースを利用することは経営の安定に寄与しますが、一方で以下のようなデメリットがあることも知っておく必要があります。
3-1.家賃保証が相場より低い
サブリースでは、オーナーの希望する家賃に設定できるわけではありません。競合物件の家賃や、周辺の家賃相場を参考に保証する家賃が設定されます。家賃を保証する事業者にとっては、確実に入居者を得られる家賃に設定したいので、周辺相場より低い金額設定にされる可能性は考慮する必要があります。
3-2.更新料や礼金は収入にならない
2年に1回程度の割合で入る更新料や、入居時に受け取る礼金はオーナーにとって貴重な副収入になります。ところがサブリース契約にすると、これらの副収入はすべて事業者の収入になってしまいます。サブリースでは事業者が入居者に物件を貸し出すので、事業者が貸主となります。そのため、更新料や礼金は入居者に対しての貸主になる事業者の収入となるのです。
3-3.オーナーから契約解除することは難しい
サブリースは、オーナーからの契約解除することが難しいのが大きなデメリットです。一般の賃貸契約でも入居者には居住権があるので、オーナーの都合で一方的に契約を解除することはできません。同様に、サブリース契約ではオーナーがサブリース事業者に物件を貸している状態になるので、正当な理由がない限りオーナーから契約を解除することは難しいのです。
3-4.中途解約されるリスクがある
上記のケースとは反対に、サブリース事業者はオーナーから物件を借りている立場なので、借主である事業者から中途解約することは簡単にできます。したがって、サブリース契約は中途解約されるリスクがあることを心得たうえで契約する必要があります。
3-5.解約時に高額な違約金が発生する可能性も
サブリース契約の解除に事業者が応じた場合でも、高額な違約金が発生する可能性があります。家賃収入の6ヵ月分が相場といわれているので、違約金を支払っても採算が合うのかよく見極めてから解除することが求められます。
3-6.賃料保証の改定で収入が減る恐れがある
賃料保証はいつまでも同じ金額ではありません。サブリースでは、一定期間で賃料の見直しが行われます。マンションの築年数とともに、家賃も少しずつ下がっていくのが一般的で、事業者は入居者確保のために、相場に合わせた家賃に改定しなければならないので、やむを得ない仕組みといえます。
3-7.オーナーが入居者を選べない
サブリースで心配なのは、オーナーが入居者を選べないことです。入居者との面談も事業者が行うので、どのような人が入居しても文句をいうことはできません。ただし、入居者とのトラブル対応には事業者があたるので、オーナーが直接迷惑を被るわけではありません。それでも、トラブルメーカーの入居者が周囲に迷惑をかけて物件のイメージが悪くなるのは、オーナーとしては避けたいでしょう。
3-8.修繕やリフォームの業者を指定される場合も
サブリース契約でも、物件のリフォームやメンテナンス費用はオーナーの負担となります。しかし、サブリース事業者が提携しているリフォーム業者を指定される場合があるので注意が必要です。自分で業者を探すよりも、高額な工事代金を請求される可能性があります。契約時にリフォーム業者を自分で選べるのか確認したほうがよいでしょう。
3-9.サブリース事業者の倒産リスクがある
サブリース事業者の倒産も、考慮すべきリスクです。サブリース事業者が倒産した場合、入るはずの家賃保証の金額が振り込まれないだけでなく、事業者が入居者から預かっている敷金も返還されないという事態になります。
サブリース契約を結ぶ際は、経営が安定した信頼できる不動産会社を選ぶことが重要です。
4.過去にはサブリース契約での事件も

サブリース契約を巡っては、過去に社会的話題になった事件が起きています。中でも特に有名なのが「かぼちゃの馬車事件」です。
この事件においてサブリース事業者である株式会社スマートデイズは、30年の長期家賃収入を保証して女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の契約を集めました。ところが30年間保証と謳っていたにも関わらず、2017年にオーナーに支払う賃料の減額を請求、2018年には賃料の支払いを停止して経営破綻に至りました。
賃料が入らなくなったオーナーは、金融機関からの多額の借金のみを抱えることになり、大きな社会問題となったのです。この事件では、スルガ銀行が融資審査書類の改ざんなどの不正に加担しており、大規模な不動産詐欺事件に発展しました。
5.ワンルームマンション投資のサブリースで失敗しないポイント

ワンルームマンション投資でサブリースを利用した場合に、失敗しないためのポイントとして以下の4つを把握しておく必要があります。
5-1.信頼できるサブリース事業者を選ぶ
サブリースで失敗しないために最も大事なのは、信頼できるサブリース事業者を選ぶことです。サブリースはオーナーにとってメリットだけでなくリスクも伴います。このリスクについて契約時にしっかりと説明責任を果たす事業者なら信頼できます。逆に、メリットだけを強調してすすめてくる事業者には警戒したほうがよいでしょう。
5-2.空室リスクを考慮して物件を選ぶ
物件を選ぶ際は、空室リスクの少ない好立地物件を選ぶことが家賃減額を回避するコツです。空室が発生するリスクが少なければサブリース事業者も家賃を減額する必要がなくなります。事業者も家賃を下げれば手数料収入も比例して減るので、わざわざ家賃を下げたくはないでしょう。
5-3.契約内容を十分に確認する
サブリースはオーナーにとって不利な条件も多いので、契約内容は十分に確認し、納得したうえで契約する必要があります。特に家賃保証の金額、修繕やリフォーム費用の負担、解約の不可と違約金の有無、契約期間などをしっかり把握してから署名・捺印するようにしましょう。
契約を結ぶ際に重要事項説明を受けるので、そのときに疑問に思う点や改善して欲しい点があれば、きちんと伝えるようにしましょう。
5-4.物件の収益ポテンシャルを判断する
物件が将来的に稼げる収益ポテンシャルがあるか判断することも大切です。入居者を将来にわたって確保できるような好立地物件であれば、サブリース事業者もある程度高い家賃に設定できるので、結果的にオーナーの手取り家賃の向上にもつながります。
6.サブリースはあくまでも選択肢の一つ

サブリース契約は、空室リスクが心配な場合の一つの選択肢です。特に、空室リスクが不安で投資に踏み切れない人にとっては、家賃保証が得られる安心感があります。
しかし、サブリース契約には、手数料が発生したり、契約条件の変更リスクがあるなど、慎重に検討すべき点があります。そのため、十分な実績があり信頼できる不動産会社を選ぶことが重要です。
サブリースはあくまで補助的な手段であり、優良物件を選ぶことが不動産投資の基本であることを忘れないようにしましょう。
7.サブリースに依存しないワンルームマンション経営のポイント

サブリース契約で一定の家賃が保証されることは安心ですが、依存しすぎると収益を減らすことにもつながります。ワンルームマンション経営でサブリースに依存しないためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
7-1.正しい物件選び
賃貸需要が高い物件を選ぶことで、サブリースに依存せずに済みます。賃貸需要が高い物件の条件として、以下のポイントが挙げられます。
・築年数が浅く、単身者に求められる設備が充実していること
・効率的な間取りで、収納スペースが十分にあること
・周辺の競合物件と比べて、適切な家賃設定の物件であること
上記の条件に該当するような優良物件であれば空室が出てもすぐに次の入居者が見つかりやすく、サブリースに依存しない経営が可能です。
7-2.適切なリスク分散
マンション経営において、複数物件を持つことはリスクの分散につながります。例えば、1億円を超える物件を1戸所有するよりも、3,000万円の物件を3戸所有したほうが、空室リスクを3分の1に分散できます。エリアも1つに限定せず、東京・横浜・名古屋など、大都市圏に複数所有すれば災害リスクを低減できます。
7-3.長期的なパートナーとなる管理会社を見つける
不動産投資は金融投資に比べて管理に手間がかかります。長期的なパートナーとなる不動産管理会社を見つけることが、経営の安定に不可欠です。
最も簡単に見つける方法はワンストップサービスの不動産会社から物件を購入することです。購入した物件の管理をそのまま依頼でき、売却したいときも責任を持って対応してくれる会社なら、その都度業者を探さなくて済むので便利です。
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8.ワンルームマンション投資でサブリースを利用するときは慎重な判断を

ワンルームマンション投資におけるサブリースの利用には、メリット・デメリットの両面があります。オーナーによって状況が異なるので、一概にサブリースの可否を断定することはできません。
中古物件は築年数が経過すると、どうしても空室リスクが高くなります。空室の心配をするくらいなら、多少家賃が下がっても満室保証を得たほうが安心と考えるオーナーもいるでしょう。サブリース新法の施行によって、以前よりサブリースに対するリスクが低くなりつつあります。
サブリースの利用は、正しい知識を持って判断するようにしましょう。
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