不動産投資の初期費用はいくら?内訳や抑える方法、実際の金額をシミュレーション
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丸山 優太郎
丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。

不動産投資では、多くの初期費用がかかります。適切な資金計画を立てるためには、初期費用を正確に把握することが欠かせません。本記事では、初期費用の目安や抑える方法、それ以外にかかる費用などについて解説します。

目次

  1. 1.不動産投資の初期費用の内訳と目安
    1. 1-1.物件の頭金
    2. 1-2.不動産投資ローンの事務手数料
    3. 1-3.不動産投資ローンの保証料
    4. 1-4.印紙代
    5. 1-5.登記費用(登録免許税)
    6. 1-6.司法書士報酬
    7. 1-7.仲介手数料
    8. 1-8.不動産取得税
    9. 1-9.固定資産税・都市計画税
    10. 1-10.火災保険料・地震保険料
  2. 2.不動産投資でかかる金額をシミュレーション
  3. 3.不動産投資の初期費用を抑える方法
    1. 3-1.取引態様が売主のものを選ぶ
    2. 3-2.土地値物件を探す
    3. 3-3.仲介手数料の値引き交渉を行う
    4. 3-4.頭金を少なくする
    5. 3-5.資産価値が高い物件を選ぶ
    6. 3-6.不動産会社にサポートしてもらう
    7. 3-7.保険を見直す
    8. 3-8.諸費用ローンを利用する
  4. 4.不動産投資で初期費用以外にかかる費用
    1. 4-1.固定資産税と都市計画税
    2. 4-2.修繕費用
    3. 4-3.退去者が出た際の原状回復費用
    4. 4-4.入居者募集のための広告費
  5. 5.初期費用を抑えるなら不動産会社に相談を

1.不動産投資の初期費用の内訳と目安

不動産投資の初期費用はいくら?内訳や抑える方法、実際の金額をシミュレーション
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不動産投資で物件を購入する際にかかる初期費用の目安は、頭金の額によって大きく変わります。個人の属性や物件の担保価値などによって頭金が多く必要なら、初期費用の割合も大きくなります。

ここでは、物件価格5,000万円の新築ワンルームマンションを購入する場合を例に、不動産投資の初期費用の内訳と目安を解説します。

1-1.物件の頭金

不動産投資では、物件価格の10~30%程度を頭金として用意するのが一般的です。ただし、頭金が不要なフルローンや、全額を自己資金でまかなうノーローンなど、選択肢は多様です。どの方法を選ぶかは、個人の投資方針や資金状況次第となります。

頭金を多めに用意することで、月々の返済負担を軽減できる一方、自己資金を投資に使いすぎると他の投資機会を逃すリスクもあります。事前に金融機関と相談し、自分に最適な頭金の割合を見極めることが大切です。

1-2.不動産投資ローンの事務手数料

不動産投資ローンの事務手数料は、借入手続きの事務費用として、お金を借りる人が金融機関に支払う費用です。事務手数料には、決まった率で支払う「定率型」と金額が決まっている「定額型」の2種類があります。相場は定率型が融資額の1~3%程度、定額型が30万円程度となっています。金融機関によっては、繰上返済の際も事務手数料がかかる場合があります。

1-3.不動産投資ローンの保証料

不動産投資ローンの保証料は、ローンを返済できなくなった場合に、保証会社が金融機関にローン残額を支払う契約を結ぶために必要な費用です。相場は一括前払いの場合は融資総額の2%程度、金利に上乗せする場合は年率0.2~0.3%程度となります。金利上乗せ方式を選んだ場合は、初期費用を抑えられる半面、毎月の返済額が大きくなるというデメリットがあります。

事務手数料と保証料は金融機関によって水準が異なるため、事前に確認するようにしましょう。

1-4.印紙代

ローン契約書や売買契約書を取り交わす際には、印紙税を納付する必要があります。契約書に収入印紙を貼付することで納税しますが、税額は物件価格に応じて下表のように定められています。

なお、2027年3月31日までに作成される、土地建物売買契約書などの不動産の譲渡に関する契約書のうち、契約書に記載された契約金額が10万円を超えるものについては、税率が軽減されます。

▽印紙税税額表(不動産)

記載された契約金額本則税額軽減後の税額
1万円未満非課税対象外
10万円以下200円対象外
10万円を超え50万円以下のもの400円200円
50万円を超え100万円以下のもの1,000円500円
100万円を超え500万円以下のもの2,000円1,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの1万円5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの2万円1万円
5千万円を超え1億円以下のもの6万円3万円
1億円を超え5億円以下のもの10万円6万円
5億円を超え10億円以下のもの20万円16万円
10億円を超え50億円以下のもの40万円32万円
50億円を超えるもの60万円48万円
契約金額の記載のないもの200円対象外

1-5.登記費用(登録免許税)

登録免許税は、不動産を登記する際に法務局に支払う税金です。新築マンションを登記する場合、所有権保存登記の税率は法務局認定価格の0.4%です。法務局認定価格は共同住宅で鉄筋コンクリート造の場合、1㎡当たり16万6,000円となっています。25㎡のワンルームマンションの場合は415万円となります。

また、融資を利用して購入する場合は、抵当権設定登記が必要となり、その税率は借入額(債権額)の0.4%です。ただし、全額自己資金で購入する場合は、抵当権を設定する必要がないため、この費用は発生しません。

1-6.司法書士報酬

不動産を登記する手続きを司法書士に依頼する場合は、司法書士報酬が発生します。新築マンションを登記する場合は、所有権保存登記が必要になります。また、債権者が担保権を設定(抵当権設定登記)しますが、その費用は融資の借主が負担します。

日本司法書士連合会が司法書士に行ったアンケート調査によると、所有権保存登記費用の平均は1,000万円の場合で平均2万9,060円、同じく抵当権設定登記が平均4万2,699円となっています。

1,000万円以降500万円増すごとに5,000円加算という司法書士事務所の場合、5,000万円の物件に対する報酬は、所有権保存登記が6万9,060円、抵当権設定登記が8万2,699円となります。

あくまで平均値による計算なので、安い費用の事務所に依頼すれば、この例より安くなる可能性があります。

1-7.仲介手数料

中古不動産を購入する場合は、不動産会社に仲介手数料を支払います。仲介手数料は以下の速算式を使って計算します。

仲介手数料=売買価格×3%+6万円+消費税(売買価格が400万円超の場合)

新築物件の場合は、デベロッパーの不動産会社が売主になっているケースが多く、手数料はかからないのが一般的です。

1-8.不動産取得税

不動産取得税はマンションの建物価格と土地価格に分けて計算します。計算式は以下のとおりです。

・建物の計算式
課税標準額(家屋の固定資産税評価額)×3%(2027年3月31日までの軽減税率)

・土地の計算式
課税標準額(土地の固定資産税評価額の1/2)×3%(同)

課税標準額は、固定資産税評価額を基準に算出されます。固定資産税評価額は、公示価格の約70%程度が目安です。

ただし、軽減措置を受けられるのは新築賃貸住宅の場合で、中古賃貸住宅を購入した場合は、軽減措置は適用されないので注意が必要です。

1-9.固定資産税・都市計画税

固定資産税・都市計画税はその年の1月1日時点で固定資産を保有している人に課税されます。しかし、不動産取引の慣習として中古不動産を購入した場合は、引き渡し日以降の固定資産税・都市計画税を買主が負担することになっています。そのため、日割りで固定資産税・都市計画税を精算する必要があります。

新築マンションの場合は、年度途中の購入であれば初年度の固定資産税・都市計画税はかかりません。

1-10.火災保険料・地震保険料

マンション購入で融資を受ける際、火災保険への加入が条件になるのが一般的です。条件でなかったとしても火災保険・地震保険には加入しておいたほうが無難です。火災保険の保険金額は物件価格ではなく、再調達価額(同等の住戸や家財道具などを買い直す場合にかかる金額)が上限となります。再調達価額はファミリー向け新築マンションの場合で1,000万円程度が一般的といわれています。

保険料(地震保険付き)の相場は5年契約一括払いで1年当たり平均1万5,000円程度(保険金額:建物1,000万円、家財800万円)です。

2.不動産投資でかかる金額をシミュレーション

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前項の初期費用の目安を基に、不動産投資でかかる初期費用の金額をシミュレーションすると以下のようになります。物件の設定は、新築ワンルームマンション、床面積25㎡(軽減措置なし)とします。

費用の項目設定例計算例
頭金(物件価格5,000万円)10%物件価格5,000万円×0.1=500万円
ローン事務手数料2%(定率型)融資額4,500万円×0.02=90万円
ローン保証料金利上乗せ型を選択0円
印紙税売買価格5,000万円2万円
登録免許税保存登記・抵当権登記保存登記415万円×0.004=1万6,600円
抵当権登記4,500万円×0.004=18万円
司法書士報酬保存登記・抵当権登記6万9,060円+8万2,699円=15万1,759円
仲介手数料 新築マンション購入のため0円
不動産取得税建物価格3,000万円
土地価格2,000万円
・建物
3,000万円×0.7×0.03=63万円
・土地
2,000万円×0.7×0.5×0.03=21万円
固定資産税・都市計画税 新築マンション購入のため初年度非課税
火災保険料・地震保険料5年契約年1万5,000円×5年=7万5,000円
合計諸費用718万3,359円
(注)設定条件によって計算結果は異なります。

初期費用の合計は約718万3,359円で、購入価格5,000万円に占める割合は14.37%となります。一般的に不動産投資の初期費用は15%程度といわれているので、その範囲に収まるシミュレーション結果となりました。

ただし、中古マンションを仲介で購入した場合は、売買価格5,000万円×3%+6万円+消費税=171万6,000円の仲介手数料がかかるので、15%を超える可能性が高いです。

3.不動産投資の初期費用を抑える方法

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不動産投資の初期費用は、できる限り低く抑えたいのがオーナーの思いでしょう。以下に紹介する方法を実践することで、コストを下げることが可能です。

3-1.取引態様が売主のものを選ぶ

取引態様が「売主」となっている物件は、不動産会社が自社で保有する物件を直接販売する形態のため、仲介手数料が発生しません。新築物件では売主直販のケースが多いですが、中古物件でも不動産会社が買い取った物件を売主として販売することがあります。仲介手数料を節約したい場合は、取引態様が売主のものを選ぶとよいでしょう。

3-2.土地値物件を探す

頭金を抑えたい場合、「土地値物件」を探すという方法があります。土地値物件とは、国税庁が発表する「相続税路線価」や実際に売買されている「実勢価格」に近い価格の物件を指します。土地値物件は金融機関から評価をされやすく、場合によってはフルローンも可能になるメリットがあります。

3-3.仲介手数料の値引き交渉を行う

不動産会社に支払う仲介手数料は、計算式は決まっているものの一定ではありません。値下げを交渉すれば安くなる場合もあります。ただし、仲介手数料を下げるのは不動産会社にとってはマイナスになるので、交渉する場合は自己資金が不足しているなど正当な理由が必要です。

3-4.頭金を少なくする

頭金を減らして初期費用を調整する方法もあります。ただし、頭金を少なくすると、その分融資金額が増えるため、返済負担が大きくなる点に注意が必要です。購入時の負担を軽くするか、それとも運用開始後の負担を抑えるか、長期的な視点で慎重に判断することが求められます。

3-5.資産価値が高い物件を選ぶ

資産価値が高い物件は金融機関からの評価も高くなります。担保価値が高いため、より多くの融資を受けられることから頭金を抑えることができます。また資産価値が高い物件は空室リスクが低く、退去者が出たとしてもすぐに入居者が見つかるメリットがあります。

3-6.不動産会社にサポートしてもらう

不動産会社のサポートを受けて初期費用を抑えるのも1つの方法です。不動産会社には金融に関する部署があるため、専門家が最適な資金計画をシミュレーションしてくれます。金融機関から有利な条件で融資を受けられる場合もあるので、不動産会社のサポートを受けるのは有効な選択肢の1つです。

3-7.保険を見直す

火災保険を見直すこともコスト削減につながります。火災保険料は一律ではないので、保険料の比較サイトを利用してより有利な保険会社がないか調べてみることは大事です。自分で判断するのが難しい場合は、対面の保険相談サービスを利用するのもよいでしょう。

3-8.諸費用ローンを利用する

不動産投資ローンとは別に、「諸費用ローン」を利用することもできます。諸費用を金融機関に融資してもらうことによって、自己資金が少なくても不動産投資を始めることができるのがメリットです。

4.不動産投資で初期費用以外にかかる費用

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ここまで不動産購入初年度にかかる費用を紹介しましたが、マンション経営がスタートしてからかかる費用もあります。初期費用以外にかかる費用として、以下のものが挙げられます。

4-1.固定資産税と都市計画税

原則として年4回に分けて支払います。固定資産税と都市計画税は地方税のため、自治体から納付書が送付されてきます。管理費と異なり、不動産の所有者が支払う税金のため、入居者に請求することはできません。オーナーにとっては毎年かかる固定経費になります。

4-2.修繕費用

入居者から修繕の依頼があった場合は修繕費用が発生します。新築マンションは通常数年は修繕費用が発生する可能性が低いです。中古マンションは築年数によっては、購入後間もなく修繕が発生する場合もあります。

4-3.退去者が出た際の原状回復費用

入居者が退去する際は原状回復費用を支払ってもらいますが、経年劣化や通常の使用による消耗については、入居者ではなくオーナーが負担するのが原則です。どちらが負担するか迷うような修繕箇所がある場合は、国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参照して判断するとよいでしょう。

4-4.入居者募集のための広告費

入居者を早く見つけたい場合などに、不動産会社に特別に募集活動を依頼するケースでは広告費を支払う必要があります。金額は期間や募集方法にもよるので、不動産会社と交渉して決めることになります。新築の場合は入居希望者が多いのでほぼ必要ないと思われます。

5.初期費用を抑えるなら不動産会社に相談を

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不動産は高額な商品だけに、初期費用もそれなりの金額がかかります。そこでマンション経営がスタートして運転資金を確保するためにも、頭金を抑えることによって初期費用を少なくする必要があります。頭金について相談する場合は、金融機関よりも不動産会社に行ったほうが有利です。その理由は2つあります。

1つは不動産会社のほうが最適な頭金について親身になって考えてくれることです。金融機関の目的は金利を稼ぐことであって不動産を売ることではありません。その点不動産会社は不動産を購入するための審査を通すノウハウを熟知しており、これまでも多くの融資を成立させています。

もう1つの理由は不動産会社にはそれぞれ提携金融機関があることです。いきなり金融機関に行くよりも、不動産会社の紹介で融資審査を受けるほうが、審査に通りやすいのは当然といえます。

「自己資金が少ない」という理由だけでマンション購入を諦めてしまうのはもったいないです。まずは不動産会社を気軽に訪ねて、資金計画を相談してみるとよいでしょう。

※記事中の目安やシミュレーションは一例であり、実際の初期費用は諸条件によって異なります。参考程度にお考えください。

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