不動産投資は、すべての投資家が成功するわけではなく、失敗するケースも少なくありません。それでは、不動産投資にはどのようなリスクがあるのでしょうか。本記事では、不動産投資で失敗する具体的な事例を挙げながら、失敗を回避するための心得について詳しく解説します。
目次
1.不動産投資の失敗事例7選
不動産投資で失敗するには何らかの理由があります。7つの失敗事例から原因を探り、教訓として今後の不動産投資に活かしましょう。
1-1.事例1:不動産会社の言うことをそのまま信じた
不動産会社にとって不動産は商品なので、基本的に悪くいうことはありません。セールスポイントを強調して買う気にさせるのが営業担当の仕事でもあります。
会社員のAさんは老後の副収入を作るために、不動産投資を始めることにしました。ある日、相談していた不動産会社から「掘り出し物が出ました」という連絡が入ったので、物件を見せてもらうことになりました。
徒歩5分程度の場所にスーパーがあり、利便性抜群とのことです。専用駐車場がないのが気になりましたが、「その分格安で売り出されているのでお買い得です」という営業担当の話をそのまま信じて購入しました。
ところが、ほどなくすると周辺にあった貸し倉庫が賃貸マンションに建て替えられることが判明。専用駐車場も付いていて魅力的なマンションが1年数ヵ月後に完成すると、満室盛況でAさんの物件の入居者も取られてしまいました。
建て替えの件を不動産会社が知っていたかは不明ですが、ほかの物件と比較することなく、不動産会社から言われるままに購入した自分を責めるAさんでした。
1-2.事例2:甘い計画を軽率に立ててしまった
不動産投資は長期に渡って行うものなので、きちんと計画を立てて行うことが大事です。会社経営者のBさんは、事業多角化の一環で不動産経営を始めることにしました。
不動産業界紙で「学生向けマンションやアパートは2~3月頃に新入生が確実に入居するので有利」との記事を読み、大学がある東京の築古アパートを購入して学生向けアパートとして入居者募集することを考えました。
「卒業シーズンには空室が出るものの、新入生がすぐに入居し、礼金を得て副収入も期待できる」と安易に考え、甘い計画を立ててしまったのです。
購入して1年後、周辺にあった大学キャンバスが郊外に移転することになり、Bさんのアパートは学生の需要が急速に減少。結局一般向けアパートに切り替えて募集をかけたものの、入居者集めに苦労したといいます。不動産経営で周辺情報をリサーチせず甘い計画を立てるのは禁物です。
1-3.事例3:運用方針がぶれて、物件選びに失敗
不動産投資の成否を左右する重要な要素は物件選びです。会社員のCさんは、安定した入居者が期待できる駅近の区分マンションを購入し、堅実に家賃収入を得るという運用方針を立てていました。
ところが、インターネットで「区分マンションは収益性が低いので選ぶべきではない」という記事を目にし、一棟アパート経営でまとまった家賃収入が得られることに魅力を感じるようになりました。
Cさんは運用方針を変更し、アパート購入を決断。しかし、区分マンションの予算しかないため、仕方なく駅から遠く、築35年の築古アパートを購入しました。最初は入居率が8割ほどでしたが、徐々に空室が増え、最終的には半数以上が空室となる事態に。Cさんは、当初の堅実な区分マンション経営という方針を見失ってしまったことを、深く後悔することになりました。
1-4.事例4:利回り重視で予期せぬコストが増えた
利回りは不動産投資にとって重要な指標です。しかし、利回りの高さだけを見て物件を選ぶのは極めて危険です。
50代会社役員のDさんは将来の相続も見据えて、投資用不動産を購入しようと考えました。どうせ買うなら利回りが高い物件のほうがよいだろうと考え、不動産ポータルサイトをリサーチしていると、築30年の中古ファミリー向けマンションが割安な価格で売り出されているのを発見。10%を超える利回りが魅力ですぐに購入を決断しました。
ところが、築古で設備も昔のままだったので、購入してすぐ修繕が発生。空室が出たことを機にシステムキッチンをまるごと入れ替えた結果予期せぬコストがかさみ、実質的な利回りは大幅に低下しました。表面的な高利回りに釣られて購入してはいけない典型的な事例です。
1-5.事例5:節税ありきで不動産投資を始めた
節税を目的にして不動産投資を始める人もいます。上場企業に勤務するEさんは給与所得が多く、多額の税金を払うのがもったいないと思っていました。
そこで節税方法についてインターネットで調べてみると、不動産投資で赤字が出た分を給与所得から差し引ける「損益通算」という節税方法を知りました。
節税ありきだったためよく検討せずに中古のファミリーマンションを購入。確かに初年度は購入の初期費用が多くかかったため、不動産所得が赤字になり、目的どおり損益通算で所得税・住民税の節税ができました。
しかし、2年目は初期費用がかからなくなったことで収支が改善し、節税効果はなくなりました。さらに3年目以降は修繕費が増加し、初年度に得た節税分は結果的に帳消しとなってしまいました。
1-6.事例6:中古ワンルーム購入で収益が得られなかった
ワンルームマンションは投資家の間で人気が高い物件タイプです。個人事業主のFさんはワンルームマンションの需要が高いことは知っていましたが、新築と中古のどちらを購入するかで迷っていました。Fさんは、初めての不動産投資だったので融資額を少しでも抑えたいと考え、築古のワンルームマンションを購入しました。
駅から徒歩12分程度の幹線道路沿いにある物件で、最初は入居者が付きましたが、築古ということもあり、空室が出ると次の入居者が見つかるまで時間を要しました。壁のクロスも張り替えたので予想外の出費になり、ローン返済もあるため、思うような収益を得ることができませんでした。
Fさんは、これなら融資額が多くなっても駅近の新築ワンルームマンションを購入したほうがよかったと、価格の安さだけで中古を選んでしまったことを反省したのでした。
1-7.事例7:住宅ローンの繰上返済で資金繰りが厳しくなった
投資家の中には住宅ローンを組んでいる人もいます。40代の個人投資家Gさんは株式投資のほかに、不動産をポートフォリオに入れようと考えました。
ローンを組んで都心のワンルームマンションを購入。しかし、2024年の日銀金融政策の変更で住宅ローン金利が上がるとのニュースを見て住宅ローンの繰上返済を実行しました。
すると運悪くマンション経営で空室が出てしまい、すでに預貯金も繰上返済で少なくなって資金繰りが厳しくなりました。
結局保有している株式の一部を売却してローンを返済することになり、ポートフォリオの資産規模が減る事態となったのです。金利を惜しんだばかりに、繰上返済が仇になったケースといえます。
2.そもそも不動産投資の失敗とは?
不動産投資で失敗するとはどのような状態を指すのでしょうか。月の収支が赤字になることが失敗と考えがちですが、必ずしもそうではありません。
2-1.トータルで赤字になること
不動産投資における失敗とは、最終的な売却を含めたトータルで赤字になることです。かつてのバブル経済期には、短期的な売買で利益を上げるキャピタルゲイン狙いが主流でした。当時は株式と不動産が連動して価格が上昇していたため、不動産投資の成功はキャピタルゲインを得られるかどうかが基準となっていました。
しかし、現在では、購入した不動産を賃貸に出して家賃収入を得るインカムゲインが不動産投資の主流となっています。そのため、家賃収入と物件売却を含めたトータルで赤字となった場合に、不動産投資が失敗だったと判断されます。
2-2.運用中に出る赤字は失敗ではない
不動産投資では、特にローンを組んでいる場合、運用中に一時的な赤字が出ることは珍しくありません。不動産はローンを完済した後に純資産となり、その時点で売却して初めて赤字か黒字かが確定します。したがって、運用中に赤字が出ても、それだけで失敗と判断するのは早計です。
最終的な決算時に、以下のような状態であれば不動産投資が失敗したといえるでしょう。
・家賃収入は経費を差し引いて黒字だったが、売却時にトータルで赤字となった場合
・家賃収入自体が空室期間の長さなどで赤字になり、トータルでも赤字となった場合
ただし、現実的にはローンの返済分は家賃収入で相殺できていることがほとんどです。売却代金から自己資金を差し引いて黒字に転じることが多いため、長期的に保有すれば利益が出るのが一般的です。もし利益が出ないようであれば、多くの投資家が不動産投資に取り組むはずがありません。
3.不動産投資で失敗しないために知っておきたいリスク
不動産投資で失敗しないためには、どのようなリスクがあるか知っておくことが重要です。以下は考えられる主なリスクなので、必要な対策を行うようにしましょう。
3-1.空室リスク
不動産投資で最も懸念されるリスクは空室です。家賃収入をローン返済の原資とするため、空室が発生すると、給与や預貯金から返済を行わなければなりません。融資審査においても、勤務先や年収、保有資産など、投資家個人の属性が重視される理由がここにあります。
3-2.家賃滞納リスク
空室リスクと同様に、入居者による家賃滞納も問題です。特に区分所有で一戸のみを所有している場合、収入が途絶えることになります。入居者の経済状況によっては複数月に渡って滞納される可能性もあるため、滞納が発生した時点で早急に対処することが重要です。
3-3.修繕リスク
不動産は時間の経過とともに劣化します。特に築年数の古い物件では、修繕が必要になるリスクが高くなります。区分マンションでは、貸している部屋の設備機器の修繕が主になりますが、一棟マンションやアパートの場合、共用部分や外壁の修繕が必要になることもあります。
3-4.家賃下落リスク
物件は経年劣化により家賃を下げなければならない場合があります。築年数は入居者募集に必ず記載するので、古い物件はどうしても敬遠されます。周辺にある競合物件の家賃より割高にならないように、家賃を下げる必要が生じるのです。
3-5.金利上昇リスク
2024年の日銀の金融政策変更による金利上昇リスクが高まっています。金利が上昇すると、ローンの支払利息が増加し、収支が圧迫される可能性があるため、金利の動向を注視しつつ、最適な金利タイプを選ぶことが重要です。
3-6.災害リスク
近年は地震や台風などの自然災害が頻発しており、日本で行う不動産投資は災害リスクを避けてとおれなくなっています。火災の発生は気を付ければ防げますが、地震や台風の発生は防ぎようがありません。
物件購入前にできることは、国土交通省が提供している「ハザードマップポータルサイト」で物件が位置する地域の災害リスクを調べ、危険が大きいと判断した場合は購入を避けることです。
3-7.倒産リスク
滅多にあるわけではないですが、不動産を購入した不動産仲介会社や管理を委託している不動産管理会社が倒産する可能性もゼロではありません。家賃の集金や敷金の保管などを委託している場合、倒産によって支払われない可能性もあります。新たに委託先を探さなければならない手間もリスクです。
3-8.不動産価格の下落リスク
不動産価格は築年数の経過による劣化だけでなく、周辺環境の変化で下落する場合もあります。例えば、スーパーに近いことで需要が多かった物件が、スーパーの閉店によって生活の利便性が減って価格が下落するケースです。
4.不動産投資で失敗しないための心得
リスクとは別に、不動産投資をするうえで心得ておかなければならないポイントもあります。
4-1.最低限の知識は身に付けておく
どのような投資でもそうですが、最低限必要な知識は身に付けて臨む必要があります。特に重要なのが、物件価格の相場、家賃の相場、ワンルーム・3LDKなど間取りごとの需要です。それぞれ新築と中古の違いも把握しておくとよいでしょう。知識を持って交渉に臨めば、営業担当者から提示された価格が妥当かどうかある程度判断できます。
4-2.不動産会社に任せきりにしない
不動産会社のアドバイスを受けるのはよいですが、購入する物件の選択まで任せきりにするのはよくありません。自分の希望の条件を伝えたうえで、2つ以上は物件を紹介してもらい、その中から最後は自分で判断して決めるのが理想です。
4-3.セミナーや個別相談などで衝動買いしない
不動産投資セミナーや個別相談に参加することは有意義です。しかし、講師の話を聞いてテンションが上がり、よく考えずに衝動買いすることは避けなければなりません。
良心的な不動産会社のセミナーであれば、顧客の希望や資金力にあった最適な物件を紹介してくれますが、質の悪い不動産会社は「売らんかな主義」で勧めてくる可能性があります。その場で購入を決めず、冷静に考える時間を持つようにしましょう。
4-4.信頼できる不動産会社を選ぶ
不動産投資において、信頼できる不動産会社を選ぶことは非常に重要です。特に、悪徳業者に関わるリスクを避けることが不可欠です。
信頼のおける不動産会社を見極めるポイントとしては、上場企業であること、テレビCMで目にする有名不動産チェーン、地域に根ざして長年営業している地元の不動産会社、自社ビルを構えている会社などが挙げられます。
一方で、SNS広告のみを利用している不動産会社や、マンションの一室を事務所としている不動産会社(転居が容易な場所)は、注意が必要です。
4-5.キャッシュフローを重視する
不動産投資では、キャッシュフロー(入ったお金から出たお金を差し引いて残った金額)を重視することが大事です。不動産投資は他人資本(融資)を入れることで高い家賃収入を獲得し、そこからローンの返済を行ってキャッシュフローを得られるメリットがあります。
ただし、返済比率が高いとキャッシュフローが少なくなり、空室が出た場合返済が滞る恐れもあるので注意が必要です。
4-6.想定されるリスクの対策をとっておく
不動産投資にリスクは付きものです。したがって、リスク対策をとっておくことが大事です。先に紹介したリスクで考えると、修繕リスクは新築物件を購入することで発生を少なくする方法があります。
また、空室リスクや滞納リスクに対しては、家賃保証サービスを利用することで、一定期間の家賃が保証されます。
4-7.目先の利益を追わず長期目標で取り組む
投資の中にはFX(外国為替証拠金取引)や暗号資産のように目先の利益を追うものもあります。しかし、不動産投資は老後資金など長期で資産を作ることを目標に取り組むのが基本です。
毎月の家賃収入でローンを返済し、完済後に純資産になるのが、不動産が安定資産といわれる所以です。短期間で不動産を売却して利益を得るキャピタルゲイン狙いの投資は、ある程度資金力がないと難しいことを心得る必要があります。
5.失敗事例から学びリスクの少ない不動産投資を行おう
ここまで不動産投資の失敗事例やリスクを確認し、失敗しない心得について見てきました。
不動産投資で失敗するにはそれなりの理由があるので、事例やリスクを把握しておくことで、失敗を回避できるケースもあります。
基本的な知識を身に付けたうえで不動産会社との面談に臨み、最適な物件を購入してリスクの少ない不動産投資を行いましょう。
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