不動産投資はいつの時代も安定した需要が期待できるため、投資の王道として多くの投資家が市場に参加しています。しかし、リスクがないわけではありません。
本記事では、初心者向けに不動産投資のメリット・デメリットを紹介し、併せて利回りの目安や始め方などについても詳しく解説します。不動産投資の基礎知識を身につけてスタートすることで、初心者でも安心して投資に取り組めます。
目次
1.不動産投資とは?
不動産投資とは、アパートやマンションなどの物件を購入して人に貸し出し、家賃収入を得る現物投資の代表的な投資方法です。
株式やFX(外国為替証拠金取引)のように短期間で利益が出ることは少ないですが、入居者が定着すれば長期で安定した家賃収入を得られるメリットがあります。
投資対象になる物件は、大きく分けるとアパートやマンションなどの「居住用物件」と、オフィス、店舗、倉庫などの「テナント物件」があります。
2.不動産投資の主な種類
居住用の不動産に投資する方法として、以下の3種類の物件形態が挙げられます。
2-1.区分マンション投資
分譲マンションの1室を購入して「区分所有」する投資スタイルです。所有する1室を人に貸し出すことで家賃収入を得ます。不動産投資の中で最も取り組む人が多く、比較的融資を受けやすい物件形態といえます。
このワンルームの区分マンション投資は、初心者が始めるのに最も適しています。
2-2.一棟アパート・マンション経営
アパートやマンションを一棟まるごと建築または購入して経営するのが「一棟所有」という投資スタイルです。
1棟10室などまとまった部屋数を貸し出して家賃収入を得るので、高い収益性が期待できます。1~2室空室が出ても家賃収入が途絶える心配がないのがメリットです。土地を持っているオーナーが土地活用としてアパート・マンション経営を行う場合もあります。
2-3.戸建て経営
一戸建てを賃貸に出して家賃収入を得る投資スタイルです。一戸建てを購入して貸し出す場合もあれば、親が子ども一家と同居することになり、空き家になった住まいを賃貸に出して家賃収入を得るケースもあります。
アパートやワンルームマンションは単身者がメインターゲットであるのに対し、一戸建ては子どものいるファミリー世帯が中心である点が特色です。
3.不動産投資で利益が出る仕組みは?
不動産投資で得られる利益には、インカムゲインとキャピタルゲインがあります。
3-1.インカムゲイン(家賃収入)
不動産投資の利益の中心は毎月入る家賃収入です。これに対し、管理費や修繕費、固定資産税、ローン返済金などのランニングコストを差し引いて、手元にお金が残ればキャッシュフローは黒字となって利益が出ます。
家賃のほかに、入居時のみもらう礼金や、2年に1回程度の割合で契約を更新する際に受け取る更新料も臨時収入となります。
3-2.キャピタルゲイン(売却益)
購入したときの価格よりも高い価格で売却できたときに得られるのが売却益です。バブル期の不動産投資ブームのときは、キャピタルゲインを目的に投資するスタイルが主流になっていました。
現在はキャピタルゲインよりも、地道に家賃収入でコツコツ稼ぐインカムゲイン狙いが主流になっている傾向です。それでも、東京五輪選手村として使われた「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」が転売の対象になるなど、一部にはキャピタルゲイン狙いの投資家もいます。
4.不動産投資のメリット
不動産投資のメリットは数多くありますが、中でも以下の7つは重要なポイントです。
4-1.他人資本で投資ができる
不動産は高額なので、全額自己資金で投資できる人は少数です。多くの人は「不動産投資ローン」を活用して物件を購入します。頭金が自己資本であるのに対し、ローンを組む部分は他人資本となります。金融投資と異なり、多くの部分を他人資本で賄えるのが不動産投資ならではのメリットです。
しかも、ローンの返済は家賃収入で行うため、実質的にはわずかな頭金と諸費用で高額な物件を手に入れることが可能です。
4-2.比較的安定して収入を得られる
不動産投資の収益は毎月の家賃収入が中心です。飲食業のように時期によって売り上げが変動することはありません。入居者さえいれば毎月一定の家賃が入ってくるので、収入が安定しているのがメリットです。
また、不動産は株式のように日々価格が変動することはないので、金融危機があった場合でも、1日で物件の価値が下がることはありません。
4-3.節税効果が期待できる
不動産投資は節税効果を得られる場合があります。「損益通算」という仕組みを使うと、不動産所得が赤字となった場合、赤字分を給与所得から控除して所得税を減らすことができます。
例えば、課税給与所得が400万円(所得控除後)で、不動産所得が100万円の赤字だった場合、損益通算の有無で所得税がどう変わるかシミュレーションすると、以下のようになります。
▽所得税税率表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
4-3-1.損益通算しない場合
課税所得400万円×税率20%-控除額42万7,500円=37万2,500円(所得税)
4-3-2.損益通算した場合
課税給与所得400万円-不動産所得赤字分100万円=課税所得300万円
課税所得300万円×税率10%-控除額9万7,500円=20万2,500円(所得税)
37万2,500円-20万2,500円=17万円で、損益通算することにより所得税が17万円安くなります。
4-4.生命保険として活用できる
金融機関でローンを組む場合、団体信用生命保険(団信)に加入することが条件になるのが一般的です。
団信に加入すると、万一契約者が死亡または高度障害状態になった場合、保険金からローンの残債が返済されるので、家族にローンが残ることはありません。ローンが完済されるうえに物件も家族に渡せます。これが不動産投資が生命保険代わりになるといわれる理由です。
4-5.年金代わりになる
年金だけでは老後の生活費が不足することが大きな社会問題になっています。年金以外にも定期的に収入を得ることを考えなければなりません。
不動産投資はローンを完済すると、その後は毎月経費を引いて家賃収入の大半が手元に残るようになるので、家賃収入が年金代わりになります。公的年金と合わせるとゆとりある老後生活を実現できるのがメリットです。
4-6.相続税対策ができる
不動産投資は相続税対策にもなります。現金や預貯金で相続すると相続税評価額は100%となりますが、不動産で相続すると固定資産税評価額などを基に低く評価されるため、相続税の節税になります。
したがって、法定相続人が1人の場合は分割の必要もないので、マンションを購入して賃貸経営しながら、そのまま相続させるという方法をとることができます。
4-7.インフレのリスクヘッジになる
近年米国を中心に世界的にインフレの傾向があります。インフレになれば家賃も連動して上がるので、不動産を持つことでリスクヘッジになります。
賃貸管理ビジネス協会の調べによると、2024年7月の全国ワンルーム物件の平均家賃は5万2,844円で前年同月比の7.9%上昇しています。これに対し、2024年7月の消費者物価指数総合は前年同月比2.8%の上昇なので、インフレのリスクヘッジになっていることがわかります。
5.不動産投資のデメリット
不動産投資は有利な投資方法ですが、デメリットがあるのも事実です。不動産投資ならではのリスクもあるので、十分検討したうえで始める必要があります。
5-1.ある程度の自己資金が必要
不動産投資はローンを組んで行うことができますが、金融機関の審査に通りやすくするためにも、ある程度の自己資金が必要です。自己資金の目安は物件価格の10~30%程度ですが、かかる費用は頭金のほかに仲介手数料や登記費用、各種税金などがあります。
諸経費のうち、新築物件の場合は売主直販のため、仲介手数料がかからない分コストダウンできます。
5-2.流動性が低い
不動産は株式のような売買市場がないので、流動性が低いのがデメリットです。売却を決めて不動産会社に売り出しを依頼してから買い手が見つかるまで、数ヵ月はみておかなければなりません。
物件を不動産会社に直接買い取ってもらう方法もありますが、それでも数週間はかかります。したがって、引き渡し時期は調整できるので、換金したい場合は早めに不動産会社に依頼したほうが良いでしょう。
5-3.ランニングコストがかかる
賃貸経営には一定のランニングコストがかかります。分譲マンションの場合は、毎月管理費や長期修繕積立金を管理組合に納める必要があります。
入居者とのやりとりでは、経年劣化による不具合が発生した場合にオーナーが修繕費を負担します。さらに退去の際には原状回復を巡って修繕費やハウスクリーニング費用の負担が発生する場合があります。
加えて年に数回、固定資産税も納税しなければなりません。
5-4.必ずついてまわるリスクがある
不動産投資には、必ずついてまわる以下のようなリスクがあります。
5-4-1.空室リスク
不動産投資の最も大きなリスクは空室が出ることです。区分所有マンションを1室所有している場合、空室が出ると収入が途絶えて、ローンの支払いに影響が出ます。空室が出てもすぐに次の入居者が見つかる、需要の多い立地を選ぶことが大切です。
5-4-2.家賃滞納リスク
空室がなかったとしても、家賃の滞納があれば空室が出たのと同じことになります。空室を埋めるために、入居者の属性をよく調べずに契約することは避けなければなりません。
5-4-3.家賃下落リスク
築年数が経過して退去者が出た場合、入居者募集を行う際に家賃の値下げを行うことも必要になります。周辺の競合物件に家賃水準を合わせることが必要で、近隣に新築マンションができた場合は、競争力を高めるために家賃を下げるのが一般的な戦略です。
5-4-4.修繕リスク
建物は築年数の経過とともに劣化していきます。入居者が通常の使用方法で使っていた機器や設備が故障した場合は、修繕費用をオーナーが負担するのが一般的です。退去する際の原状回復費用も含め、常に一定額の修繕費をプールしておく必要があります。
5-4-5.金利上昇リスク
2024年以降急速にリスクが高まっているのが金利の上昇です。日本銀行の金融政策変更でローンの変動金利が上昇する可能性があります。変動金利はこれまで低金利のままで抑えられてきましたが、短期金利の上昇で今後は上がることを想定する必要が出ています。
5-4-6.災害リスク
地震や台風が頻発している日本では、災害リスクにも備えなければなりません。災害時の対応はもちろんですが、地震保険に加入する、避難場所を入居者に周知するなど日頃からの準備も必要です。特に高層階の場合、停電でエレベーターが停止したときの対応は確認しておきましょう。
5-4-7.倒産リスク
稀ではありますが、売主の不動産会社や不動産管理会社が倒産するリスクもあります。不動産管理会社が倒産した場合は、未収家賃が振り込まれないなどのトラブルが発生する可能性もあるでしょう。改めて不動産会社を見つけなければならないため、手間もかかります。
5-4-8.不動産価値の変動リスク
不動産の価値はさまざまな要因によって変動します。いまのところ東京の不動産価格は上昇が続いていますが、地方では人口減などによって今後下落していく可能性もあります。
個別の物件では、周辺にスーパーができたことで価格が上昇したり、逆に大学が移転して価格が下落したりするなどのケースが発生します。
6.不動産投資に向いている人・向いていない人
不動産投資にも向き不向きがあります。自分に不動産投資が合っているかをチェックしてから始めることが大切です。
6-1.不動産投資に向いている人
不動産投資に向いているのは、一定以上の収入がある人です。ローンを組んで不動産を購入する場合、金融機関の審査に通らなければなりません。少なくとも400~500万円程度の年収は必要です。
年収倍率8倍が基準の金融機関の場合で3,200~4,000万円、年収倍率10倍基準の金融機関なら4,000~5,000万円の物件を購入できる可能性があります。この価格帯ならワンルームマンションで東京23区内の好立地物件にも手が届きそうです。
貯蓄が多い人も同様に不動産投資に向いています。金融機関からの評価が高くなるからです。
6-2.不動産投資に向いていない人
不動産投資に向いていないのは、逆説的になりますが年収が低く、貯蓄もない人です。そもそも融資の審査に通らないだけでなく、不動産投資会社の面談でもはじかれてしまう可能性があります。
また、短期間で利益を得たい人は不動産投資に向いていません。株式のように好材料が出て1日で10%以上も値上がりするというようなことが不動産投資では起きません。不動産投資は地道に家賃収入を得ながら長期で資産を築いていくものであることを理解できる人でないと難しいでしょう。
7.不動産投資の理想の利回り
不動産投資にはある程度理想の利回りがあります。一般財団法人日本不動産研究所が行った「第50回不動産投資家調査」(2024年4月)によると、エリア別の期待利回りは下表のようになっています。
エリア | ワンルーム | ファミリー向け |
---|---|---|
札幌 | 5.0% | 5.0% |
仙台 | 5.0% | 5.0% |
東京城南地区(目黒区、世田谷区) | 3.8% | 3.8% |
東京城東地区(墨田区、江東区) | 3.9% | 4.0% |
さいたま | 4.6% | 4.6% |
千葉 | 4.7% | 4.7% |
横浜 | 4.4% | 4.4% |
名古屋 | 4.5% | 4.6% |
京都 | 4.7% | 4.7% |
大阪 | 4.3% | 4.3% |
神戸 | 4.7% | 4.8% |
広島 | 5.1% | 5.2% |
福岡 | 4.5% | 4.5% |
期待利回りなので諸経費を差し引いた実質利回りはもう少し下がりますが、表面利回りでエリア別の数値に近い利回りであれば採算が取れる物件と判断して良いでしょう。
8不動産投資の始め方
初めての不動産投資では何から始めれば良いか迷うところですが、中古物件と新築物件ではアプローチの仕方が異なります。
8-1.中古物件で始める場合
中古物件は市場に膨大な数の物件が出回っており、エリアをピンポイントで探すことができます。したがって、不動産ポータルサイトで同じエリアの物件を検索して比較し、気になった物件があれば不動産会社に問い合わせします。
8-2.新築物件で始める場合
新築物件は希少性が高く、各不動産会社が売り出している物件の数は多くありません。そのため好立地物件が売り出されると短期間で完売してしまいます。新築で確実に入居者を確保したい投資家が多いためです。
新築物件の場合は不動産ポータルサイトで探すよりも、不動産会社が主催している「不動産投資セミナー」に参加して、個別に相談するほうが適しています。特に初心者は気になる点を相談しながら進められるので安心です。
中古・新築とも購入する物件が決まったら、不動産会社と資金計画を立てた後、金融機関に融資を申し込みます。そして、審査に通過したら物件を購入するという流れです。
9.初めての不動産投資は不動産会社選びが重要
不動産投資のメリット・デメリットやリスクを理解して、納得したら具体的に物件の選択に入ります。その場合、重要になるのが不動産会社選びです。
ベテランの投資家であれば経験を基に自分で判断しながらある程度物件の良し悪しを判断できます。しかし、初心者は不動産会社からのアドバイスによる部分が大きくなるため、営業担当者の質が問われるのも事実です。
先に述べた不動産投資セミナーに参加すると、会社や社員の雰囲気もわかるので、相談しやすい会社と判断すれば、物件を紹介してもらうのも良いでしょう。
>>【無料eBook】「借金は悪である」という既成概念が変わる本
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