
30代は、結婚や子育てなど大きなライフイベントを迎える人も多いでしょう。キャリアプランも定まり、将来に向けて資産運用を始める人が増えてきます。なかでも注目されているのが、貯金と投資の“理想的なバランス”です。この記事では、30代の貯金と投資の割合の現状やおすすめの投資方法などについて解説します。
目次
1.30代の貯金と投資の割合は?

まずは、金融広報中央委員会の「令和5年(2023年) 家計の金融行動に関する世論調査」の結果から、30代の貯金・投資事情を確認していきましょう。
1-1.貯金と投資の割合
30代の種類別金融商品の保有額と割合は以下のとおりです。
種類別金融商品保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)
保有額 | 預貯金 | 保険 | 投資 | その他 | |
---|---|---|---|---|---|
単身世帯 | 594万円 | 49.8% (296万円) | 5.4% (32万円) | 41.8% (248万円) | 3.2% (19万円) |
二人以上世帯 | 601万円 | 49.3% (296万円) | 15.0% (90万円) | 34.6% (208万円) | 1.0% (6万円) |
出典:令和5年(2023年) 家計の金融行動に関する世論調査(金融広報中央委員会)
30代の金融資産のうち、半分近くが預貯金に集中していることがわかります。一方で、投資の割合も、単身世帯で約42%、二人以上世帯で約35%と、一定の広がりを見せています。ただし、いずれの世帯も、その割合は預貯金を下回っています。
1-2.手取額に対する貯金額の割合
30代の手取額に対する貯金額の割合は以下のとおりです。
年間手取り収入(臨時収入を含む)からの貯蓄割合(金融資産保有世帯)
5%未満 | 5~10%未満 | 10~15%未満 | 15~20%未満 | 20~25%未満 | 25~30%未満 | 30~35%未満 | 35%以上 | 貯蓄しなかった | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
単身世帯 | 3.7% | 11.2% | 18.7% | 3.3% | 6.1% | 3.7% | 14.5% | 15.0% | 23.8% |
二人以上世帯 | 5.6% | 11.6% | 21.6% | 3.4% | 11.9% | 1.7% | 5.6% | 11.4% | 27.2% |
30代の多くが、手取り収入のうち10〜15%程度を預貯金に回している傾向が見られます。一方、「貯蓄しなかった」と回答した割合は、単身世帯で約24%、二人以上世帯で約27%にのぼります。生活費や支出の状況によっては、預貯金の優先度を下げざるを得ない世帯も少なくないと考えられます。
2.預貯金のメリット・デメリット

預貯金は、基本的な資産管理の手段であり、特にリスクを避けたいと考える人にとっては、安心感のある選択肢です。ただし、長期的な資産形成という観点では注意すべき点もあります。ここでは、預貯金のメリットとデメリットを整理しておきましょう。
2-1.預貯金のメリット
預貯金の最大のメリットは、資金を安全かつ柔軟に管理できることです。銀行や信用金庫などに預けた普通預金は、預金保険制度(いわゆるペイオフ)によって元本1,000万円とその利息までが保護されており、万が一金融機関が破綻した場合でも、一定額までは確実に守られます。これは、投資商品にはない、預貯金ならではの強みです。
また、流動性の高さも預貯金の大きなメリットです。普通預金であれば、必要なときにいつでも引き出すことができるため、急な出費や緊急時にも柔軟に対応できます。
大きなリターンを期待することは難しいものの、元本割れのリスクはきわめて低く、必要なときにすぐ活用できる安心感から、資産形成を支える土台として多くの人に選ばれています。
2-2.預貯金のデメリット
一方で、預貯金には見過ごせないデメリットもあります。一つは、利息の少なさです。日本では2024年に長らく続いたマイナス金利政策が解除され、「金利のある世界」へと移行しましたが、2025年現在においても多くの金融機関では普通預金の金利が1%未満にとどまっています。預貯金だけで資産を大きく増やすのは、依然として難しい状況です。
もう一つは、インフレへの弱さです。物価が上昇すると、同じ金額で買えるモノやサービスは少なくなり、現金の実質的な価値は目減りしていきます。
たとえ預金残高が減らなくても、将来にわたって現在と同じ生活水準を維持するには、より多くの資金が必要になる可能性があります。こうした購買力の低下に備えるためにも、保有資産の一部を運用に回すといった選択肢を検討することが重要です。
3.投資のメリット・デメリット

将来に向けた資産形成を進めるうえで、投資は有力な手段です。ただし、預貯金とは異なり、元本割れのリスクも伴います。ここでは、投資のメリットとデメリットを紹介します。
3-1.投資のメリット
投資は、資産を効率的に増やせることが最大のメリットです。たとえば、株式や投資信託に資金を投じれば、価格が上昇したときの値上がり益(キャピタルゲイン)や、配当金・分配金(インカムゲイン)が期待できます。
さらに、得られた利益を再び投資に回すことで「複利」の効果が働き、時間とともに資産が大きく成長する可能性もあります。特に長期投資では、この複利効果が着実な資産形成を後押ししてくれます。
また、投資先を分散させたり、毎月一定額を積み立てたりすることで、価格変動のリスクを抑えながら安定的に運用を行うことも可能です。加えて、NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用すれば、運用益が非課税になるなど、税金面でのメリットも得られます。
3-2.投資のデメリット
投資は預貯金と異なり、「元本割れのリスク」が常にあることがデメリットです。投資した資産の価値は経済情勢や市場の変動に応じて常に上下します。そのため、購入時よりも価値が下がり、最終的に投じた資金を回収できなくなる可能性があります。
次に注意したいのが、「流動性リスク」、つまり資産を現金化しにくくなるリスクです。不動産のように売却までに時間を要する資産や一部の債券などは、急な資金需要に対して柔軟に対応できない場合があります。
また、投資で安定的な成果を得るには、一定の知識と継続的な情報収集が不可欠です。どのような商品に投資するか、どんなリスクがあるのか、市場環境はどうなっているのかなど、自分で理解・判断しながら進めていく姿勢が求められます。
4.30代で投資を始めるメリット

投資には元本割れなどのリスクがある一方で、長期的な視点で見れば資産を効率よく増やせる可能性を秘めています。特に30代は、時間を味方につけやすい年代であり、投資を始めるには最適なタイミングといえます。
ここからは、30代で投資を始めることによって得られる具体的なメリットを見ていきましょう。
4-1.預貯金より高い利回りが期待できる
預貯金の利息がごくわずかな現在、コツコツと積み立てるだけでは、大きな資産形成には時間がかかります。その点、投資では一定のリスクを受け入れる代わりに、預貯金を上回る利回りを狙える点が魅力です。
もちろん投資にはリスクがありますが、それでも利回りの面で比較した場合、投資のほうが効率的に資産を増やせる選択肢となり得るのは明らかです。少しでも資産を増やしたいなら、預貯金だけに頼らず、投資にも目を向ける価値は大いにあるでしょう。
4-2.老後まで長く運用を続けられる
30代で投資を始めると、老後まで長く運用を続けられます。中長期の資産運用では、投資で得た利益を元本に組み込み運用を継続することでさらに資産が増えていく「複利効果」を得られます。
金融庁の資料によると、100万円を年利10%で10年間運用する場合、10年後の資産は利益を元本に組み込まないと200万円ですが、組み込んで複利運用すると259万円です。複利運用をするかどうかで、投資成果に約60万円の差が生じています(手数料、税金などは考慮外)。
4-3.損失が生じても勤労収入でカバーできる
投資は元本保証ではないため、運用がうまくいかずに損失が生じるかもしれません。30代なら働ける期間が長いので、勤労収入で損失をカバーできます。しかし、老後を迎えてから資産運用を始めたいと思っても、勤労収入がなければリスクをとるのは難しくなります。
資産運用を始めるなら、比較的リスクがとりやすい30代のうちに始めましょう。
5.貯金と投資の割合を考える際のポイント

貯金と投資は、どちらか一方に偏るのではなく、目的やライフスタイルに合わせてバランスよく活用することが重要です。ここでは、自分に合った割合を見極めるための3つのポイントを紹介します。
5-1.家計や資産状況を正しく把握する
資産形成の第一歩は、自分の経済状況を客観的に把握することです。毎月の収入と支出、固定費と変動費、現在の貯蓄額やローン残高などを整理することで、無理のない貯金・投資の配分が見えてきます。
特に、突然の出費に備えた「生活防衛資金」が3〜6ヵ月分確保できているかは重要なポイントです。この備えが不十分なまま投資を優先してしまうと、いざというときに資金繰りに困るリスクが高まります。何よりもまず、家計の土台をしっかり整えることが大切です。
5-2.ライフプランと目標金額を明確にする
将来に備えるための資産形成は、漠然とした不安ではなく、具体的な目標設定から始めると取り組みやすくなります。
たとえば、5年後にマイホームを購入したい、10年後に子どもの教育費がかかる、といったライフイベントを想定し、それぞれに必要な金額と期限を逆算することで、毎月の積立額や投資の活用度合いが明確になります。
目標を可視化することで、途中で迷ったときにも「何のためにお金を貯めているのか」がブレにくくなり、継続のモチベーションにもつながります。
5-3.定期的に資産配分を見直し整理する
一度決めた貯金と投資の割合も、ライフステージや経済状況の変化に応じて、定期的に見直すことが大切です。昇給や転職、結婚や出産などで家計が変われば、最適な資産配分も変わってきます。
また、市場環境が大きく変動したときも、リスクの許容度を再確認するよいタイミングです。年に1回など定期的にチェックする習慣をつけることで、状況に合った資産形成を無理なく続けることができます。「一度決めたら終わり」ではなく、「変化に合わせて調整する」意識を持つことが重要です。
6.30代におすすめの投資方法

ここでは、30代におすすめの投資方法を6つ紹介します。
6-1.投資信託
投資信託は、少額から株式や債券、不動産などに分散投資ができる金融商品です。銘柄選びなどの運用は専門家に任せられるので、初心者でも投資しやすいでしょう。iDeCo(イデコ)やNISAといった非課税制度を利用すれば、一定額の投資までは利益に課税されないのもメリットです。
投資信託は購入時に販売手数料、保有中は信託報酬(運用管理費用)がかかります。特に信託報酬は長期の投資成果に大きな影響を与えます。運用コストは商品によって異なるため、なるべくコストの低いファンドを選びましょう。
6-2.iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、老後資金づくりを目的とした私的年金制度です。毎月決まった掛金を積み立てて、投資信託や定期預金などで運用し、60歳以降に年金や一時金として受け取ります。最大の特徴は、掛金が全額所得控除の対象となることで、年末調整や確定申告を通じて所得税・住民税の節税効果が得られます。
さらに、運用で得られた利益も非課税で、受け取り時にも一定の税制優遇が受けられるのが魅力です。ただし、原則として60歳になるまで資金を引き出せないため、老後資金を確保する手段として活用することが前提となります。
6-3.NISA
NISAは、一定の投資額まで運用益が非課税になる制度で、投資初心者にも始めやすい仕組みです。2024年からは制度が大きく拡充され、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できるようになりました。
「つみたて投資枠」では、金融庁の基準を満たした投資信託に年間最大120万円まで投資可能です。長期・積立・分散に適した商品に限定されているため、安定した資産形成を目指したい人に向いています。
一方、「成長投資枠」では、投資信託に加えて、個別株式やETFなど、幅広い商品に年間最大240万円まで投資することができます。自分のリスク許容度や運用方針に応じて、より自由度高く商品を選べる点が魅力です。
両枠を合わせた年間投資上限は360万円、生涯での非課税投資枠は1,800万円(このうち成長投資枠は1,200万円まで)に設定されています。非課税投資枠内で得た運用益には課税されないため、時間をかけて資産を育てていきたい30代にとって、非常に相性のよい制度といえるでしょう。
6-4.個人向け国債
個人向け国債は、日本政府が発行する債券で、満期まで保有すれば元本がそのまま返還される仕組みになっています。発行体が日本政府であることから信用力が高く、安全性を重視したい人に適しています。「変動金利型10年満期国債」では最低金利が年0.05%に設定されており、市場金利が下がっても一定の利息が得られます。
10,000円から購入でき、1年経てば中途換金も可能なため、初心者でも始めやすく、必要に応じて現金化しやすいという利便性もあります。
大きなリターンは望めないものの、特に初めて投資に取り組む30代や、資産の一部を安全に運用したい人にとって有力な選択肢となるでしょう。
6-5.株式投資
上場株式に投資して、値上がり益や配当金の獲得を目指す方法です。購入時より株価が上がったタイミングで売却すれば、購入時と売却時の価格差が利益となります。また、保有株式数に応じて年1~2回の頻度で配当金が支払われる銘柄もあります。
株式市場には多くの企業が上場しており、株価はさまざまな要因で変動するため、大きな値上がり益が期待できる銘柄を探すのは簡単ではありません。初心者は配当金を目的に株式を長期保有し、タイミングが合えば値上がり益を狙うといいでしょう。
6-6.マンション経営
マンション経営は、ワンルームマンションなどを貸し出して入居者から家賃収入を得る方法です。投資信託や株式投資とは異なり、入居者がいれば毎月家賃が入ってくるのが魅力です。入居者募集や賃貸借契約といった賃貸管理業務は管理会社に任せられます。
自己資金だけで物件を購入するのが難しい場合は、ローンを利用することも可能です。家賃収入からローンを返済することで、効率よく資産を増やせます。
マンション経営は入居者がいないと家賃が入ってこないため、空室リスクの低い物件を選ぶのが重要なポイントです。初心者は基礎知識を身につけたうえで、不動産会社に物件選びや賃貸管理のサポートを依頼するといいでしょう。
7.30代が投資に取り組む際の注意点

30代が投資に取り組む際の注意点をまとめました。
7-1.余裕資金で投資を始める
投資は、預貯金のような元本保証がないため、資産を増やすチャンスがある一方で、一時的な含み損を抱えるリスクも避けられません。特に市況が悪化したタイミングでは、資産の目減りに不安を感じて早期に売却してしまうこともあります。
そうした場面でも冷静に運用を続けるには、生活費や緊急資金とは切り離した「余裕資金」を使うことが前提となります。すぐに使う予定のない資金を投資に充てることで、短期的な値動きに振り回されることなく、長期視点で安定的な資産形成に取り組むことができます。
7-2.家計を見直して投資にまわせる金額を増やす
限られた収入の中で投資に回せる資金を確保するためには、家計の見直しが有効な手段です。まずは家計簿を活用し、収入と支出のバランスを可視化してみましょう。どこにお金が流れているかが明確になると、不要な出費や見直すべき支出項目が浮かび上がってきます。
特に固定費は見直しによる効果が大きく、保険料や通信費の見直しは、毎月の支出を継続的に削減することにつながります。こうして浮いた資金を、無理のない範囲で投資に振り分けることで、生活を圧迫せずに資産形成のペースを高めていくことが可能になります。
7-3.リスクの取りすぎに注意する
投資で成果を上げたいという思いが強いあまり、過剰にリスクを取ってしまうケースは少なくありません。たとえば、短期間で大きな利益を狙って資金の多くをハイリスクな商品に集中させてしまうと、思わぬ値下がりで損失が膨らみ、精神的なプレッシャーに耐えられなくなることもあります。
自分のリスク許容度を正しく把握し、「どこまで損失を受け入れられるか」を明確にすることが大切です。貯蓄と投資のバランスに唯一の正解はなく、性格やライフスタイルによって適切な配分は異なります。無理をせず、長く続けられる資産運用を目指しましょう。
7-4.仕事に支障が出ない投資方法を選ぶ
30代は、職場での信頼を築き、キャリアアップにつなげていく大切な時期でもあります。この時期に投資に過度な時間や労力をかけすぎると、本業に集中できなくなり、評価や収入に悪影響を及ぼす可能性も出てきます。
たとえば、日々の相場に一喜一憂するデイトレードよりも、長期的な視点で積立投資を行う「ほったらかし運用」のほうが、仕事と両立しやすい選択肢といえるでしょう。投資に熱中しすぎて本業を疎かにするのではなく、自分のライフスタイルに合った「無理のない運用スタイル」を選ぶことが、長期的な成功につながります。
8.将来を変えるのは「今」の選択

30代は、仕事で安定した収入を得ながらも、老後まで十分な時間があることから、資産形成に取り組むうえで非常に適したタイミングです。キャリアや家庭、住まいなど人生の節目を迎えることも多く、今後のライフプランを見据えたうえで「貯金と投資のバランス」に向き合う意義も大きくなります。
たとえば、少額から投資信託を始めてみる、マンション経営のセミナーに参加する、家計を見直して固定費を抑えるといった方法なら、忙しい日々の中でも無理なく取り組めるでしょう。大切なのは、自分に合ったペースで継続できる方法を見つけ、今できることから一つずつ積み重ねていくことです。それが、将来につながる確かな資産形成の土台となります。
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