人生100年時代、公務員といえどもゆとりある老後を送るなら、年金以外の資金をしっかり準備しておく必要があります。しかし公務員が兼業するための基準をはっきりとご存じの方は少ないと思います。本稿では公務員が不動産投資をするための具体的な条件などを詳しくお伝えしています。国家公務員と地方公務員の場合について、わかりやすく解説していますのでぜひ最後までご覧ください。
目次
公務員が不動産投資できる条件
国家公務員は、国家公務員法第103条1項「私企業からの隔離」によって兼業や自営が禁止されています。
・国家公務員法第103条1項
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
・国家公務員法第103条2項
前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。
・国家公務員法第104条
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
(引用:e-GOV 法令検索 国家公務員法)
次の条件にあてはまる自営は兼業扱いとなり、同法103条第2項、104条によって所属長などの承認が必要になります。
1.賃料収入が年額500万円以上
2.独立家屋は5棟以上(独立家屋とは一戸建ての建物です)
3.独立家屋以外は独立区画数が10室以上(こちらはマンションやアパートの部屋を意味します)
(引用:人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について)
さらに人事院規則では、自営の承認を得るために次の3つの「人事院が定める場合」への適合が必要だとしています。
1.入居者募集や家賃の集金、建物の維持管理などの業務を事業者に委託する
2.職員が行う職務と、承認される不動産などの賃貸の間に特別な利害関係がない
3.その他の点でも公務の公平性と信頼性の確保に支障が生じない
(引用:人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について)
この定めの範囲内で、さらに先ほどの賃料収入年額など3つの条件を満たすことで自営の承認が得られることになります。
申請しなくても不動産投資ができる条件
初めに述べた賃料収入などの3つの条件は、あくまで承認を受けるべき自営の基準です。
それらの条件に該当しなければ兼業規定に触れないということです。つまり……、
2.独立家屋は5棟未満
3.独立家屋以外は独立区画数が10室未満
という条件なら国家公務員法で禁じる副業にあたりません。例えば1部屋のマンションで、賃料収入が年500万円未満なら公務員でも不動産投資が可能なのです。
さらに将来事業が順調に成長し自営として承認を得る規模になったときに備え、「人事院が定める場合」1つ目の「管理業務を事業者に委託」にしておくと安心です。
報告の義務がある
ただ、規定に触れないからといって申請しないでいいわけではなく「報告の義務」があります。
そのため人事院では「自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)」を用意しているので、こちらを利用するといいでしょう。
地方公務員の兼業の実態
地方公務員の兼業や自営は、地方公務員法38条「営利企業への従事等の制限」によって禁止されています。
しかし同2項において「任命権者の許可の基準を定められる」としており、自治体ごとで兼業を許可できるようになっています。
・地方公務員法38条
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。
・地方公務員法38条2項
人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。
(引用:e-GOV 法令検索 地方公務員法)
地方公務員の兼業について総務省が調査した資料によると、2018年度における地方公務員の兼業許可件数は41,669件です。
そしてそのうち社会貢献活動などを除くその他兼業は30,163件になっており、その他兼業の事例として不動産の賃貸も紹介されています。
この資料のなかで民間においては、多様で柔軟な働き方へのニーズが高まっており、さらに人口減少にともなう人材不足などから兼業や副業が促進されていることが触れられています。
地方公務員も地域社会のコーディネーターとして、公務以外でも積極的に活動することが期待されているのです。
地方公務員の兼業許可基準
こうしたことから地方公務員の兼業については、国も前向きに考えていることがわかります。
しかし総務省は先ほどの資料のなかで、職員が兼業可能かどうか判断する手がかりが乏しいと指摘しています。
実際に兼業の許可基準を設定している自治体は半数にも満たず、許可基準を具体的に公表することを求めています。
兼業の許可基準は地方公務員法で定められる、
2.職務の公正を確保し
3.品位を損ねないこと
が大前提です。しかし気になるのは、許可が必要なのは「どんな規模の兼業か?」ではないでしょうか。
その基準については国が「国家公務員法の基準を周知するように」としており、前述の国家公務員の自営にあたる3つの条件が一つの目安になりそうです。
過去の失敗事例からうかがえる基準
2019年に仙台市の地方公務員が、無許可で不動産賃貸業を営み処分を受けたことがありました。この事業内容は次のようなもので、これにより自治体が兼業を許可する判断基準が推測できます。
年間600〜700万円の収入=賃料収入が年額500万円以上
これは国家公務員法で定められた、許可を必要とする自営の事業規模です。仙台市もその基準に照らし合わせ、無許可で経営したことを問題として処分したのでしょう。
もちろんこれは1つの事例であり、自治体ごとで判断基準は異なることも考えられます。気になる方は、兼業を始める前に所属する自治体に確認しておくことをおすすめします。
公務員が不動産投資をする2つのメリット
お伝えしてきたように、公務員でも条件を満たせば不動産投資は十分に可能です。
中でも公務員におすすめしたい投資は「マンション経営」です。マンション経営は公務員にとって、次の2つの点でメリットがあるからです。
2.本業に影響が少ない
1.金融機関からの融資が得やすい
いくら給与が安定した公務員でも、現金でマンションを購入するには資金を貯める時間がかかります。そこで多くの方は、融資を使って物件を購入しマンション経営を始めています。
公務員はこの融資の審査において、社会的な信用度が高いことから金融機関からの融資が得やすいというメリットを持っています。
金融機関にとって、申込人が融資した資金をしっかり返済してくれるかは重要な審査基準です。その点公務員は属性が高く将来も安定しており、融資を確実に返済してもらえると期待できる職業です。
このため条件によっては、より資産価値の高い物件の融資を受けられる可能性さえあるのです。
2.本業に影響が少ない
またマンション経営は本業に影響しにくいというメリットもあります。物件の入居者や建物の管理は管理会社へ委託し、経営者の手間がほとんどかからないためです。
さらに新築マンションなら、中古マンションのように突然に修繕対応するような事態も当面ありません。
このように、本来の業務や休日の自分や家族の時間に影響しないマンション経営は、公務員にとって最適な兼業といえるでしょう。
マンション経営は将来の備えにおすすめ
老後にゆとりある生活をするため、公務員であっても年金以外の資産形成を考える時代になっています。
またいくら公務員が職を失う可能性が少ないとはいえ、病気やケガなどで仕事がままならない状態になる可能性もあります。
将来の安心の意味でもマンション経営などで備えをすべきです。早めに資産形成を始めれば、定年前に収益がプラスになり生活を豊かにすることもできます。
今回お伝えした条件を参考に、まずは1部屋のマンション経営からスタートしてみてはいかがでしょうか。
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