最終更新日:2024/8/22
 
レバレッジ効果を最大限活かすための融資を受けるコツ
(画像=smallsmiles/stock.adobe.com)
新井 智美
新井 智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員 コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

不動産を購入するためには、まとまった資金が必要となりますが、それを現金で用意できる人は少ないでしょう。したがって不動産投資を行っている人の多くは金融機関から融資を受ける必要があります。融資を受けることによって生まれるレバレッジ効果こそが不動産投資の最大のメリットであり、魅力であるともいえます。そこで本稿では、レバレッジ効果を最大限に活かすためのコツを解説いたします。

目次

  1. レバレッジ効果とは?
  2. 融資を受ける際に必要な「積算価格」とは?
    1. 土地の価格の求め方
    2. 建物の価格の求め方
  3. 住宅ローン・アパートローン・プロパーローンの違い
    1. 住宅ローン
    2. アパートローン
    3. プロパーローン
  4. 融資を受けやすい人と受けにくい人との違い
  5. 金利ばかりに目を奪われないことが大切
    1. 収益性(利回り)
    2. 融資期間
    3. 金利
    4. 返済比率
  6. 気をつけたい「法定耐用年数」
  7. パートナー選びも大切

レバレッジ効果とは?

少ない資金で大きな収益が期待できる、それが「レバレッジ効果」です。「てこ(レバレッジ)の原理」になぞらえられた言葉で、少ない資金(自己資本)と借入金を合わせることで、大きな収益を上げることをいいます。

不動産投資におけるレバレッジ効果とは、投資用不動産の購入に際して、「自己資金」と「借入金」を組み合わせて資金を調達することにより、全額を自己資金で調達する場合よりも自己資金に対する投資の利回り(自己資本利益率)が向上する効果をいいます。

例えば、500万円の自己資金だけを使って年間50万円の家賃収入がある不動産を購入したとします。その際の年間の利回りは、年間の家賃収入に対する物件購入価格となることから、50万円÷500万円=10%となります。

一方、自己資金の500万円を頭金として4,500万円を金融機関から借り入れ、同じ利回り(10%)の5,000万円の物件を購入したとすると、見た目の利回りは同じ10%ですが、収入は10倍の500万円になります。

このようなレバレッジ効果は、株式投資などと違って、金融機関からの融資を受けることで行うことができる、つまり不動産投資だからこそ得られるメリットといえるでしょう。

融資を受ける際に必要な「積算価格」とは?

金融機関側が融資を行う際に審査する内容には、融資を受けようとする本人の属性はもちろんのこと、担保となる物件の評価も組み入れられます。多くの金融機関では独自の評価基準を設けていますが、不動産投資の融資においては、不動産鑑定評価の考え方をベースとして担保評価を行います。

その評価には原価法による「積算価格」や、取引事例比較法による「比較価格」、さらには収益還元法による「収益価格」を比較考慮して、最終的な評価額を算出します。このとき、最も重視されるのが、原価法による「積算価格」です。

融資の際の基準として金融機関が選択するのは、「収益価格」もしくは「積算価格」ですが、収益価格は家賃収入ありきの価格となるため、今後その収入が確実に入るとは限りません。そこで多くの金融機関では「積算価格」を重視しているのが実情です。なお、積算価格は、その物件の「土地の価格」と「建物の価格」を算出し、合計して求められます。

土地の価格の求め方

積算価格を求める際、土地の価格そして建物の価格の計算方法は異なります。ではまず、土地の価格の求め方について見ていきましょう。

土地の価格=路線価×地積(土地の面積)

ここで使用する路線価については、国税庁の「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」で調べることができます。

建物の価格の求め方

建物の価格の求め方は、土地の価格求め方と比べると、やや複雑な計算式となります。

建物の価格=(再調達価格×述床面積×残存年数)÷法定耐用年数

ここでいう再調達価格とは、その建物を新たに建築する場合に要する費用のことで、構造により単価が異なります。そして、延床面積とは建物の床面積を全て足した値となります。また、法定耐用年数は法律で定められている減価償却の年数のことをいいます。

住宅ローン・アパートローン・プロパーローンの違い

ちなみに融資を受ける際に、「住宅ローン」と「アパートローン」そして「プロパーローン」がありますが、それぞれの違いがわからないという方もいるかと思いますので、それらの特徴をおさらいしてみましょう。

住宅ローン

住宅ローンとは、「自分が住むため」の不動産を購入する際に利用するローンです。用途が「自己の居住」に限定されることから、一般的に金利は低水準となっています。

アパートローン

アパートローンとは、アパートやマンションなど賃貸用不動産を購入する方を対象とした融資のことで、以下のような特徴があります。

・物件の評価が定型化されている
・融資対象のエリアが明確化されている
・資金使途が限定されている
・住宅ローンよりも融資額が高額に設定されているため審査が厳しく、金利も高めに設定されている

プロパーローン

プロパーローンは「事業融資」のことで、不動産投資に限定することなく、さまざまな事業のために行われる融資となっています。したがって、融資の審査についても定型化されておらず、審査期間が長いという特徴があります。一般的に住宅ローンよりも審査基準および金利も高く設定されていることも知っておきましょう。

不動産投資において物件を購入する際には、物件が収益物件であることから「アパートローン」もしくは「プロパーローン」を利用することになります。

融資を受けやすい人と受けにくい人との違い

融資の審査においては、本人の属性(収入や勤務先、勤続年数など)をチェックすることから、会社員や公務員の方は収入が安定しているという理由で審査に有利に働く傾向にあります。また、医師や弁護士など、定年のない職業の方も融資を受けやすい傾向にあるといえます。

融資を行う際に金融機関が一番に考えるのは、「しっかり返済してくれるか」という返済能力です。したがって、安定した収入が確保できると判断される属性であれば、融資を受けやすいといえるでしょう。

一方、自営業者や中小企業の経営者であれば「いかに安定して利益を出せているか」が審査のポイントになりますので、開業して間もない自営業者などであれば融資を受けるのは難しいでしょう。

金利ばかりに目を奪われないことが大切

融資を受ける際、できれば少しでも金利が低い金融機関から融資を受けたいとは誰もが思うものです。特に不動産投資で受ける融資は高額になるため、利息分を考えると金利が低い融資先を選ぶことを考えがちです。しかし、多少金利が高くても目標とするキャッシュフローが得られるのであれば、問題ないと考えることも大切です。

キャッシュフローを得るためには、「物件から得られる収益性」、「融資期間」、「金利」そして「返済比率」の4つのバランスが重要になります。

収益性(利回り)

一般に利回りが高ければ高いほど、キャッシュフローを得ることができます。利回りが高い、つまりリターンが高いということはリスクも高いと考える人もいますが、不動産投資においては利回りが低いこと自体がリスクとなることもあると考えましょう。

融資期間

融資期間については、長ければ長いほどキャッシュフローを得ることが可能です。自己資金が少ないにもかかわらず、融資期間を短く設定してしまうと、毎月の返済額がその分大きくなってしまいます。そうなると十分なキャッシュフローを得ることができないばかりか、修繕などの突発的な支出に対応できなくなります。

そのためにも融資期間はできるだけ長めに設定し、キャッシュフローを得て経営を安定させることがポイントです。

金利

金利が低ければ低いほどキャッシュフローを得ることができますが、低ければいいというわけではありません。融資先の金融機関とは、これから長い付き合いとなることからも、良い関係性を継続できる金融機関を選ぶようにすることが大切です。

返済比率

返済比率とは、ローンの返済額を満室時の家賃収入で割ったもので、この値が低ければ低いほどキャッシュフローを得ることができます。返済比率を抑えておくことで多少の家賃の値下げや空室リスクなどに対応することができます。

したがって、金利が高くても他の要素でカバーできるのであれば、キャッシュフローを得ることができると考え、全体的なバランスを考慮しながら金融機関を決めるのが融資を得やすいコツだといえます。

ただ注意しておきたいのは、融資期間については、原則として法定耐用年数を超えた期間で受けることができませんので、法定耐用年数内でできるだけ融資期間を長く設定することがポイントとなることも覚えておきましょう。

気をつけたい「法定耐用年数」

今後金融機関から追加融資を受けようと考えている場合は、最初に融資を受ける際の融資期間には十分に注意しましょう。なぜなら、一般的に法定耐用年数を超えた融資は認められないとなっているにもかかわらず、それを行う金融機関も存在するからです。

例えば法定耐用年数の残りが15年の物件で、20年の融資期間を定めて融資を行うなどです。確かに融資期間を延ばすことでキャッシュフローを増やすことにつながりますが、ルール違反をしてまで行うべきではありません。もし、このような状況が判明した場合は「債務超過のリスクが高い」とみなされ、今後の追加融資に支障をきたす可能性があります。

パートナー選びも大切

不動産投資を始める前に、まずは自身の属性を客観視し把握することが大切です。そして先ほど挙げた「収益性」「融資期間」「金利」「返済比率」のバランスを見ながら、融資先となる金融機関とローンの種別を選択することによって融資は得やすくなり、レバレッジ効果を最大限に活かすことができるといえます。

また不動産投資を始めるにあたって大切なのは、あなたのパートナーとなる不動産投資会社です。メリットばかりを強調されたら要注意といえ、誠実なところはリスクもしっかり説明してくれます。そして、顧客の目線に立ち親身になって相談に乗ってくれます。

そうした会社を見つけるには、実際に会社に出向いて話を聞いてみる、不動産投資セミナーに参加してみるなどがあります。より良いパートナーを見つけるため、積極的に活動してみることをおすすめします。

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