マンション経営は、毎月家賃収入を得られることが大きな魅力です。しかしマンションは実物資産のため、地震などの自然災害で建物に被害が出ないか不安を感じる人もいることでしょう。一方で、マンション経営における地震保険について、補償内容をしっかりと理解していない人も多いのではないでしょうか。今回は、日本の地震リスクや地震保険の基礎知識について詳しく解説します。
地震保険とは
地震保険とは、「地震や噴火、またはこれらによる津波や火災が原因で、建物や家財に被害が出たときに保険金が支払われる保険」のことです。
地震が発生すると建物などが損壊するリスクがあります。マンションは物件価格が高額のため、地震で建物に被害が出てしまうと修繕費や損失額が大きくなる可能性があります。特に金融機関の融資を利用している場合は、マンション経営だけでなく家計にも深刻な影響を与える恐れがあります。
マンション経営を行うのであれば、地震のリスクに対応できるよう地震保険について理解を深めておくことは非常に大切だといえます。
日本は地震リスクが高い
「いつどこで地震が発生するか」を正確に予測することは困難です。ただ地震が発生する確率が公表されているので、備えることはできます。
地震調査研究推進本部事務局が公表している「全国地震動予測地図 2020年版」によると、日本の多くの地域(特に太平洋側)で今後30年の間に、震度6弱以上の地震が26%以上の確率で発生することが予測されています。
耐震性が高い鉄筋コンクリート造の建物でも、震度6弱で壁や柱などの部材にひび割れや亀裂が入ることがあります。また震度7では、ひび割れや亀裂がさらに多くなり、1階や中間階が変形して、まれにですが建物そのものが傾くこともあるといわれています(気象庁:震度階級関連解説表)。
このように日本は地震リスクが高い国のため、マンション経営では地震リスクに対する備えをした方が安心です。
火災保険だけでは地震が原因の火災は補償されない
大地震が発生することを理解したうえで、それでも「火災保険だけで十分」と考える人もいるかもしれません。しかし火災保険だけでは地震で建物が壊れた場合だけでなく、地震による火災で建物に被害が出た場合も補償対象外となってしまいます。
耐震性に優れている建物は、大地震が起きても倒壊するリスクは低いですが、地震が原因で火災が発生することは十分に考えられます。そのため、マンション経営を行う際には、加入を検討しましょう。
地震保険は火災保険とセットで加入する
地震保険は単体では加入できず、必ず火災保険とセットで契約することが必要です。保険金額については、火災保険で契約した保険金額の30~50%の範囲内で設定することになっています。ただし居住用建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度です。
算出法は概観法でかつ㎡数、場所等で算出されワンルームにおける補償額は、火災保険が400~600万円、地震保険が200~300万円になります。
地震保険の補償内容
それでは、地震保険は具体的にどのような場合に補償が受けられるのでしょうか。ここでは、地震保険の対象や保険金額などについて確認していきます。
どんなときに保険金が支払われるのか
地震保険は、以下のような損害について補償が受けられます。
- 地震のゆれによる倒壊
- 地震が原因で発生した火災
- 地震による地滑り
- 地震が原因の洪水
- 地震・噴火による津波
- 噴火により流出した溶岩や火山灰
地域によっては噴火や津波のリスクはないかもしれませんが、地震が原因の倒壊や火災、地滑り、洪水による損害への補償は、地域を問わずリスクヘッジした方が安心です。
地震保険の対象
地震保険の対象は居住用建物と家財です。ただし、1個または1組の価値が30万円を超える貴金属や宝石、美術品などは家財には含まれません。
マンション経営の場合、家財は必要に応じて検討するといいでしょう。建物の中にあるのが入居者の家財のみ、もしくは自己負担可能な金額の場合は、建物のみの契約でも問題ないかもしれません。
支払われる保険金の額
地震保険では、居住用建物または家財に生じた損害の程度を「全損」「大半損」「小半損」「一部損」に区分し、以下の基準で保険金の額が決まります。
損害の程度 | 建物 | 家財 | 保険金の額 |
---|---|---|---|
全損 | 主要構造部の損害額が時価の50%以上 焼失・流出部分の床面積が延べ床面積の70%以上 | 家財の損害額が時価の80%以上 | 地震保険金額の100% (時価が限度) |
大半損 | 主要構造部の損害額が時価の40%以上50%未満 焼失・流出部分の床面積が延べ床面積の50%以上70%未満 | 家財の損害額が時価の60%以上80%未満 | 地震保険金額の60% (時価の60%が限度) |
小半損 | 主要構造部の損害額が時価の20%以上40%未満 焼失・流出部分の床面積が延べ床面積の20%以上50%未満 | 家財の損害額が時価の30%以上60%未満 | 地震保険金額の30% (時価の30%が限度) |
一部損 | 主要構造部の損害額が時価の3%以上20%未満 床上浸水または地盤面から40センチメートルを超える浸水 | 家財の損害額が時価の10%以上30%未満 | 地震保険金額の5% (時価の5%が限度) |
損害の程度が一部損に至らないと判断された場合、保険金は支払われません。建物と家財は、それぞれに損害の程度が認定されるため「家財は補償されるが建物は補償されない」といったケースも考えられます。
損害の程度の認定はどのように行われるのか
「全損」や「大半損」といった損害の程度の認定は、保険会社が定める「地震保険損害認定基準」に基づいて行われます。例えば、建物全体の沈下や傾斜の程度を測定し、損害認定基準に従い求めた損害割合によって、損害の程度を認定します。また建物の構造ごとに定めた着目点の被害程度を調査し、損害割合を求めて認定を行います。
地震保険は、建物の主要構造部の損害割合に応じて保険金が支払われるため、「部屋の窓ガラスが割れた」といったように、主要構造部に被害が出ていないケースだけでは補償を受けられません。損害の程度を自分で判断することは難しいため、保険会社の鑑定人が現地調査を行って認定するのが一般的です。
政府による再保険制度がある
地震保険は、政府による再保険制度があることも特徴の一つです。再保険とは、保険会社が保険金の支払責任の一部を他に転嫁する仕組みのことです。
契約者が支払う保険料は、保険金支払いに充てられる「純保険料」と、保険会社の必要経費に充てられる「付加保険料」に分けられ、保険会社は将来の保険金の支払いに備えて純保険料を準備金として積み立てています。
しかし大地震により巨額の損失が発生した場合、民間の保険会社だけでは資金不足で保険金を支払えない可能性があります。そのため各保険会社は「日本地震再保険株式会社」を通じて、純保険料の一部を政府に再保険料として支払い、政府も災害に備えて準備金を積み立てているのです。
地震保険は、政府による再保険制度があるおかげで、大地震が発生しても保険金が確実に支払われる仕組みになっています。
新築マンションは中古より地震リスクが軽減できる
マンション経営では、地震保険に加入するのはもちろんのこと、地震に強い物件を選ぶことも大切です。1981年6月1日に導入された建築基準法の新耐震基準の場合、中規模地震(震度5強~6弱)ではほとんど損傷せず大規模地震(震度6強~)でも倒壊・崩壊しないとされています。
基本的に新耐震基準で建てられたマンションであれば、地震による建物の倒壊・崩壊リスクは軽減されるでしょう。とはいえマンションは、築年数が経過するほど建物の老朽化が進みます。そのためマンション経営で地震リスクを軽減したい場合は、中古より耐震性に優れた新築マンションを選ぶほうが賢明です。
もしもに備え地震保険の基礎知識を身につけよう
日本でマンション経営を行う場合は、地震のリスクが高いため、その備えが欠かせません。しかし地震保険に加入しておけば、万が一地震や地震による火災、津波で建物に被害が出ても保険金で損失をカバーできます。
地震による被害は修繕費用が高額となりかねないため、マンション経営を始める前に地震保険の基礎知識をしっかりと身につけておきましょう。
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