マンション経営のギモン…ところで建物は築何年まで持つのか?
(画像=inoumasa/stock.adobe.com)

老後資金づくりのためのマンション経営が注目されています。しかしそもそも「建物が築何年までもつのか」について知らないとリアルな経営計画は描けません。本稿では、マンション寿命を「建築の専門家の見解」「リアルな取引状況」の2つの視点から考えます。

建築の専門家:マンションの残存期間だと平均57年、物理的寿命だと無限大

はじめに確認するのは、建築寿命の研究者の見解です。建築物の寿命については、さまざまな見解やデータがあります。なかでも国土交通省をはじめ数多くの機関・企業に引用されているのが早稲田大学・小松幸夫教授が示す調査データです。小松教授の調査によるとRC系共同住宅(=一般的なマンション)の平均寿命は約57年。(区間残存率推計法によって算出されたもの)

ちなみにこのデータは2011年の調査に基づくものです。これより14年前に行われた1997年調査のマンション寿命は約45年でした。マンションの寿命が14年間で12年も延びていることを踏まえればその後、マンション寿命がさらに延びていると予想されます。ただしこの調査で示された建物寿命とは、マンションが存在する「残存期間」のことです。

小松教授は「建物をどれくらい使い続けられるか」という物理的寿命であれば「使い方次第で何年でももつ」「耐用年数は無限大」と述べています。補足として小松教授は、以下のようにも語っています。

まずRC造の建物が劣化する原因はコンクリートの中性化が起こりその影響で鉄筋が錆びること。とはいえ、「中性化によってただちに鉄筋が錆びるわけではなく(中略)、メンテナンスによっていくらでも延伸することは可能」と解説しています。 (小松教授コメント引用:大阪府不動産鑑定士協会「鑑定おおさか No.46」)

レインズ:築50~60年のマンションでも数多くの物件が取引されている

次に確認するのは、住居用も含めた中古マンションの取引データです。築何年までのマンションが市場で活発に取引されているのでしょうか。不動産取引情報提供サイト「レインズ・マーケット・インフォメーション」で東京都心5区の直近1年間の取引状況を検索した結果は以下の通りです。

マンション経営のギモン…ところで建物は築何年までもつのか?
(画像:レインズ・マーケット・インフォメーション検索データ)

これを見ると築50~60年前後(築年:1950年代後半~1970年ごろ)に建てられたマンションでも数多く取引されていることが分かります。注目すべきは半世紀が経つ築古マンションでも平方メートルあたり単価が90万~120万円前後の物件が散見されることです。なかには1970年前後の築年にもかかわらず1平方メートル単価が300万円超というマンションもあります。

もちろん都心5区に限らずほかの東京エリアや大都市圏で検索しても、半世紀経った築古マンションが普通に取引されている傾向です。築古でも流通するマンションの条件は「好立地」「建物管理の状況」などでしょう。半世紀以上にわたって安定的に家賃収入を得たいのであれば、この2点にこだわってマンションを購入するのが賢明です。

楽待:築50年以上の収益マンションが入居者付きで取引されている

もう一つマンション寿命の参考になる中古マンションの取引データを見ていきましょう。国内最大級の不動産投資サイト「楽待」で「築39年以上、満室稼働(=入居者付き)」で検索を行うと計190件(※2)の区分・一棟マンションが示されます。
※2:一部、複数の不動産会社から重複アップされている物件あり

そのなかには築50年以上の収益マンションも数多く含まれます。一例では、最寄り駅「恵比寿」駅の築51年(1970年11月)のワンルームマンションは月7万9,000円(年間94万8,000円)の家賃収入、売出価格1,300万円で市場に出ています。ほかの例では、最寄り駅「つつじヶ丘」駅の築57年(1964年4月)のファミリータイプマンションは月7万円(年間84万円)の家賃収入、売出価格1,100万円です。

こういった築年が半世紀以上でも家賃を稼ぎ続けているマンションを見ると、前述の早稲田大学・小松教授の「(マンションは)使い方次第で何年でももつ」という意見をリアルに感じます。

国が打ち出すマンションの長寿命化事業もプラス材料に

ここまで見てきたマンションの寿命は、今ほど耐震性能が向上していなかった「旧耐震マンション(震度5程度でも倒壊しない)」のものです。1981年6月1日以降の建築確認が適用された新耐震マンション(震度6~7程度でも倒壊しない)、さらには最新の耐震・制震性能を備えたマンションの寿命は飛躍的に高まっていることでしょう。

また、国が最近打ち出している施策もマンションの長寿命化にプラスに作用すると考えられます。国土交通省では、2020年度予算案として「マンションストック長寿命化などモデル事業」を掲げています。これは、老朽化マンションの長寿命化へ取り組む組合などに対し3年間で最大1,500万円(年500万円)の補助金を支給するものです。

背景には、築年数の経ったマンションストック数が増加している社会問題があります。なおマンション長寿化のための補助金支給の要件は「区分所有者が10人以上」「耐用年数が2分の1を経過している」などです。対象となる施工例としては、マンションの長寿命に貢献する新しい工法や材料を取り入れた改修工事などが想定されます。

SDGs重視の流れがマンションの長寿命化をさらに後押しする?

より広い視点で見ると「SDGs(持続可能な開発目標)重視」という時代の流れもマンションの長寿命化に影響を与えるかもしれません。SDGsとは、2015年に国連サミットで採択された持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標です。SDGsは、17のゴール(目標)から構成されますが、このうちマンションの長寿命化にかかわりそうな項目は以下の2つでしょう。

  • 目標11:住み続けられるまちづくりを(持続可能な都市)
  • 目標12:つくる責任 つかう責任(持続可能な消費と生産)
マンション経営のギモン…ところで建物は築何年までもつのか?
(画像:国際連合広報センター)

持続可能な社会の根源的なテーマの一つに「CO2(二酸化炭素)排出量をいかに抑えるか」があります。マンションやオフィスビルといった大型の建物は建設や維持でCO2排出量が多いため、そのあり方が大きく変わっていく可能性があるでしょう。具体的には、省エネルギー性能や快適性能など高度な機能を備えた新築マンションが供給されます。

一方で、SDGsの意識の高まりから中古マンションをいかに長持ちさせるかの意識が高まっていくような流れになる可能性が高いでしょう。

老後年金づくりを目的にするなら、50年、100年スパンを俯瞰する視点が大事

ここでは、マンションの寿命をメインテーマに解説してきました。最後にその内容を振り返って見ましょう。早稲田大学の小松教授の研究によるとマンションを残存期間で見ると平均寿命は約57年でした。ただし物理的寿命だと「使い方次第で何年でももつ」「耐用年数は無限大」というのが小松教授の見解です。

実際のマンションの取引データを確認してみると、築50~60年程度の築古物件でも家賃をしっかり稼ぎさらに活発に売買されていることが分かりました。ただし築50~60年というのは今から半世紀前に建てられたマンションの寿命です。「最新の施工技術」「国の長寿命化の支援」「SDGs重視の流れ」などによってさらなるマンションの長寿命化が期待されます。

マンションの価値が長く続いてこその賃貸経営です。特に老後資金づくりが目的の人は50年、100年スパンを俯瞰する視点で立地・建物(施工技術)・管理体制などをチェックして購入するスタンスが大切です。

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