
マンション経営初心者のオーナーにとって心配なのが空室リスクです。近年、中古マンションは空室が増加しており、収益悪化や物件価値下落のリスクが高まっています。そこで検討したいのが新築マンションの優位性を重視した経営です。新築マンションと中古マンションはどのような違いがあるのでしょうか。空室リスク対策とあわせ、これからの時代の物件選択を考えます。
目次
1.築40年以上のマンション数が急増
国土交通省の資料によると、2020年(令和2年)末時点で築40年超のマンションは103.3万戸です。
10年後の2030年(令和12年)末にはおよそ2.24倍の231.9万戸に増大するとされています。さらに20年後の2040年(令和22年)末には404.6万戸と3.92倍となり、老朽化したマンションの急増が指摘されています。
2.老朽化したマンションの問題点

マンションが老朽化するとどのような問題が発生するのでしょうか。
マンションの老朽化によって発生する問題
1.修繕費増大で住環境が悪化
2.入居者の高齢化で空室が増える
3.空室が増えると物件状態は一気に悪化
2-1.修繕費増大で住環境が悪化
老朽化すれば建物を修繕する費用がかかります。室内ではキッチンや浴室、給湯器、エアコンなどの修理や交換が頻繁に発生することになります。
内装も日焼けや傷、汚れで見た目が悪化し、補修や張替えが必要でしょう。さらに外壁、屋根、照明器具、手摺など外部の修繕も多く、費用が次々とかかるようになります。
しかし、資金不足の物件では満足な修繕ができず住環境が悪化した場合、入居者が不満を感じて他の物件へ移ってしまうこともあるかもしれません。
また建物の外観も汚れたままでは印象が悪くなるため、新たな入居者が集まりにくく空室リスクが高まってしまいます。
2-2.入居者の高齢化で空室が増える
また、築年数が経過すれば入居者の高齢化も考えられます。若い世代は収入が見込めるため、建物が古くて不便も多いとなれば、住環境の良い物件へ移っていきます。
なかには住み慣れてしまい異なる環境へ移りたくないとか、引っ越しが億劫といった理由から転居しない入居者もおり、結果的に古い物件ほど高齢の入居者が多い状態になります。
前述の国土交通省の資料にも、マンションにおける入居者の高齢化が指摘されています。築30年を超えた物件では4割弱、築40年近い物件では約半数の入居者が60歳以上の世帯となっています。
入居者が高齢化すると病気などの問題で退去者が増え、空室の増加が考えられます。
定年退職して収入が減れば、家賃や共益費の滞納などが発生し、修繕費用の不足もあります。すると建物の状態は悪化してしまい、空室がさらに増加することになるのです。
2-3.空室が増えると物件状態は一気に悪化
空室が増えるとマンションの状態は、急速に悪化していきます。人の気配がなければ治安が悪化し、退去率が上がることでしょう。空室が増えると、分譲マンションなら修繕積立金が、賃貸マンションなら家賃収入が減少していきます。
このように空室のリスクが増えることで、退去者の増加と建物修繕の放置が繰り返される負の連鎖が始まり、物件は悪化の一途をたどることになります。
3.空室はマンション経営に悪影響

空室の増加はマンション経営の視点だとどのような事態が懸念されるでしょうか。
空室の増加によって懸念される事態
1.家賃を下げ収支が悪化
2.空室になり収入がゼロ
3.売却は難しく価値も下落
3-1.家賃を下げ収支が悪化
空室の多いマンションで入居者から退去を告げられれば、引き留めるために家賃を下げることケースが考えられます。
あるいは他の部屋が家賃を下げて入居者を募集していれば、それを見て家賃引き下げを求められるかもしれません。
家賃の引き下げは収支の悪化を意味し、融資を受けていれば赤字になる恐れもあります。
3-2.空室になり収入がゼロ
周囲の空室の波に飲まれ、所有する部屋も空室となってしまい、家賃収入ゼロも考えられます。家賃収入が途絶えても維持費や税金はかかるため、蓄えを削りながらのマンション経営となります。
早急に空室を埋めたいところですが、老朽化で高齢者が多く空室も目立つ物件では、入居者探しは困難を極めるでしょう。
3-3.売却は難しく価値も下落
空室が多く建物も傷んでおり、家賃が安いとなれば、買い手がつきにくいことは容易に想像できます。所有する物件が空室であれば、売値を大幅に下げる必要もあるでしょう。
最悪の場合は赤字物件を所有し続けることになり、マンション経営としては失敗に終わる可能性が高くなります。
4.新築マンションのメリット

老朽化するマンションが急増し、建物状態の悪さや入居者の高齢化で空室が増えると、マンション経営では新築の優位さが際立ちます。
改めて新築マンションが入居者に選ばれる理由と、マンション経営でのメリットをお伝えしたいと思います。
新築マンションのメリット
1.新築は人気が高く収益発生が早い
2.空室になりにくく安定する
3.売却時に価値が下がりにくい
4.建物状態が適切に維持される
4-1.新築は人気が高く収益発生が早い
新築の部屋は「新築プレミアム」という言葉があるほど人気が高く、希望する入居者は根強くいます。最新の建材や設備が使われ、住み心地や使い勝手が良く快適に住める点も人気の理由です。
夏は涼しく冬は暖かく、新しいエアコンなら電気代も抑えられます。部屋も建物もきれいなうえ、セキュリティがしっかりしている物件が多く防犯面で安心できるなど、入居者にアピールできるポイントは数多くあります。
新築は都心のような賃貸需要の見込める地域であれば、入居者集めに苦労することは考えにくく、すぐに収益発生が期待できるでしょう。
4-2.空室になりにくく安定する
入居者が住み心地や使い勝手に満足できれば退去する理由がなく、短期間で空室になることも考えにくいです。
新築の劣化はしばらく先で、入居者の不満は出にくく安定した家賃収入が期待できます。この収入が継続する点は、所有する部屋が一つのマンション経営では非常に重要です。
新築であれば平均以上の家賃設定が可能であり、長期に高い賃料収入が期待できることも新築マンションのメリットとなります。
4-3.売却時に価値が下がりにくい
新築で所有したマンションは、売却する際に価値が下がりにくいメリットもあります。
築年数にもよりますが、例えば10年所有しても現在の建築技術であれば極端に劣化しにくく、価値を大きく損なう状態ではないでしょう。
マンション経営では売却時の収益が重要なポイントであり、ここでマイナスとなれば所有した意味がありません。売却しやすい状態も、新築を所有するメリットなのです。
4-4.建物状態が適切に維持される
建物が適切に修繕されないことは空室発生を加速させるため、決して軽視すべきものではありません。この点で、新築であれば修繕が適切なタイミングで計画されており、入居率が高いため修繕費もしっかり確保されるという安心材料があります。
大きな修繕が必要となるのはしばらく先であり、長期間入居者に不満を感じさせない建物であることは、新築ならではのメリットでしょう。
5.マンション経営における新築と中古の違い

マンション経営を始める場合、新築にするか中古にするかは迷うところでしょう。新築マンションと中古マンションにはどのような違いがあるのか、5つのポイントで比較してみます。
新築と中古5つの比較ポイント
1.残存価値と利回りの違い
2.銀行融資の受けやすさ
3.家賃相場の違い
4.修繕費発生の可能性
5.瑕疵担保責任の期間
5-1.残存価値と利回りの違い
新築マンションは中古マンションよりも残存価値が高いというメリットがあります。
例えば、築20年の中古マンションを購入した場合、30年運用すると築50年になりますが、新築マンションなら30年運用してもまだ築30年で十分な残存価値が見込めます。
家賃収入の利回りは中古マンションのほうが、購入価格が安い分高くなります。
ただし、不動産広告で表示されているのは満室を想定した年間家賃収入を物件購入価格で割った表面利回りですので、単に利回りが高いというだけで購入するのはリスクがあります。
購入して入居者が付くまでの期間は割り引いて考えなければなりません。その点、新築はすぐに入居者が見込めるので目標の利回りを確保しやすいというメリットがあります。
5-2.銀行融資の受けやすさ
新築マンションは中古マンションよりも銀行から融資を受けやすい傾向があります。低い金利でかつ長期間という有利な条件で融資を受けることが可能です。
マンション経営にとって借入金利の差は大きく、3,000万円の融資を受ける場合なら1%の金利差で年間約30万円収益に違いが出ます。
新築マンションは購入価格が高いですが、融資条件が有利になり家賃も高くとれるため、トータルで考えれば中古マンションよりもお得になる可能性があります。
5-3.家賃相場の違い
新築マンションは中古マンションより同じ間取りでも家賃を高く設定できます。
新築マンションは「自分が初めての入居者」というプレミア感があるため、きれいなマンションに住みたいという顧客の需要を取り込むことができます。
中古マンションは経年劣化によって家賃を下げなければならない場合もありますが、新築マンションは高い家賃を維持することができる点で有利です。
5-4.修繕費発生の可能性
新築マンションは、築10年程度まではほぼ修繕費がかかることはありません。築30年以上の中古マンションは購入してすぐに修繕箇所が発生する可能性があります。
物件付属のエアコンや給湯器が故障した場合は、すぐに交換が必要で急な出費が発生します。中古物件を購入する場合は、内装の状態だけでなく設備が傷んでいないかも入念にチェックすることが大事です。
新築は急な修繕費がかからない分、家賃収入から将来の修繕に備えて積み立てておけるので、当初から安心して経営を続けられます。
5-5.瑕疵担保責任の期間
物件購入後に欠陥箇所が見つかった場合、売主負担で修繕する義務があることを「瑕疵担保責任」といいます。
瑕疵の代表的な事例には雨漏り、水漏れなどがあります。この保障期間が中古マンションでは2年しかないのに対し、新築マンションは10年と長いのがメリットです。
瑕疵担保責任は物件の物理的瑕疵だけでなく、近くにゴミ処理場がある、火葬場がある、部屋で昔事件や事故があったなどの話を買主が知らされていなかった場合、環境的瑕疵や心理的瑕疵を問うことができるケースもあります。
新築マンションと中古マンションの比較
新築マンション | 中古マンション | |
---|---|---|
価格 | 3,000万円台~(1ルーム、新宿区) | 2,000万円前後~(1ルーム、新宿区) |
利回り・残存価値 | 利回りはやや低いが残存価値が高い | 利回りは高いが残存価値が低い |
銀行融資 | 低金利で長期間の融資が可能 | 審査が厳しい |
修繕費 | 初期はほとんどかからない | 築古ではすぐにかかる可能性がある |
空室リスク | 低い | やや高い |
売却 | 買い手が付きやすい | 買い手が付きにくい |
瑕疵担保責任 | 10年 | 2年 |
※価格は東京都新宿区のワンルームマンション物件の一例です。およその目安としてお考えください。
6.初心者向け空室リスク対策5つのポイント

初めてマンションを経営する場合に、一番心配なのは空室リスクです。ここでは、マンション経営初心者向けにシンプルな5つの空室対策を紹介します。
5つの空室対策
1.好立地物件を購入する
2.競合物件より入居条件を良くする
3.質の高い不動産会社を選ぶ
4.新築物件を購入する
5.ワンルームマンションを購入する
6-1.好立地物件を購入する
マンション経営を成功させる基本は好立地物件を購入することです。具体的には東京23区や主要都市で、駅徒歩10分以内の物件です。
東京23区は人口密度が高く、1つのマンション周辺には多くの人口を抱えています。常に入居の需要があるため、たとえ空室が出ても短期間で次の入居者が決まる可能性が高いといえます。
また、好立地物件は万一売却を考える場合でも、買い手がつきやすいため早めに現金化することが可能です。
6-2.競合物件より入居条件を良くする
自分が経営するマンションの周りには、いくつかの競合物件が存在します。顧客は少しでも家賃が安くて条件のよい物件を求めています。
家賃や入居条件を決めるときは、まず周辺の競合物件がどの程度の家賃や入居条件で募集しているのかをリサーチすることが大事です。
自分が希望する家賃設定が競合物件に比べて著しく高い場合は調整する必要があります。
もちろん、自分の物件が新築であれば周辺の中古マンションよりは高い家賃に設定できますが、どの程度の高さなら入居者を確保できるかは、不動産会社が薦める金額の範囲で決めたほうが無難です。
6-3.質の高い不動産会社を選ぶ
マンション経営を続けていくうえで不動産会社との付き合いは長期的に続きます。とくに空室が出たときに積極的に動いてくれる不動産会社は頼りになります。質の高い不動産会社を選ぶことによって、短期間で空室を埋めることができるのです。
具体的には強力な不動産ネットワークを持つ上場不動産会社や、有名不動産チェーンが入居者募集の面で有利といえます。
6-4.新築物件を購入する
先にも紹介したように、新築物件は中古物件に比べて多くのメリットがあります。
初めてのマンション経営では入居者がつくことで自信につながりますので、入居者が付きやすい新築物件を購入することは空室対策として大事なポイントです。
また、新築マンションは修繕費が発生することはほぼないので、余計な出費がかからない点でも有利です。
6-5.ワンルームマンションを購入する
これから日本は単身世帯の割合が増えていく見込みであることを考えると、ワンルームマンションを購入することが空室リスクを少なくする有効な方法と考えられます。
東京都の調査によると、東京都の世帯割合における単身家庭の割合は、2015年の47.3%(確定値)から2035年には50.4%(推定値)と、初めて過半数を超える見込みです。
東京都の家族類型別世帯割合の推移
年次 | 単独 | 夫婦のみ | 夫婦と子供 | ひとり親と子供 |
---|---|---|---|---|
2000※ | 40.9 | 16.9 | 27.9 | 7.3 |
2005※ | 42.5 | 17.4 | 25.9 | 7.7 |
2010※ | 45.8 | 17.1 | 23.9 | 7.5 |
2015※ | 47.3 | 17.0 | 23.5 | 7.6 |
2020 | 48.3 | 16.8 | 22.9 | 7.6 |
2025 | 49.0 | 16.9 | 22.4 | 7.6 |
2030 | 49.6 | 17.1 | 21.8 | 7.6 |
2035 | 50.4 | 17.2 | 21.3 | 7.6 |
2040 | 51.2 | 17.5 | 20.7 | 7.4 |
(単位 %)
「※」の付いた年次は実績年を示す。
(参照:東京都「東京都世帯数の予測」の概要)
そのような将来推計を考えると、今からワンルームマンションに経営の軸足を置いておくことは有効です。
ワンルームマンションは価格が比較的安価なため、複数経営化しやすいというメリットもあります。1室棟目の経営が軌道に乗ったら2室棟目の購入を検討するのもよいでしょう。
7.空室が増える時代こそ新築が有利

老朽化したマンションで空室が増えれば、物件同士の競争が激しくなることが考えられます。家賃を下げても空室が解消されなければ、そのマンションの住環境はさらに悪化していくでしょう。
新築を求める入居者は環境の整った住み心地の良い物件へ集まると考えられ、特に人口増加が続く都心では継続した需要が見込めるでしょう。
環境の悪化で、中古マンションから離れた人たちが、新築の良さを見直すことも考えられます。いずれにせよマンションの空室が増える時代でも、新築の優位性は揺るがないでしょう。
初めてのマンション経営を成功させるためのキーワードは「好立地」「新築」「ワンルーム」です。
入居者がつきやすいこれらのキーワードに合致した物件を見つけ、安定したマンション経営をスタートさせることが求められます。
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