マンション経営をされている多くの大家さんには将来、所有物件の相続が控えています。相続に自身の意向を反映したいと思われるのは当然ですが、将来認知症などで判断能力を失ってしまったら、自身の意向通りの相続ができなくなるかもしれませんし、それ以前に判断能力を失ってしまった後の生活を考えると不安がより大きくなることでしょう。

財産を保有している人が判断能力を喪失した場合のために、成年後見制度が用意されています。しかし、この制度は財産の管理などを目的としたものではないため、相続など財産の取り扱いには不向きな面があります。そこで注目されているのが、「家族信託」です。

当記事では、家族信託とはどのような仕組みで、成年後見制度と何が違うのか、そして相続など財産の承継にどのように活用できるのかといった基本の内容を解説します。将来のあらゆる事態に備えるために、マンション経営をされている方はぜひ一読ください。

マンション経営大家さんの認知症、相続対策に家族信託が有効な理由
(画像=Africa Studio/Shutterstock.com)

家族信託の概要

家族信託とは、認知症などによって判断能力を喪失した場合に、信頼できる家族に財産の管理を任せる制度のことです。本人が健在のうちは自身の判断によって財産の管理ができるわけですが、意思能力を失うと不動産売買などの契約ができなくなります。そんな万が一の事態になったとしても財産管理の権限を託し、本人の意向を反映できます。

家族信託には3人の当事者がいます。1人目は財産を保有し、万が一の事態のために財産の管理を家族に任せる委託者です。2人目は信託を引き受ける受託者、そして3人目は財産による利益を得る受益者です。ここで当事者を「3人」と表現していますが、委託者が認知症になってしまった際に保有財産を活用して自身の面倒を見てもらうことになるため、委託者であるのと同時に受益者にもなります。つまり、家族信託の当事者は3者ではありますが、3人とは限らないということです。

家族信託を活用するメリット

家族信託を活用するメリットは多くありますが、特に相続に関連するメリットとしては以下の4つがあります。

①成年後見制度よりも自由度が高く柔軟な財産の管理、承継が可能 ②今回の相続の次(二次相続)にまで意向を反映できる ③自分自身の受益者としての権利を健在のうちに保護できる ④不動産相続にありがちな共有名義による塩漬けを回避できる

いずれも家族信託が持つ自由度や柔軟性の高さゆえに得られるメリットであるといえます。

家族信託のデメリット

次に、家族信託のデメリットについても紹介しましょう。相続に関連して考えられるデメリットは3つあります。

①専門家の関与が不可欠であり、報酬などのコストが高くなる ②特定の受託者に権限が集中するため不公平感がトラブルの原因になりやすい ③制度的な歴史が浅く、精通している専門家が少ない

相続は財産に関わるデリケートな問題だけに、十分な話し合いをした上で誰もが納得できる形を取らなければ、家族信託そのものがデメリットになる恐れがあります。

マンション経営の大家さんが家族信託を活用すべき理由

最後に、マンション経営をされている大家さんが家族信託を活用するべき理由を2つまとめました。これらの理由から、大家さんは前向きに家族信託を検討されることをおすすめします。

①マンション経営の継続性

マンション経営をしている大家さん本人が認知症などで判断能力を失ってしまった場合、以後の経営継続は困難になります。家族信託によって認知症になった後のマンション経営について受託者を指定しておけば、その後も受託者によってマンション経営は継続され、受益者が得られる利益もそのまま継続されます。

②相続後のマンション経営で機会損失を回避できる

収益物件を相続する際に相続人同士の共有名義になっていると、その物件を処分するために名義人全員の同意が必要になります。容易に同意が得られない場合は物件がいわゆる“塩漬け状態”になり、売却のタイミングを逸するなどの不利益が考えられます。家族信託で受託者を指定しておけば共有名義になる問題が回避され、物件の処分を含めた財産の組み換えも容易になります。

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