従来はお金を支払ったり引き出したりするために、いちいち銀行や郵便局などへ足を運ぶ必要がありました。しかし、近年「フィンテック(FinTech)」と呼ばれる新たな金融サービスによって私たちのお金をめぐる習慣は大きく変わりつつあります。

今後ますます重要となりそうなフィンテックについて、今回は由来や歴史、そして現在浸透しつつある事例をご紹介します。

フィンテックは生活をどう変える?テクノロジーと暮らしの将来
(画像=Dmytro Zinkevych/Shutterstock.com)

今さら聞けないフィンテックの基礎知識

フィンテック(FinTech)とは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語です。スマートフォンを活用した決済サービスなど、情報技術を活用した各種の金融サービスを総称してフィンテックと呼ぶようになりました。

フィンテックという言葉自体は、2000年頃からアメリカを中心に使われていたとされています。20世紀から金融機関がITやインターネットを活用してデータの管理やサービスの開発を行っていたことを考慮すると、金融領域に情報技術を取り入れる取り組み自体はフィンテックという言葉が生まれる以前から行われていたと言えるでしょう。

金融と情報技術を組み合わせる動きが昔からあったにもかかわらず、改めて「フィンテック」という言葉が浮上してきた背景には、やはり2008年頃に発生したリーマンショックがあります。アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻を始め、多くの金融機関が経営危機に見舞われました。既存の金融業界に対する社会的な批判も広まり、便利で安価な金融サービス、すなわちフィンテックに対する期待感が高まったのです。

インターネットやクラウドなど情報技術が発展したこともあり、2010年代に入ってフィンテックを標榜するベンチャー企業が数多く誕生するようになりました。

一方で消費者側も、インターネットサービスに抵抗を持たない世代が増加していました。 1981年から1990年代後半にかけて生まれた世代である「ミレニアム世代」は、幼い頃から情報技術に慣れ親しんで育ちました。今やアメリカでは最も人口の多い世代となっています。こうした世代交代も、フィンテックの誕生を支える社会的な背景として考えられます。

以上のように、新たな金融サービスに対する期待感と情報技術の進展が相まってフィンテックを謳うサービスが数多く誕生してきました。2010年代後半の現段階でもフィンテックサービスは浸透してきましたが、今後はさらに日常的な存在として定着する可能性もあります。

フィンテックが暮らしに与える影響の例

フィンテックの事例を決済・送金・会計の3つのジャンルに分けてご紹介します。

これまでは現金・銀行振込・クレジットカードの3つが主な決済手段でしたが、最近ではモバイル決済が普及しつつあります。スマートフォンを機器にかざすだけで決済が可能となり、現金どころかカードさえ取り出さなくてもよくなりました。2020年の東京オリンピックや2025年の大阪・関西万博に向けて、インバウンド需要に対応すべく政府はキャッシュレス決済の普及を進めています。今後もフィンテックを活用した決済サービスの登場が期待されます。

送金分野におけるフィンテックは、インターネットによる送金を実現したものが多いです。従来の金融機関による送金サービスでは、手数料の高さや利用時間の制限(平日日中のみなど)が利便性を下げていました。インターネットの活用によって利用時間の制限から解放されるとともに、手数料を下げるようなサービスも出てきています。

会計サービスにおいては、クラウドを活用した自動会計ソフトが数多くリリースされています。仕訳や請求書管理、確定申告書作成などの経理業務を自動化してくれるため、特に小規模事業者やフリーランスなど人的リソースの少ない個人・組織に広く利用されています。

決済・送金・会計以外にも、ビットコインを始めとした仮想通貨関連のサービスがフィンテックに分類されることもあります。中央銀行を発行主体としない仮想通貨は、国境をまたいだ送金や決済に便利として2017年頃からバブル的な人気を博しました。未だに決済手段として広く普及したとは言えないものの、一部の飲食店や家電量販店を始めとして支払いに使用できるという店舗も存在します。

フィンテックの影響が本格化するのはまだこれから

フィンテックは、今後も決済・送金・会計などを中心として私たちの生活に深く影響を与える可能性が高いと言えます。

決済におけるキャッシュレス化が進めば、現金の使用率が減って決済の手間が格段に削減されます。飲み会のような多人数の場でも、スムーズに支払いを済ませられるようになるでしょう。また節約や家計改善の分野にもフィンテックが進んで、無駄遣いや預貯金額の推移などを楽に知ることができるようになります。

一般に浸透していないサービスや分野も多いため、フィンテックの可能性が本格的に花開くのは、まだこれからなのかもしれません。

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