資産運用
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本間 貴志
本間 貴志
ビジネス書・実用書専門の「アスラン編集スタジオ」の編集ライターを経てフリー。2015年より秋田県に移住、テレワークによる柔軟な働き方を実践中。

コロナで株価が急落、「ここが買い場」と参戦する個人投資家が急増しました。その後、短期間で株価は値を戻し、2020年後半に入って上値が重い状況が続いています。一方、同じ金融商品でもREIT(不動産投資信託)は株価ほど回復せず、見方によっては「割安感がある」「妙味がある」といえます。コロナ禍でREITを選ぶポイントと種類別の市況を解説します。

コロナ禍でREITの銘柄を選ぶときの3つのポイント

REIT銘柄選びのポイント1:投資分野

一口にREITといっても、大きく2つに大別されます。ひとつは、特定の分野に投資する「特化型REIT」とそれを組み合わせた「複合型REIT」です。前者の特化型REITは、投資分野によって景気の影響の受けやすさが違います。こちらの表のように、下位の投資分野ほど景気の影響を受けやすいといわれます。

〈↑景気の影響が少ない〉
1. 住宅
2. 郊外型商業施設
3. 物流施設
4. オフィスビル
5. 都市型商業施設
6. ホテル
〈↓景気の影響が大きい〉

くしくもコロナショックで大きな影響を受けたのは、下位のホテル系やオフィス系でした。対極的に、上位の住宅系や物流施設系は影響が限定的だったといわれます。今後、ホテル系やオフィス系の銘柄で回復期のリターンを狙うか、住宅系や物流施設の安定性・成長性を狙うかは投資家によって判断がわかれるところです。

REIT銘柄選びのポイント2:利回り

REITのリターンは、株式の株価にあたる「投資口価格」の上昇、そして、株式の配当金利回りにあたる「分配金利回り」から得られます。このうち、REITの利回りは株価よりも高利回りといわれます。実際に2020年9月・10月時点で比較してみると、REITの平均利回りは約4%です。これに対して、東証一部の平均利回りは約2%と倍近い開きがあります。

REITの種類によっては、コロナショック後に投資口価格が下落、それに伴って高い配当利回りになっている銘柄もあります。配当利回り重視であれば、こういった銘柄をマークするのも手です。ただし今後、業績低迷が長期化すると一転、低利回りになるリスクもあるので注意しましょう。

REIT銘柄選びのポイント3:NAV倍率

NAV倍率は、株式のPBR(株価純資産倍率)にあたるもので、一般的に1倍を切ると割安感があるといわれます。コロナショック後、ホテル系・オフィス系・商業施設系のREITはNAV倍率1倍を切るものも目立ちます。割安感重視であれば、NAV倍率の低い銘柄にフォーカスする手もあります。ただし、今回のNAV倍率が低い傾向は、割安というよりも将来の長期的な低迷や業績悪化を織り込んでいる可能性があるため、慎重な銘柄選びが重要です。

投資分野別REITの市況 住宅系・ホテル系・オフィス系・物流施設系

REITの市況はコロナショック後、投資分野ごとの明暗が鮮明です。好調なのは景気に左右されにくい「住宅系」と各地で物流センターが盛んに開発される「物流施設系」のREITです。対極的に「ホテル系・オフィス系」は投資口価格が停滞するREITが目立ちます。それぞれのセクターをさらに詳しく見ていきましょう。

住宅系REITの市況

一般的に住宅系REITが保有・運用しているのは、東京23区〜首都圏近郊のマンションなどが大半を占めます。このエリアのマンションは、コロナ後も人口が安定しているため、空室率も賃料もほとんど影響を受けません。そのため、緩やかながらも値を戻している銘柄が目立ちます。

一例では、「スターツプロシード投資法人」が2019年後半と2020年10月を比較すると、投資口価格は20万円前後とほぼ変わらず、利回りは4%前半から後半に上昇気配です。

ホテル系REITの市況

ホテル系REITは、コロナによるインバウンド消失によって多大な影響を受けました。「G o To トラベルキャンペーン」の効果で盛り返す動きも見られますが、コロナ前のリターンを完全に取り戻すまでには至っておらず、投資口価格が低迷している銘柄が目立ちます。ただ逆に言うと、割安感があるため長期保有が前提であれば妙味があるともいえます。

個別銘柄で見ていくと、ホテル系REITでは時価総額最大の(2020年10月15日現在) 「ジャパン・ホテル・リート投資法人」の投資口価格は2019年後半の8万円台からコロナショックで2万5,000円前後まで急落。現在5万円台まで値を戻していますが完全回復したとはいえない状況です。注意したいのは2019年後半4%台だった利回りが0.23%まで急減している点です。

「星野リゾート・リート投資法人」は、2019年後半50万台後半〜60万円前後だった投資口価格がコロナショックによって26万円台まで落ち込みました。しかし現在では50万円超とかなり値を戻しています。実際の星野リゾートが展開するホテルの稼働率で見てみても、日本経済新聞の取材に対して星野リゾート代表の星野佳路氏は(所有宿泊施設の)「3分の2が前年並みの稼働に戻った」と答えています(2020年10月13日付)。また、2020年10月に翌年春の中国大陸への進出を発表。この戦略がはまれば、コロナ収束後に面白い展開が期待できるかもしれません。

オフィス系REITの市況

都心部のオフィスでは、リモートワークの普及やコロナによる業績悪化による移転などの影響で空室率が上昇する傾向にあります。東京都心の都心5区のオフィス空室率はコロナショック前後から7ヶ月連続で上昇し続け、2020年9月の平均空室率は3.4%まで悪化しています。

地方都市の中心部も同様に厳しい状況にあり、一例では福岡市のオフィスの平均空室率はコロナショック以降6カ月連続で上昇、2020年9月時点で3.15%に達しています。このようにオフィスビルの経営環境は全体的に逆境にあるため、オフィス系REITは価格が低迷する銘柄が目立ちます。

オフィス系リートの代表といえる「日本ビルファンド投資法人」の投資口価格は2019年後半に80万円台前半でしたがコロナショックで55万円台まで急落。2020年10月半ばの段階で56万円台と低迷していて投資口価格を戻せていません。ただし価格が下がっているため、直近の利回りでみると上昇傾向にあります。今後、空室率悪化がさらに進むと低利回りに転じる可能性がありますが、直近の利回りという意味では妙味があるという見方もできます。

物流施設系REITの市況

国内の物流施設の運用は、コロナ以前からEC(電子商取引)の活況を背景に好調でした。さらにコロナ禍の巣ごもり消費などの影響で物流需要が伸びている追い風の状況です。

首都圏の大型物流施設の賃料は2017年秋から長期的に上昇中。コロナショック直後の2020年4月〜6月期でも賃料は前期に比べて0.2%上昇しました。近畿圏で見ても空室率が低い状況が続き、2020年4月〜6月期の賃料は前期に比べて3.1%まで上昇しています。
※首都圏・関西圏ともにCBREの調査

このような活況を背景に、物流系REITは買いが入りやすく、時価総額で好調な銘柄が目立ちます。物流系では最大手の「日本プロロジスリート投資法人」の投資口価格は2020年10月現在で35万円前後となり、2019年後半の30万円前後から5万円近くも上昇しています。

まとめ

ここで解説してきたように、ホテル系やオフィス系のREITは、投資口価格が下がった影響で高利回り気配になったり、NAV倍率で割安感が出ていたりします。ただし、この記事タイトルの「(REITは)マンション経営にも通じるの?」という問いに対する回答でいえば、REITもマンション経営も長期的かつ安定したリターンを狙うのに向いている投資商品というのが共通点。このことを意識しつつも、コロナ禍という特殊な状況に合わせて柔軟な選択をしていくのが賢明でしょう。

※本稿は、REITへの投資を推奨するものではありません。景況やコロナの影響で銘柄によっては損失リスクがあります。投資は自己判断でお願いします。

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